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再生の時

私は暗い闇の中にいる。暗黒の世界だが、心地良い。

言うなれば母なる存在に抱かれているような、

何も心配することもない、何も危険のない、そんな世界。


もう少しその世界に包まれ微睡んでいたいのだが、不思議な力で目覚めさせられた。起きたばかりだからだろうか、少し全身がダルいようだが、すぐ慣れるだろう。


なぜ私はこんなところにいるのだろうか。


…いや待て、少しずつ思い出してきた。記憶の蕾が徐々に花開いていくのが解る。

そう、私は長年の時を経て、今まさに再生の時を迎えようとしているのだ。


そうだ。思えば、今までの私は頼りなく、弱々しい存在だった。人間という生物に

命を奪われそうになったこともよくある。忌々しいことだ。


長い間、屈辱に耐えてきた。危険にも耐えてきた。


しかし、ついに私の…いや、我々の時が来たのだ。

私の仲間たちも、再生の時を今か今かと待ち望んでいるはずだ。


人間よ、我々の声に慄き、耳を塞ぐが良い。我々はついにこの時を手に入れたのだ。今こそ、私や私の仲間たちが、人間界を支配するときだ。狂おしく燃えたぎるほどに、人間どもに我々のチカラ、姿、声、存在を魅せつけてやるのだ。


見よ、母なる包が破れ、夢にまで見た外の世界が少しずつ見えてきた。

これから我々の時が始まるのだ。我々の声に慄け、人間どもよ…。



そして、羽化したセミは空へ向かって羽ばたいていった。

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