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第8話② スキ(女の子)


「――私はハルくんのことが好きだよ」


 一階でハルくんの寝言を聞いた後。

 私はその恥ずかしさで気絶した。

 そして薄れてゆく意識の中で運ばれた。

 ハルくんのベッドへ。

 それも眠っていたハルくんと一緒に。

 そして今、私はハルくんに告白した。

 それも初めてのキスの後に。


「……私はそんな感じ。ハルくんは?」


 初めてのキスは味もわからなかった。

 初めての告白はすごくドキドキして。

 今、初めて告白の返事を待っている。


「……いいのか? 俺なんかで」

「ハルくんだからいいんだよ」

「俺はバカだし、運動も苦手だし」

「うん、知ってる」

「それに友達だって少ないし。昨日までみたいに迷惑を掛けるかもしれない」


 ハルくんはいつも自分を悪く言う。

 私が言ったいい面なんて知らないみたいに。

 だけどこれだけは事実なんだよ。


「そんなハルくんが溺れた私を助けてくれたんだよ」

「別に……俺以外の誰だって動いたはずだ」

「私が学級委員長になりそうだった時も助けてくれた」

「たまたまやりたくなっただけだ」

「でも動いてくれたのはハルくんだから」


 他の誰でもない、ハルくんが動いてくれた。

 だから私はこんなにハルくんのことが好き。

 だからもしも――


「なら俺が助けなかったら? プールでフユを助けたのが別の誰かだったら?」

「その時はたぶん、その人のことを好きになってたと思う」


 私は今、すごく酷いことを言った。

 助けてくれたから。優しくされたから好きになった。

 それで別の誰かが助けてくれたら、その人を好きになった。

 こんなこと言ったら、普通なら振られても文句なんて言えない。

 でもハルくんに嘘は吐きたくないから。


「……調子のいい話だな」

「うん、自分でもそう思う」


 でも本当のことだから。

 私は否定しなかった。

 代わりに一言添える。


「だけど、私が今好きなのは間違いなくキミだよ。キミが私を助けてくれたから」

「…………俺はそんなに善人じゃない」

「……ハルくんならそう言うよね」


 繋いだ手の先から熱が伝わる。

 暖かくて、まるで素直じゃないハルくんの心の中みたいに。


「お前はそんなやつのどこが――」

「ハルくんだからいいんだよ‼」


 私はもう一度、グッと顔を近づける。

 それもさっきのき……キスぐらい近く。


「私はハルくんの優しいところが好きで。ハルくんの笑った顔が好きで。ハルくんの不器用なところが好きで。ハルくんの素直じゃないところが好きで。そういう面倒くさいところも全部含めて、私はハルくんが大好きなの‼」


 私は全部言い切った。

 自分の中にあった気持ちを全部。

 それを聞いたハルくんの態度は――


「……本当、情けない話だよな」


 ハルくんが小さく呟く。

 布団の中に顔を半分隠して。

 それも顔をリンゴみたいに真っ赤にして。


「告白は男の方からするべきなのにな」


 そう言って震える声を出しながら、ハルくんの視線が私に向く。

 そしていきなり、ガバッと強い衝撃が私の体に走った。

 それから私の体全体に熱が伝わって。

 気づいたら、ハルくんの鼓動が私の体に響いてた。


「……は、ハルくん?」


 急に強く抱きしめられて驚く私。

 そんな私を置き去りにハルくんが言う。

 それもとても甘くて聞きたかった言葉を。


「――俺もフユのことが好きだ」


 その一言に顔が熱くなって。

 その一言に鼓動が激しくなる。

 だけど私は確かに聞いた。

 ハルくんの本当の気持ちを。


    ***


「それでその……両想いになったことけど……」

「……う、うん」

「付き合うってことでいいのか?」


 布団の中で手を繋ぎながら、二人で天井を眺めながら話す。

 私もハルくんも、お互いの顔なんてとても見られなかったから。


「……それはその……」

「わ、悪い、変なこと聞いた‼ そうだよな。いきなり付き合うとか嫌だよ――」

「嫌じゃないよ。嫌じゃないけど、ただその……恥ずかしい……」

「……よく考えたら、俺も恥ずかしいわ」


 不意に私はハルくんの方を向く。

 するとハルくんは反対側を見て、私と手を繋ぐのとは反対の手で口元を隠した。

 それで照れ臭そうに――


「なら付き合わなくてもいい。ただ……一緒にいたい時は会おう、こんな風に」

「……う、うん」


 こうして私とハルくんは。

 少しだけ特別な関係になった。

 皆には秘密の特別な仲良しさんに。


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