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帯分数は遠いけど  作者: 天そば
第三章 迷走する仮分数
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迷走する仮分数 7

     10



 マンションの前まで来て、こんなに急がなくても、メールを見た直後に電話すればよかったんじゃないかと気がついた。それで容態を確認して、本当にインフルエンザなら数日分の食料やら何やらを買い込むなりすればよかったのだ。自分の頭の回らなさに今更ながら呆れ、でもここまで来て電話するのも意味がないし、一旦家に戻ってから必要なものがあれば買いに行こうと自動ドアをくぐってロビーに入る。運良く一階にあったエレベーターに乗って三階へと昇った。


 家の前まで来ると、エレベーターの中で取り出しておいた鍵を鍵穴に差し込む。だがどうしてか、ツマミが回る手ごたえを感じない。がちゃ、とロックの解除される音もしないし、どうやら最初から鍵はかけられていなかったようだ。


 大丈夫なのか、病人がひとりで――? いや、それともまだ羽原か近澤がいるのだろうか。

 そう思いながらドアを開けて家に入ると、おかえりーと元気のいい声が聞こえてきた。あれ、この声は……。


「まだ六時なのに、今日は早いね」


 意外そうな声色でそう言いつつ、エプロンを着た姉貴がリビングから顔を出した。

 玄関からは少し遠いが、見る限り背筋もいつも通りぴしっと伸びているし、顔色だって悪くない。目もしっかり開いている。若干鼻声気味だが、それ以外は普段と何も変わるところがない。


「夕飯作ってたのか?」


 おれは呆気にとられながら尋ねる。料理もしないのにエプロンを着る人間なんていないと知りながらも、訊かずにはいられなかったのだ。

 姉貴は何でもなさそうに軽く頷いて、少しはにかんだ。


「夕飯作るのって久しぶりだから、何だかはりきっちゃって。待っててね、もうすぐできるから」


 待っててね、じゃないだろう、と思いながら、


「もう、体調はいいのか? 羽原からのメールには、もしかしたらインフルエンザかもってあったが」

「ああ、昨日は結構熱あったんだけどね。薬飲んで眠ったら、もうすっかり治ったよ」


 笑いながらそう言うと、じゃあ、と言って顔を引っ込めた。おそらくキッチンへ行ったんだろう。 急いで帰ってきて損したと思うぐらい、いつも通りの姉貴だった。なんて忌々しい回復力だ。いや、それよりも――。


 病み上がりなんだから、少しぐらい休んでくれよ。


 そう思うが、口にはしない。その代わり、おれは姉貴の笑顔を思い浮かべた。

 細くなった目と、頬にできたえくぼ。姉貴と初対面の人は高すぎる身長で圧倒されがちになるが、こうして一気に年齢が低く見える笑顔を見ると、ほっと胸をなでおろす。そういった光景は何度か見たことがある。


 それを知ってか知らずか、もっと笑えと親戚中からせっつかされていたおれと違って、姉貴は昔から、よく笑う子だねと言われ続けていた。おれ自身もそう思っていた。


 しかし。


 今おれの胸の内には、果たしてあれらは本当の笑顔だったのかと、一度も抱いたことのない疑念が渦を巻いていた。

 そう思う理由はもちろん、昨日ハンバーガー屋で考えたことに直結する。


 姉貴はあの日、店内で喧嘩を始めたふたりの女に、故意に敗北感を抱かせたのだろうか? 人の劣等感を計算にいれて行動できるほど、あいつは負の感情に敏感なのだろうか?


 もし、そうなのだとしたら……。昨日の朝食の席で、小学生時代の話をしたのは…………。

 おれは、ゆっくりと部屋へ向かって歩を進める。歩を進めながら、考える。



     *****



 おれたちがまだ小学生だった頃。通っていた小学校は珍しいことに野球部がなく、ソフトボール部しかなかった。父さんが根っからの野球好きということもあり、まあ、野球もソフトも似たようなものだ、ということで姉弟揃って入部をしたのが四年生の春。同期には、康夫に羽原、近澤がいた。


 その頃から姉貴は大きかった。小学校四年生で一六〇近くあって左利きとなれば、ポジションは基本的に個人の意思を尊重する監督ですらピッチャーを押してくるのは当然のことだ。姉貴は言われるままにピッチャーをして、おれは自ら進んでピッチャーを希望した。


 しかし、双子といえど運動神経の差は大きかった。半年でエースに対抗できるほどのピッチャーに成長した姉貴と、ストライクすらまともに取れないおれ。すごいすごいともてはやされる姉の傍で、弟は四死球を量産する毎日だ。


 けれど、このときのおれは前向きだった。いつか絶対追い越してやると、雲の上にいる姉貴を分不相応にもライバル視していたのだ。当然のことながらその夢は叶わないまま時が流れ、おれたちは六年生になった。


