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第2話 桜木沙月は魔女である

目の前に現れた銀髪のショートヘアの美少女。ふんわり甘い香りが突き抜け、鼻がくすぶる。


「どうしたの?顔が赤いけど?」


「あ、いえ、その…………どうしてここにいるんですか。桜木沙月さくらぎさつきさん」


「私のこと、知っていてくれたんだね」


「知らない人なんていないと思いますけど」


 桜木沙月さくらぎさつき、その名前を聞いて知らないと答える人がいないほどの有名人。元宋高校での成績はトップに加え、運動神経も抜群で、特に特徴的なのは、見透かすような青空色の瞳に、目を引くほどに艶やかできれいな銀色の髪。


 元宋高校に通っていれば、必ず、聞く名前だ。


「それで、そのなんで、俺の名前を知っているんですか?それに、お悩み相談部って聞いたことないし…………」


 聞きたいことはいろいろある。なんで俺の名前を知っていて、まるで待っていたかのような発言をしたのか。あと聞いたこともない部活の名前。


 たしか、桜木さんは部活に入部していなかったはずだ。


「わかるよ、千冬君の気持ち、私にはよくわかる。一つずつ、答えてあげるから、座ったら?」


「あ……えっ」


「どうしたの?」


「帰っていいですか?」


「…………帰れると思う?」


「あ、いえ、座りますっ!」


 桜木さんの笑っていない瞳に、背筋が冷えあがる。桜木さんってこんなに怖い人だっけ?なんか、怖いんだけど。


 すると、俺は気づく、椅子が桜木さんの隣にしかないことに。


 まさか、桜木さんの隣に座れとっ!?と目を見開いた。


 やけにニコニコな桜木さんの様子を見るには、意図的ではないのか?でもたくさんある椅子の中で明らかに座ってと言わんばかりに置かれた椅子。


「座らないの?」


「あ、いえ、座ります」


 俺は、勇気を振りぼって桜木さんの隣に座った。


「それじゃあ、千冬くん。まずは、自己紹介をしよう。私は桜木沙月、1年A組だよ。気軽に沙月って呼んでね」


「あーーわ、わかった………です。さくーーーー」


 っとそこで冷たい目線を向けれる。


「あっ、さ、さつき…………」


「うんっ!」


「俺は、柊千冬。1年B組…………よ、よろしく」


 沙月が隣にいるだけでも緊張で落ち着かないのに、それに加えて、名前呼びなんて生き地獄だ。


「それじゃあ、本題に入るけど、是非とも千冬くんには『魔女のお悩み相談部』に入部してほしいんだ」


「え…………」


「私はね、ずっと君を待っていたんだ。ずっと、ずっとね。活動内容は、生徒から悩みを聞き、解決する。簡単でしょ?」


「いやいや、待ってください。そもそもなんで俺のことを知っているんですか?さくーー沙月とは一回も話したことがないと思うんだけど」


 そうだ、俺は、桜木沙月との面識は一切なく、むしろ俺が一方的に知っていた側のはずだ。なのにまるで知っているかのような口ぶり。


「そんなこと関係ないでしょ。私はただ、私の部活動の手伝いを千冬くんにしてほしいだけ。私には君が必要なの」


 そう言って強く千冬の両手を握る沙月。小さく小柄でとても可愛らしい手が俺の手を包み込み、上目遣いな目線に顔が赤らめる。


 やばい、流される。これ絶対に流されて、入部させられる奴だっ!と思い、目線をそらした。


 こんな怪しげな部活、普通なら絶対に入部しない。それがたとえ、桜木沙月であってでもだ。だけど、沙月を無下に扱っていいのだろうかと、はっきりと断れない自分がいる。


「千冬くん、もし迷っているならお試し入部ってことで一件だけ付き合ってくれない?それで入部するかどうか決めてくれていいから…………ね?」


「なぁ!?」


 お試し入部か、少し罠のような気がするけど…………。


「わかった」


「よかったぁぁ…………それじゃあ、入部の書面書いてね」


「ああ、わかった」


