教会へ行く
<初日>
はじめまして。
わたし、オーガスタと申します。
10歳です。
伯爵様、お嬢様、そしてお屋敷の皆様、本日よりお世話になります。
どうぞよろしくお願い申し上げます。
実母が恐れ多くも伯爵様の後添えに迎えていただけることとなり、わたしもこちらへ住まわせていただけるようになったとのこと、望外の極みにございます。
しかしながら、母は婚姻という法に則り伯爵夫人という肩書を賜りましたが、わたしは伯爵家の血を微塵も引かない全くの庶子。
母がこちらに迎えられたとはいえ、伯爵家の令嬢として扱われるなんておこがましい限りです。
ああ、お嬢様。
ご心配には及びません。
わたしは15歳になりましたら教会へ赴き、修道女となる予定にございます。
ええ。もちろんわたしの事を義姉と呼んでいただく必要はございません。
ただ、伯爵様。
許されるのであれば5年の間こちらにて教育を受けたいのです。もちろん普段はお屋敷のお手伝いとしてメイド見習いをさせていただき、きちんと働きたいと思っております。
一日のうち数時間で構いません。
政治や経済、簡単な読み書き計算をぜひ学ばせていただきたいのです。
何も知らぬまま外の世界に出ていき、何かあった時一人で身を守れぬようでは困りますので。
どうか、少しだけでも恩恵にあずかれれば幸いです。
お部屋はもちろん一緒に働かせていただく皆さまと同じ場所を使わせていただけるとありがたいです。
え?一人部屋を?
とんでもございません!!
それを常としてしまいましたら、後々が大変でございます。
ぜひとも、見習い部屋でお願い申し上げます。
ああ、良かった。
ありがとうございます。
さて、改めまして本日よりどうぞよろしくお願い申し上げます。
*
<3日目>
はい。
8月、ですか?
名前。
ええ、そうです。
わたしの名前オーガスタは八月のオーガストからきております。
8月生まれなのか?
いいえ、1月生まれでございます。
母が1月の極寒の中産気づきまして、わたしも産まれたときは寒さで泣き声がとても小さかったそうです。母子ともにしばらく具合が悪かったことから、8月の季節のように元気になるようにとオーガスタと名付けたのだそうです。
<7日目>
どうなさったのですか、お嬢様。
え?私は妹よ!ですか。
はい!?
いけません、お嬢様。
とんでもないことでございますよ。
そんな、お義姉さまなどと。
そんなお可愛らしい笑顔で呼ばれてしまったら、わたし、おかしな考えにおちいってしまいますよ。
貴女様のように、可憐でかわいいご令嬢が、わたしをお義姉さまと思っている、と。
いいじゃない?
いぃ・・・よくありませんよ!
駄目です、絶対ダメです!!
じゃあ、せめて名前を呼んで?
ム、ムリです!
はい、駄目です。
迷惑なの?
と、とんでもございません!
・・・・・。
・・・・・・。
ウ・・・ウェンズデイ。
え、なんか発音が変?
ウ・・・ウェンズデイ。
『ウェ』にイントネーションがついてる。
棒読みになって、ますか。
ウ『エ』ンズデイ。
難しゅうございますね。
*
<5年後>
皆さま。
わたし、明日南の国の修道院に立つことを決めました。
お母様。
ウエンズデイのこと、頼みましたよ。
ウエンズデイ。
立派な婿を迎えてね。
クレイトン様は大丈夫よ。
ええ。きちんと身辺を調べておいたわ。
お祝いに、南の国から何か送りますね。
伯爵様。今まで大変お世話になりました。
ご恩は一生忘れません。
伯爵様、伯爵夫人、そしてお嬢様。
お屋敷で共に働いた方々。
オーガスタは遠く南の地より、皆様のお幸せをお祈りしておりますわ。
それでは、ごきげんよう。
Fin.