 当時のピッチャーは、六年生だけで五人いた。その中でも飛びぬけていたのが姉貴と近澤で、本格左腕と右腕の二枚看板なんて、まるで高校球児のような物々しいふたつ名をつけられたものだ。だが、小学生のおれの目から見ても近澤は試合の流れや自分の感情に左右されやすく、安定感のある姉貴のほうがピッチャーとして一枚上手だというのは明白だった。あいつは、誰もが認めるエースだったのだ。


 それでもおれはまだ、姉貴を越してやろうなんて思っていた。その矢先だった。


 近澤が交通事故で怪我をした。命に別状はないが足の骨を折ってしまい、しばらくは運動ができない状態になった。

 同じチームの仲間が事故にあったのだ。当然、心配もする。だがおれは、それ以上に喜びを感じていた。


 五年と四年には六年に対抗できるほどのピッチャーはいないので、近澤がいなくなれば使えるピッチャーは実質四人になる。姉貴と近澤以外のピッチャーはみんなどんぐりの背比べといったところだったが、まあ残りのふたりよりはおれの方が僅かに上手なんじゃないかな、と勝手に思っていた。つまり、近澤がいなくなった今、おれは姉貴に次ぐ二番手ピッチャーになったのだ。エースをずっと登板させるわけにはいかない。力の差があれど、おれは確実に起用されるだろう。


 試合で投げられる。これで結果を出せば、姉貴へ大きく近づくことができるかもしれない。一週間後に迫った大会のことを思うと、胸が躍った。


 しかし、迎えた大会の一回戦で、事態は思わぬ展開を見せる。


 相手校は、攻撃はいまいちだが堅実な守備をチームカラーとしていた。同じく、攻撃より守備重視、守り勝つのを得意とするおれたちが楽に点を取れるはずも与えるはずもなく、得点ボードにゼロ以外の数字が刻まれないまま最終回まで来た。


 その表、おれたちの攻撃のとき、羽原の内野安打と康夫の二塁打で一点を取ると、続く守りでは、一回からずっと投げている姉貴が引き続きマウンドに立った。一点差となると、控えを使う余裕などないのだ。正直おもしろくなかったおれは、ふくれっ面で試合の行方を見守った。


 と言っても、相手校のこれまでのまともなヒットはひとつ。その他に出したランナーはすべて、こっちのエラーが原因だ。正直、打たれる気配はまったくなかった。それほどにピッチャーとバッターのあいだにあるレベル差はすごかったのだ。誰も、負けるなんて思ってなかった。


 先頭バッターを四球で歩かせたときも、そんなに空気は変わらなかった。終盤になると、疲れからか姉貴のコントロールが若干悪くなるのはたまにあることだ。キャッチャーの康夫が声をかけ、セカンドの羽原が精一杯の背伸びをして姉貴の肩を叩いた。しかし、次のバッターに死球を当てると、いよいよもって雲行きは怪しくなり、監督がタイムをかけて試合に出ているメンバーとマウンドに集まって何やら話を始めた。


 おれはこのときもまた、内心で大喜びだった。もしかしたら、おれが投げろと言われるかもしれない。話が終わると、監督がまっすぐにおれのほうへ歩いてきて、ボールを渡してくれる。そんな妄想が頭の中を駆け巡り、おれはベンチでひとり準備運動を始めた。だが、話が終わって円が崩れても、姉貴はマウンドを降りることなくそのままゲームは再開された。どうやら監督はアドバイスをしただけで、シートの変更を伝えに行ったわけではなかったらしい。おれはまた、おもしろくなかった。


 その後、ツーアウトまでは楽に取れた。続くふたりのバッター、八番と九番を姉貴は三振に切って取ったのだ。

 そして、打順が先頭に戻ると、空気が一層重たくなった。一番バッターは相手のキャプテンで、姉貴から唯一まともなヒットを打ったやつだった。目が大きいが髪が短く、男か女かよく分からないと思ったのを覚えている。


 だが、心配も束の間。応援に来てくれた父兄やベンチの部員たちが固唾をのんで見守る中、一球目、二球目と、そいつは盛大に空ぶった。完全に緊張していて、先ほどの鋭いバッティングの面影はどこにもない。これは絶対に打てないな。それどころか、三球三振もありえる。相手チームにもそう思ったやつがいたらしい。誰かの泣き声が聞こえた。


 ――だが、そのとき。


 姉貴の手から放たれた三球目は、驚くほど力のないボールだった。チェンジアップではない。そんなもの、小学生の姉貴は投げられなかった。しかも、そのボールはまっすぐ、ストライクゾーンのど真ん中へ……。


