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ep.8

「うっ、」

戻った瞬間に先ほどよりも強い痛みが襲う。俺はもがき、苦しみ、意識を失いそうになる。それを見た悠貴は俺の手を握りしめた。

「渚! 大丈夫⁈」

俺は辛うじて残っている意識の中で少し笑って見せた。

「だい、じょうぶ、だ、」

そう言うと、目の前が真っ暗になった。


・・・


「久しぶりだな。水梛。」

目を覚ますと目の前には古城戸先生が居た。

「先生?…!」

「お前は、今まで、よく生きたな。その、病に蝕まれた体で。」

「何を言っているんですか、先生。ご冗談を。」

「覚えていないのか? お前の身体には、       。」

先生がそう言うと俺は何故か忘れていたことを思い出す。味覚を感じなくなった事。顔色が悪い事。近頃酷い痛みが何度も何度も襲ってくること。何故忘れたのかは分からなかった。いや、違う。最期ぐらいこんな事を忘れてお花畑なまま死のうと思ったのか。きっとそうだ。

きっとそうに違いない。俺は思考を終えると、古城戸先生に向かって言った。

「先生。俺が死んだら、悠貴は、また一人になってしまいます。悠貴は俺とも心を通わせられるようになって、俺は家族と言うものをやっと分かったのに、何故、どうして、また、離れ離れにならなければいけないのですか? 教えてください、何故、先生は、俺の代わりにあんな辞書なんかになったのですか?」

そうだ。今思い出した。何故頭より先に口が先行したのかは分からないが、やっと思い出した。先生は、俺の代わりになって、辞書になったんだ。

「当たり前だろう。お前は何十年にもわたって科学進歩の生贄にされてきた。もうこれ以上、お前は生贄にされてはいけない。もうこれ以上お前を犠牲にしたくなかった。ただそれだけだよ。水梛。」

先生はそう言うとふわり、と消えていった。俺は虚空を見つめたまま呆然と立ちつくした。

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