ep.5
「ここで良いです?」
「あぁ、ここで大丈夫だ。」
連れてきてもらったところは躑躅森微生物研究所の跡地で、俺の良くて悪い思い出の場所だった。俺は悠貴を横に座らせ、言った。
「もうそろそろ、敬語じゃなくていいんじゃないか?」
「何言ってるんですか?」
「苦手なんだろ?」
「……そうですけど、」
「同世代に話すように喋ってくれて構わない。お前とは、腹を割って話したいんだ。」
「そうでt………、そっか。」
「あぁ、それでいい。」
「渚さんさんは、どうして急に話す気になったの?」
「嫌な、夢を見たんだ。」
「……?」
「俺の、……幼少期の、さ。」
「そういえば、渚さんの幼少期はどんなものなのか、僕は知らないな、」
「………やはり、か。古城戸先生も、そう言っていた。」
「父さんも?」
「あぁ。じゃぁ、そこから、話そうか。」
俺はそう言ってごろり、と寝転ぶ。髪の毛の隙間を草花が撫でる。悠貴も俺を真似るように寝転び、何故か傍に落ちていた躑躅の花を見つけ、手に取って俺に見せる。
「躑躅じゃないか。」
「なんだか、不思議な感じがしたんだ。これを見たら。」
悠貴はそう言って雲一つない青空に躑躅の花を透かす。それを見ていると、なんだか俺まで不思議な気分がする。
「お前の『お父さんとお母さん』が置いてくれたんじゃないのか?……まぁ、俺にはよく分からんが。」
俺は茶化すようにそう言う。
「何言ってんの。……もう、二十二年前に、死んでるんでしょ?」
「……あぁ、そうだな。死んだ、と言えばそうかもしれないが、正しく言うならば、二人は、殺されたんだ。」
俺がそう言うと悠貴は驚いたようにこちらを見る。
「え、父さんは『二人は事故で亡くなった』って言ってたけど」
「あぁ、俺が、突き止めたんだよ。すべてはヤツの仕業だ。」
「……ヤツ、ねぇ、」
「確か、駿河大輝、という名前だったな」
「名前も聞きたくないよ。父さんを辞書にした張本人なんだから」
「そうだな。でもそれだけじゃない。」
「それだけじゃ、ない?」
「——————あいつが、すべてを始めてしまったんだよ」
俺はそう言うと、俺の頭の中の世界へ、悠貴をいざなった。