 打たれる、と思った。あんな、バッティングセンターに行ったって滅多に来ないような打ちごろのボールを投げて。やばい、と誰もが思った、そのとき。

 果たして、バットは空を切った。相手は、ずっと速い球を見せられていたから、突然付けられた緩急についていけなかったのだ。それで、試合は終了した。


 ピンチを乗り越えての勝利を手にしたおれたちのチームは、声を上げて喜んだ。だが、ばんざーい、と父兄も一緒になって陽気な歓声を上げるチームメイトの横で、おれはまだ、投げさせてくれなかった監督への不満を持ち続け、素直に喜ぶ気になれなかった。抱き合って喜ぶ者もいるというのに、その隣で陰気な顔をしたおれが地面を睨んでいるというのはおかしな図だっただろうと今になって思う。


 しかしそのとき、もうひとりいたのだ。おれと同じで、素直にこの勝利に歓喜の声を上げることのできない者が。そいつはおれと同じく、暗い顔をしていた。けれど視線は下ではなく、目前の勝利を逃した相手チームに向けられていた。


 桜井都は、何も言わずじっと、大粒の涙を流す相手チームを見つめていた。



     *****



 部屋で着替えると、そのまま机に向かった。明日も学校は休みで朝から塾があるので、予習復習はきっちりと、なんて、立派な受験生精神から自然にとった行動ではもちろんない。ただ単に、おれは姉貴のことを考えるのをやめたかったのだ。だから、何か気を紛らわすものはないだろうかと考えたときに視界の隅に入った勉強机を頼ることにした。


 しかし、机に向かってみたところで、靴の底に張り付いたガムのようにおれの思考にこびりついた姉貴の一連の行動は、考えるのをやめさせてはくれなかった。


 姉貴は故意に殴られたのか、それともただの偶然か。


 そんなこと、おれが考えてみたところで答えなんてでないと分かっている。直接本人に訊けばいいのだ。だが、それができるなら苦労はしない。

 思考の堂々巡りを繰り返しているうちに、結構な時間が流れていたらしい。おれの思考を占めていた張本人の、ご飯できたよー、という声が聞こえてきた。


 そして部屋から出たとき、おれはいやな予感を覚えた。



     *****



 その日、一回戦を突破して家に帰って来ると、父さんと母さんはおれたちを笑顔で迎えた。父さんも母さんも試合を観に来てくれたが、おれたちはミーティングがあって学校に戻ったので、ふたりは一足先に家に帰っていたのだ。


 まずは姉貴が風呂に入り、その次におれが入った。風呂から上がると、四人がけの食卓テーブルに夕飯が並べられていた。ビーフシチューだった。我が家ではシチューと言ったらホワイトなのに、この日はお肉をたくさん食べさせたかったとかで、趣向を変えたらしい。


 実際、背は低いがよく食べるおれは、試合で感じた不満を忘れて、肉がふんだんに入ったビーフシチューに夢中になった。一皿目を平らげ、母さんにおかわりをお願いした後、隣にいる姉貴の食がほとんど進んでいないのに気づいた。左手に握ったスプーンを器につっこんだまま口に運ばず、ただずっとデミグラスソースの香りを漂わせるビーフシチューの表面を見つめている。いつもなら、おれ以上にたくさん食べるというのに。


 父さんも同じことを思ったらしい。どうした、都? と、声をかけた。すると、顔を上げた姉貴を見て、おれも父さんもぎょっとした。


 長い睫毛にふち取られた姉貴の瞳に、涙がたまっていたのだ。


「お父さん、わたし、もうピッチャーやりたくない」


 おれも父さんも驚愕した。なぜ、勝ったのにそんなのことを?


「なんでだ? 今日は立派に投げぬいたじゃないか」


 姉貴は顔を手で覆って、ふるふると首を振った。

 何がなんだか分からない。父さんとおれが顔を見合わせたとき、おれのおかわりのシチューを持った母さんが戻ってきた。


「どうしたの、都? もしかして、今日の試合で何かあった?」


 姉貴に駆け寄り、そう訊く。姉貴は小さく頷いて、


「相手チームの人がね、泣いてたの。負けそうになったとき。そのあと、試合が終わって、もっと泣いてた。本当は、いつもおもってたの。ピッチャーなんてしたくないって。勝っても、嬉しくないよ。かわいそうなんだもん」


 しゃくりあげながらそう言った。

 かわいそう、とは、相手チームのことだろう。おれは考えもしなかったことだ。勝負の世界に勝ち負けは必要で、当然、誰かは敗者になる。姉貴は、その敗者がかわいそうだと言ったのだ。そして、ソフトボールというスポーツにおいて、ピッチャーとはその勝敗をもっとも左右する位置にいる。だから、もうやりたくない、と。


