表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

15/19

第7話① 掃除(男の子)


「――それはおばさんが正しいでしょ」


 三人の中で誰よりも早く来た緋色。

 緋色は俺の部屋で漫画を読んでいた。

 ちなみに俺は台本の手直し中。


「いや、俺と緋色だぞ。問題が起きるわけ――」

「僕、姫と一緒に寝たら絶対に触りたくなるよ」

「……お前はまた、サラッとすごいことを――」

「ハルはどうなのさ? 秋月さんに触りたい?」

「愚問だな」


 最初は格好良く決めた俺。

 だけどすぐに両膝を床に突く。


「……たぶん、緊張して一睡もできません」

「まあハルはそうだろうね」

「今、心の中で笑ったな‼」

「笑うでしょ。そりゃあ普通」


 こいつ、人の家でもお構いなしか。

 俺、なんでこいつと親友やってるんだろう?


「それよりもハル。この漫画の続きは?」

「本棚にあるだろ?」

「だからどの本棚?」

「見ればわか――」


 俺は机に向かい台本を直していた。

 だけど緋色に言われ、部屋の中を確認する。

 俺の部屋には本棚が全部で三つ。

 どれも踏み台を使わないと、上まで届かない高さ。

 それぞれ入っているのは、漫画、小説、インタビュー雑誌。

 だからわかりやすいと思った。


「ハルでもわからないよね?」

「……お、おう」


 よく見たら、本棚の中身はグチャグチャ。

 床にもお菓子や脱ぎっぱなしの靴下。


「これでよく人を招こうと思ったものだよね?」

「そうだった‼ 今日は緋色だけじゃなかった‼」


 俺は鉛筆を投げ出して頭を抱える。

 緋色だけなら、多少散らかってても問題ない。

 だけど今日はフユが来る。それも初めて我が家に。

 桐咲? 桐咲はたぶん、滅茶苦茶キレる。

 あいつ、家事が万能だけに掃除の鬼だし。

 俺を箒で叩いた後、掃除を開始するはずだ。


「僕としては姫のマイエプロン姿が見れるからいいけど。ハルは――」

「掃除だ‼ 今すぐ掃除をするぞ‼ すぐに桐咲一等兵を招集せよ‼」

「いや、無理でしょ。今日は秋月さん、迎えに行ってるし」

「なら緋色だ。お前が手伝ってくれれば――」

「おばさん‼ 緋色がこの前、おばさんの化粧品でイタズラ――」

「よし、話し合おうじゃないか‼」



   ***

 とりあえず緋色は時間稼ぎで一階に配置した。

 問題は時間までに片付くかどうか。


「……片付くのか?」


 床に散らかったゴミ、衣服、ホコリ。

 掃除機を最後に掛けたのいつだっけ?

 ヤバい、覚えてる限り一ヶ月は掃除してないぞ。

 しかもここ最近、脚本のことで頭が一杯で色々とアレだったし。

 変なところに変なものとかあっても、おかしくないよな。

 例えば、ベッドの下にパンツが落ちてても。


「…………」


 ひょっこりと確認してみる。

 だけど下着は無さそうだ。

 というかむしろ、ベッドの下の方が綺麗まである。

 なんでだ? なんで見えるところの方が明らかに汚い。

 こんな部屋恥ずかしい&怖くて、フユと桐咲には見せられないぞ。


「とりあえずゴミをゴミ袋に詰めて、掃除機を掛ければ問題ない‼」


 俺は落ちているゴミを全てゴミ袋へ入れた。

 衣服に関してはまとめて洗濯機へ。

 ……間違いなく、後で母ちゃんに怒られるが。

 続いて掃除機を掛けて。ここまでで一時間。

 緋色曰く、二人はお昼と夕飯の買い出しをしてから来るらしい。

 あとは本棚だけなんだが……


「よくもまあ……こんなに詰め込んだものだな」


 いや、悪いのは俺じゃない。

 だって親父のとかもあるし。

 俺が持ってる古い漫画は親父のものだ。

 それに部屋が狭すぎるのだって問題だ。

 ベッドと本棚と机とテーブル。

 それを置いたら完全にギチギチ。

 普通に過ごしていても汚部屋に見える。

 さて、一体どうしたもの――


「ハル‼ 姫たち、今スーパーを出たところだってさ‼」


 一階から聞こえた緋色の声。

 電話でも掛かってきたらしい。

 そういえば、姫も緋色もスマホ持ちだったな。

 いつも学校には持ってきてないけど。

 さてどうする? ウチの近所のスーパーからなら一五分程度。

 その間に本棚の整理……なんてできるのか?


「いや、絶対に無理だろ」


 声に出して事実を確認した。

 それでふと、あることに思い当たる。


「あ~。だから俺、昔もこの前も失敗したんだな」


 零れた言葉。その時、頭の中にあったのは、二つの光景。

 低学年時代の学級委員だった頃の記憶。

 そして昨日までの世話しない時の記憶。

 その二つだ。そして今までの俺なら間違いなく、今日も失敗してた。


   ***

 十数分後。


「ちょっと夏陽‼ アンタ、本当に掃除したの‼」


 不満そうな桐咲の声。


「しょうがないよ、ハルだから」


 さっきまで手伝わなかった緋色の声。


「ハルくん‼ こっちの本はどうする?」


 掃除なんて誰もが嫌がる作業。

 それを何故か、楽しそうに行うフユの声。

 その三つが俺の部屋から聞こえていた。


「別にお前、桐咲と違って掃除好きではないよな」

「うん、お掃除は大変でちょっと苦手だけど。でも……」

「でも?」

「ハルくんが初めて頼ってくれたこと。それ自体がすごく嬉しいの」


 そう言ってフユは笑っていた。

 その笑顔に思わず俺は目を逸らす。

 心の中で、『反則』だと思いつつ。


ブックマークと評価お願いします。作者の励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