第6話その後 親子(男の子)
「――友達が泊まりに来る‼」
俺が頭に包帯を巻いて帰った金曜日。
夕飯の最中だった。
俺の言葉に母ちゃんが何故か驚いた。
……流石に息子に対してでも失礼だ。
「もしかしてまた緋色君かい?」
「あいつもだけど他に二人ぐらい」
「二人⁉ アンタ、緋色くんの他に友達居たの⁉」
「普通にいるわ‼ 俺をなんだと思ってるんだ‼」
た、確かに男子の友達は緋色ぐらいしかないけど。
そ、それでもちゃんと友達を選んでるだけだし。
別に友達作りが下手なわけじゃない‼
「それで他の二人ってどんな子だい?」
「桐咲と初めてウチに来る女の子」
箸でご飯を一つまみして、口に入れる。
やっぱりご飯は何も掛けてないに限る。
まあ混ぜご飯じゃなければ、なんでもいいけど。
「このバカ息子‼」
俺が口から箸を話した直後。
頭の上から鉄拳が降り注いだ。
「変な怪我作ってきたと思ったら、今度は家に女の子を泊める?」
「いいだろ‼ 母ちゃんもたまには友達をウチに泊めろって――」
「それは男の子の話‼ 女の子を男の子の家に泊められると思うのかい?」
「……逆に聞くけど。男って言っても俺と緋色だぞ」
「あ~‼ それなら向こうの親御さんも安心だわ」
なんか普通に納得が行かね~。
そもそも――
「皆、劇の練習や打ち合わせで来るんだよ‼ 別に遊びに来るわけじゃない」
「そ、そうだったね」
「それにそれぞれ、親にはちゃんと許可を取ってから来る予定だ」
俺はそんなに信用がないのか。
いや、俺を一から十まで信用したら、あっさり信頼関係瓦解だな。
俺、平然とつまらない嘘吐くときあるし。
「でもアンタが劇の主役なんてね。いつも隅で木や塀の役ばかりだったのに」
「しょうがないだろ。クジ引きで決まったことなんだから」
「それで主役って一体――」
「さてと。今日はどんなテレビがやってるかな~」
リモコンを手に取り、テレビのチャンネルを回す。
母ちゃんが俺に振った話題。それから全力で逃げたくて。
だって、『お姫様だよ、キューピーン(ウィンク)』なんて言えるはずがない。
俺にも一〇年近く、男として育てられたプライドがある。
それでもお姫様役に変わりはないんだけど。
「とりあえず事情は分かった。きっとその友達のおかげなんでしょ」
「何が?」
「アンタがいつものバカに戻ったの」
母ちゃんの言葉を聞いて、俺は無言でテレビを消してリモコンを置く。
そして箸を置いて、真っ直ぐに母ちゃんの方を向いて尋ねる。
「ここ最近の俺、そんなにおかしかったか?」
「とは言っても二、三日の話だけどね。ご飯もロクに食べないし」
「言えよ、そういうことは。バカなんだから、言われないと気づかないぞ」
「バカなんだから、言ったら余計混乱するだろ‼」
うっ。正論過ぎて反論できない。
流石は俺の親を一〇年近くやっているだけはある。
「それにこういうのは自分で気づかないと」
「相変わらず面倒な教育方針ですな~」
「まあアンタ自体が面倒な性格だからね」
「知ってる。それで緋色やその……新しい友達にも迷惑かけっぱなしだし」
あと、ついでに桐咲も。
「それでその新しい友達ってどんな子なんだい?」
「どんなって言われてもな……いいやつとしか」
「なに、その回答?」
「いいだろ‼ それ以外に思い浮かばないんだから‼」
それ以上何かを言おうとしたら、すぐにボロが出そうだし。
こういう色恋沙汰、マジで本人以上に親には知られたくない。
特に母ちゃん。そういうのうるさそうだし。
親父? 親父も色々と面倒くさい。
絶対に毎日それで絡んでくるだろうし。
「そういや親父は?」
「会社の飲み会」
「……相変わらず大人は大変ですな~」
ここ最近、残業や飲み会ばかりだけど……。
普通なら、浮気とか疑うものなんだろうな。
ウチの親父にそんな甲斐性、明らかにないけど。
そんな甲斐性があるなら、万年係長なんてやってない。
「アンタも今日は夜更かししないで寝るのよ」
「ヘイヘイ」
「それとお風呂上がったら、包帯変えるから母ちゃんに言いなよ」
相変わらず口うるさい。
包帯ぐらい自分で変えられるって言うのに。
あんなのグルグル巻いて……どうするんだ?
でもまあ、許してもらえて良かったな。
ウチは一応一軒家だし、騒いでも問題ない。
劇の練習をするなら、マンションよりもウチがマストだ。
「それで寝るところはどうすんだい?」
「全員で俺の部屋に雑魚寝――」
また思い切り頭を叩かれた。
「俺がバカになったらどうするんだよ‼」
「アンタはもう十分バカだよ‼ 女の子も居るんだろ‼」
「問題ねぇよ‼ 俺と緋色だぞ‼」
「……ダメなものはダメ‼」
それから俺と母ちゃんの問答は一時間以上続き。
結果、俺と緋色がリビングで。フユと姫が俺の部屋で寝ることになった。
……なんか、納得がいかない。
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