第1話② 初恋(女の子)
小学四年生の夏。
初めて恋をした。
完全な私の惚れ負け。
「大丈夫か、秋月‼」
プール溺れかけた私。
苦しくて。苦しくて。
どうしようもなくて。
気づいたら、お姫様抱っこされていた。
春からずっと気になっていた男の子に。
私はまた……助けられちゃった。
***
「ハル‼」
ビクッ‼
あれから私は変だ。
名前を聞くだけで胸が苦しくなる。
一学期は席が隣同士だった男の子。
そんな彼とは、今離れ離れで。
それなのに無意識で眺めてる。
サラサラな短い黒い髪。
いつもキラキラとした目。
私よりも少しだけ背が低くて。
笑った声は誰よりも楽しそう。
「どうしたの、フユちゃん。顔が赤いけど」
「な、なんでもないよ‼ それより次の授業って――」
お友達に呼びかけられて、慌てて視線を逸らした。
視線の先を知られるのが、すごく恥ずかしかったから。
しばらくして、先生が来て今年三度目の席替え。
四月に一回。
六月に一回。
そして今日――八月に一回。
皆が番号の書かれたクジを引く中。
私はずっとドキドキしていた。
特定の誰かの隣になりたくて。
でもなれるはずないよね。
四月に一回、隣の席になったんだし。
遂に私の順番が来た時、教室の中ですれ違った。
私が隣に座りたい男の子、夏陽ハル君と。
でも私は思わず顔を逸らす。
真っ赤な顔を見られたくて。
だって、すれ違うだけでも恥ずかしかったから。
胸に手を当てて黒板の前に立つ。
黒板にチョークで書かれた座席表。
そこには埋まった席に名前が書かれてた。
夏陽くんの席は今と同じ、廊下から三列目の一番後ろ。
できればそのお隣を引きたいけど、もう埋まってるし。
だったらせめてその前の席を。
恋の神様、お願い!
「えいッ‼」
私は手作りの箱に手を入れて、迷わずに一枚の紙を掴み取った。
そして不安になりながら開くと――
「はい、秋月さんは三番ね」
先生が元気な声と一緒に黒板へ書き込む。
……私、黒板の一番前の左側。
それも夏陽くんからすごく遠い。
私、恋の神様に見捨てられちゃったよ~。
心の中で泣きながら、自分の席へトボトボ戻る。
今の席は、廊下側から二列目の前から三番目。
こっちの方がまだ近いのに。
皆がクジを引き終わった頃。
私が机に突っ伏していた時。
「――先生!」
誰かが大きな声で先生を呼んだ。
それはすごく元気な男の子の声。
皆がいつも聞いてる、元気な声。
それが先生のことを呼び止めた。
「俺、また同じ席だから変わってもいい?」
私はその声に思わず後ろを向く。
一番後ろに立つ男の子を。
「最近目が悪いから」
男の子は右手でクジを摘まんで。
それから反対の指で指差した。
「四番の席が良いんだけど」
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