 それを理解したとき、おれは目の前が暗い闇に包まれるのを感じた。


 おれはチームメイトの近澤が怪我をしたとき、何を思った? 心配した、と言ってもそれはほんの少しだけで、多くの感情は歓喜に占められた。これでおれにもチャンスが回ってくる、と。


 今日の試合でも、ピンチの場面でなぜおれを使わないんだと、監督を恨んだ。姉貴に三振を取られた相手チームのバッターにも、何で打てないんだとイラついた。お前らがここで打てば、姉貴がもうだめだと監督が判断すれば、おれにもチャンスが回ってくるかもしれないのに、と。自分は姉貴からまともなヒット一本放ったことすらないというのに。そして試合が終わっても、楽しげなチームメイトの輪に入らず、いつまでもおもしろくない思いでふて腐れていた。


 だというのに、姉貴はどうだ?


 エースの看板を背負ってマウンドに立ち、いくつものプレッシャーをはねのけて今日の勝利の立役者となった。しかし、試合が終わって感じたことは、涙を流す相手チームへの同情の念と、ピッチャーである自分への嫌悪。自分のせいで相手を泣かせてしまったと、本気でそう思ったのだ。


 高校生になった今にして思うと、それは相手側からしたらひどく屈辱的な考えだったろうと分かる。そんなことを思うなら、最初からピッチャーなんてするな、スポーツなんてするな、と。


 だが、あの頃のおれたちはまだ小学生だった。そんなこと、考えられるはずもなかったのだ。

 おれはただ、姉貴と比較して、自分はなんていやなやつなんだ、歪んだやつなんだと、それだけしか考えられなかった。


 自分のことしか考えず、チームメイトの怪我に小躍りするおれと、相手チームに心から同情し、涙を流す姉貴。


 なんて差があるのだろう。なんて大きな違いだろう。チームメイトを心配しないだけで最低なのに、おれはそれに気づきもせず、試合に出してもらえないことに腹を立てていた。

 そんなおれの目の前で、姉貴は泣いている。もうピッチャーはしたくないと嘆いている。


 このときおれは、はっきりと悟った。


 おれはずっと、運動神経や頭で姉貴に遠く及ばないことを知っていた。それを悔しいと思っていた。しかし、それ以上に――。


 人間として、おれは双子の姉に完膚なきまでに負けていたのだ。


 その翌日の第二回戦で、おれたちの学校はトーナメント表から姿を消した。三回コールドだった。不動のエースが大乱調で、力のないボールが全て真ん中に行ったのだ。四死球も山のように出した。

 そして、その試合を最後に、桜井都がマウンドに上がる日はなくなった。その影に隠れるように、桜井実もピッチャーをやめたのだが、それは恐らくほとんどの人にとってはどうでもいいことだったろう。なにせ、常にチームの勝利を揺るぎないものにしてきた絶対のエースの降板という、今までにない衝撃の最中だったのだから。



     *****



 リビングに行くと、姉貴がエプロンを冷蔵庫のフックにかけていた。おれを向いてにっこり笑う。


「今日はね、気合入れたんだよ」


 おれは何も言わなかった。


 姉貴はあの日のことを覚えているのだろう。昨日の朝、ピッチャーを降りたのは正解だったと言ていたのだから。

 でも、あの日、おれが姉貴の人間性に叩き潰されたことは知っているだろうか。

 知らないだろうと、おれは昨日の朝までは思っていた。あのときの姉貴はいっぱいいっぱいで、とてもおれなんかに気を配る余裕はなかっただろう、と。


 けれど、飯塚から聞いた話で、その考えはひっくり返った。


 細かいところまで気配りのできる姉貴だが、恵まれすぎているが故に嫉妬や恨みといった負の感情には疎い。だから、おれがなぜピッチャーをやめたのかなんて気がついていないだろうと、そう思っていたのに。

 姉貴は店で喧嘩する客を鎮めるために、わざと殴られ、その後の立派な対応で相手に敗北感を抱かせた。すべて計算して行動した。


 その仮説が正しいのなら、人の敗北感を理解できる人間なら……。


 朝食の席で、おれが一番触れられたくない小学校時代の話をしたのも、わざとだったんじゃないか?

 おれの過去の傷を掘り起こしてどんな意味があるんだと問われれば、分からないと答えるしかない。けれど、何かいやなことがあって鬱憤を晴らすためにしたとも考えられる。気が動転するおれを見て楽しんでいたんじゃないか、そんなことまで思ってしまう。


 こんなことを考えるおれは最低だと分かっている。分かっているが、やめることのできない器の小ささが、いかにも桜井実らしい。


 そして今、食卓テーブルにある料理を見て、おれは薄く笑う。

 今日の夕飯が何なのか、それはもう見るまでもなく分かっていた。部屋の前まで漂ってきた、濃厚なデミグラスソースの香り。


 テーブルにあったのは、ふたりぶんのビーフシチューだった。

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