 俺は、渡された紙に部活名と名前を書き、沙月に渡す。


 うん?と違和感を感じた頃には書いた書面は沙月の手に渡っていた。


「じゃあ、これからよろしくね、千冬くん」


「…………だましたなぁぁぁぁぁ!!」


「だましてないよ。もし、入部を決意してくれたら、いつでも出せるように書いてもらっただけだから」


「あ、なら…………ってなるかっ!その紙を返せっ!」


「やけに焦っているけど、もしかして、そんなに私が信じられない?」


「そ、そういうわけじゃあ」


「ならいいよね」


「…………あっ、う、うん」


 完全に手間取られている感じがするけど、まぁいい。それより、俺は沙月に聞かないといけないことがある。


「沙月、なんで俺のことを知っているんだ」


「う~~ん。そうだな、なんでだと思う?」


「はぐらかすなよ」


「…………千冬くん、今何を考えているのか、当ててあげようか?」


「はぁ?何を言って…………」


「なんで俺の名前を知っているんだろう。どっかであったっけ?でも、1学期は入院していたし、夏休みは課題で外へ出ていないから、あったとしたら、中学生のころか?でも、中学校卒業と同時に上京してきているから、ありえない…………って感じかな?」


「…………」


 絶句した。正直、最初の文は予想できる範疇はんちゅうだった。でも、最後の中学の頃の話は誰にも言っていないことだ。


 なんで、沙月が知っているんだ。


「あってるかな?…………でも反応を見るに大体あっていたよね」


「ふぅーーー沙月ってもしかして人の心でも読めるのか?」


 半分冗談気味に言うと沙月はクスッと笑って。


「そうなんだ。実は私、人の心が見透かせるんだ」


 その微笑みからは一切のウソを感じない。


「う、うそでしょ」


「噓じゃないよ、本当だよ」


 これは本当っぽいけど、にわかに信じがたいな。


「だってほら、書いてあるでしょ。『魔女のお悩み相談部』って」


「書いてあるって、別に普通だろ?」


「いやいや、ほら、魔女のお悩み相談部って」


「…………魔女。その魔女って」


 そう言って沙月に指先を向けると、無言でうんうんっと頷いた。


「だから、心が読めると」


「そういうこと」


「…………理解できない」


「まぁまぁ、そんな悩まないで。普通に私は魔女で、魔女だから心が読めて、そんな魔女がお悩み相談部として活動しているって思ってくれればいいから」


「いやいや、話が飛躍しすぎでしょっ!!」


 たしかにさっきまで部活名に違和感を覚えなかった俺も悪かったかもしれないけど、いきなり心が読めるって現実的じゃないでしょ。


 それはもうあれだよ、異世界ってチート能力を手に入れるって感じのやつだよ。


「千冬くんってかわいいね」


「え……あ、どうもってそうじゃないっ!!」


 魔女、沙月は魔女。てかなんで、魔女がお悩み相談部なんてやっているんだ?心が読めるからか?でも、やる理由なんてないよな。


「ねぇ、千冬くん。そろそろ落ち着いたら?」


「…………そうですね」


 少し興奮しすぎたなっと思い、椅子に座り出されたお茶を飲む。


「そうだ、千冬くん。連絡先を交換しよう」


「連絡先?別にいいけど」


 俺はポケットからスマホを取り出し、沙月と連絡先を交換した。


 高校に入学して初めての連絡先…………少しうれしいかもっと思う千冬。


「うん。それじゃあ、明日、またこの部室に来てね。ちょうど、お悩み相談が一件あるんだ、そこで千冬くんには体験してもらうから。楽しみしてて」


「楽しみにって…………わ、わかったよ」


 チャイムが鳴ると、沙月は立ち上がり。


「今日の活動は終わり。カギは私が返しておくから、今日は帰っていいよ、千冬くん」


「あ、うん」


 俺はそのまま先に部室を出た。


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