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第4話 学芸会の役決め(男の子)


「――というわけで学芸会の役割を決めます‼」


 教室に入ってきた先生。

 その手には席替えでお馴染みの箱。

 そういえば、そんな時期だったな。


「今年は劇をやってもらいます‼」


 黒板の前に立つ若い女の先生。

 目がすごく生き生きしていた。


「今回の演目は先生が描いたオリジナル脚本‼ ラブロマンスです‼」


 先生の一言に教室がざわつく。

 男子からはブーイング。

 女子もやや不満気な声。

 俺も引き攣った顔で見ていた。

 その中で若干二名ほど、先生の提案に喜ぶ生徒がいた。


「緋色‼ 私と一緒に主役をやるわよ‼」

「え? 普通に嫌だけど」


 教室の後ろから消える騒ぎ声。

 そして。


「どんなお話か楽しみだね、ハルくん」

「お、おう」


 俺の左隣で笑顔を浮かべるフユ。

 その笑顔に気圧されて、俺は真実を言えなかった。

 ……あの脚本、俺が書いたものなんだよな。

 時間は三日ぐらい遡るわけで。


   ***


「夏陽君、一生のお願い。学芸会の脚本を書いてください」


 職員室。いつもなら怒られるために呼び出される場所。

 そこで先生が俺に土下座をして頼み込んでいた。

 というか、他の先生の目が痛い。

 頼むから早く顔を上げて欲しい。

 そもそも――


「なんで生徒の俺に頼むんですか‼」

「先生には無理です‼」

「……はっきり言いますね」


 確かに国語の授業。

 いつも苦心してたな。

 漢字が思い出せなかったり、教科書の文章の意味に躓いたり。

 時折、一番前の席に座る俺に聞いてくるほどだ。


「夏陽君、読書好きよね? 国語もクラスで一番」

「……まあ唯一の得意科目ですから」

「よし‼」

「何がよしですか⁉ 俺、絶対にやりませんからね‼」

「劇が成功したら、一ヶ月宿題免除と言っても?」

「ほ~う」


   ***

 あの言葉に乗ったのが運の尽き。

 期限は三日だし。劇の内容はラブロマンス。

 それ以外にも裏監督すらも任されている。

 本当に俺は多忙なんだ。

 よりにもよってクジ引き?

 この担任……俺を殺すつもりか。

 俺は自動免除でいいだろうが。

「さてと、劇の内容はこんな感じかな?」



 黒板に書かれた劇の大まかなストーリー。

 それに教室中から感嘆の声が挙がる。

 俺はそのプレッシャーで死にそうだった。

 なんでいきなり、期待の眼差しに変わってるんだよ。

 普通に嫌がれよ。子供には理解できない話だろうが。


 劇の内容はよくあるお姫様と王子様のお話。

 題材としては『眠れる森の美女』をモチーフにした。

 ただし、眠りについているのは王子の方。

 ……ウチのクラスの男子が、まともな演劇をやれるはずがないから。

 内容も色々と弄ってる。小学校の演劇レベルでできるものに。

 それなのに――


「はい‼ 僕、王子様やりたい‼」

「なら俺は王様だな‼」

「キャッ。柊君が王子様になったら」

「ならお姫様は私よ‼」

「私もやりたい‼」


 なんでこんな大騒ぎに。

 作った本人すらドン引きだ。

 まさかここまでとはな。

 ブーイングを避けようとして、誰でも知っていそうなお話。

 その結果、軽い学級崩壊状態。

 しかも原因は間違いなくラスト。


 この劇、呪いの解き方はキスではない。

 流石に皆、それは嫌がるだろうし。

 俺も人前ではやりたくないから。

 ならどういう終わり方にしたか。

 それは単純な話で――


「すごいね、このお姫様。王子様が起きるまで100年も待つなんて」

「そ、そうだな」


 隣に座るフユの言葉、それに心臓がギュッとなる。

 そこ関しては単なる俺の見解だ。

 だって王子が俺みたいなやつなら。


「…………」


 不意に隣に座るフユの唇を盗み見た。

 そして思わず想像して、顔が熱くなる。


「――できるわけないよな」


 俺は誰にも聞こえないぐらい。

 ともて小さな声で呟いた。

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