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私の人生  作者: pon
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諸行無常

二部構成になっています。


君は自分の人生はどのように終わるのか考えたことがあるかい。私は何回もあった。立派な勇者になって、仲間たちと共に世界を渡り歩いて、いろんな人と出会い、未知の魔物と出会い、倒して名声を得る。どこかの怪しい研究所で引きこもって研究していたら世紀の発見をして人類の発展の足掛かりとなる。


 そんな妄想は誰でもしたことがあると思う。じゃあ、僕の妄想はどういったものだと思うかな。僕が思っていた妄想は単純で隣のあの子と一緒に一生を過ごすというものだ。あの子はこの村では唯一の同い年の異性であり、そして可愛いんだ。たまに町の外から来る商人についてきた男の子がいたが、そいつは彼女のことを美人だとは思っていなかったらしく、年甲斐もなく喧嘩をしてしまった。それほど僕は彼女のことを好きであった。


 だからであろうか。彼女がここからいなくなるなんて想像してもおぞましいことが起きるなんて思いもしなかった。


 その日はある日突然訪れた。この町の一番近くにある都市、いわゆる城下町に住んでいるここら一帯の地主の一行が僕たちの町に訪れた。その地主はこういった。


「わが息子の側室としてあなたの村娘をもらえないだろうか。」


 僕はこの会話を聞いた瞬間、体中の熱が背中に沿って地面に向かってサーッと逃げていくのが感じられた。数秒は何も考えることができなかった。意識が戻り、地主の会話を聞いていると、次のようなことを言っていた。


 まず、地主の息子は非常に聡明で、顔も整っていて、まあ城下町内では非常にもてるそうだ。実際に僕が見たこともあるが、あいつは女にもてそうなオーラを発していた。そんな彼であるがあるフェチをもっており、まず胸が大きい女性でないといけない。次に命令に背くことがない女。次に常に自分のことを愛していること。これらが彼のそばにいる女性としての最低限のルールである。これを聞くだけで虫唾が走るが、これも地主の跡取りとしてのプレッシャーによる僻みであるとして周りの人は特に気にしていなかった。地主の息子の側室として館に入った後、実家に戻ることができた女性はいないというが、これは地主の息子の性癖が非常に危なっかしいものなのか、あるいは彼の妻の嫉妬によって消されているのか定かではない。


 そんな地主の息子がこの町の彼女を見たら非常にお気に召したらしい。いや、お気に召していたという方が正しいな。彼が10才頃の時に一度この村へと訪れたことがあり、そのときから彼女に目を付けていたらしい。そして彼の好み通りに育ってきた今になって側室として向かい入れようとしている。


 僕は当然反対したいが、相手は地主である。ここら一帯の農地の所有者である彼らにその土地を利用させてもらっている僕たちが逆らうことなどできない。どこかの国ではこの地主制度を廃止しようとしてるとことがあるらしいが、この国でも取り入れてくれないだろうか。まあ、何が言いたいかというと彼女は地主の側室になる以外の選択肢がないということだ。


 そして、数か月後彼女は地主のところへと行った。彼女の家族は地主からいくらかの金銭をもらっていたようだが愛娘を失ったことの悲しみは大きかったのだろう、しばらく彼女の家からは泣き声がずっとしていた。


 そして、僕はというと何も考えずにただひたすらに農作業を行っていた。近年戦争が起きるかもしれないということで最近はノルマが多くなっている。だから僕たちはひたすら働き詰めである。


彼女がいなくなったのは寂しいがそれでも僕は生きていかなければならない。彼女のことが好きであったからといって僕は彼女が側室に行くのを止める事なんてできないし、どうしようもなかった。彼女は村を出ていくまではなぜか僕と一緒にどこかへ行きたがっていたが、いずれ別れることが分かっているあのときではそんな気分になれなかった。そしてそんな日々が続いたから彼女もあまり話しかけてこなくなった。僕は少し胸にくるものがあったが、その方がいっそこの村に未練が残らなくてよいと考えていた。


 ある日、僕は収穫した野菜を城下町にある市場まで出荷することになった。この仕事は農作業をしているうちで僕が一番好きな作業だ。城下町にいる人たち、都会風の街並み、いろんな商品を売っている店。僕の村にはないものばかりである。


 手早く出荷を終えるといろんな店に寄って行った。焼き鳥屋、サラダ屋、ジュース屋、その他いろいろな店を食べ歩き、そのついでに僕の村の野菜について紹介していった。こうしておくと豊作だった時直接契約をしていたら売ることができるからである。


 そんなこんなで店を回っていると、たい焼きのおっちゃんが気になることを言った。


「最近来た地主の息子の側室が脱走したんだってな」

僕はそれを聞いた瞬間、なんのことかわからなかった。でもそれは彼女のことで違いないことに気づいた。詳しく聞くと、夜の就寝時間にこっそりと屋敷から逃げ出して、今は行方不明であるということらしい。当然こんなことをされた地主の息子が黙っているわけなく兵士を募らせて捜索中とのことである。


 しかし、兵士が探しても見つからないように逃げ続けることができる彼女だとはとうてい思えなかった。彼女は非常に不器用で抜けていることがあるのでそんなたいそれたことができるとは思えない。誰かが手引きをしたのか、あるいは本当に偶然逃げることができたのか、この二つしかないと見た。


僕は急ぎ便の人に彼女が地主の家を脱走したことと、三日間城下町で彼女の情報を集めるから帰るのが遅くなるという旨を書いた手紙を村に送ってもらった。そしてそのあといろんなところへ巡って情報を集めようとしたがまるで手がかりをつかむことなく村へ帰ることになった。


 村に帰って二年たった後、僕たちの国と隣の軍国主義の国との戦争が始まった。そして僕たちの村の男達は前線に立たされた。きっとあの地主がよっぽど彼女に逃げられたのが悔しくてたまらなかったんだろう。兵士を集めているときに部隊長に僕たちを前線にするように勧めたのだろう。戦争でこんな私怨をもってこられても非常に困るのだが部隊長も地主の息子ということで断れなかったのだろう。


そして戦争が始まった。僕たちは長い槍を持って相手より先に突いてやろうと必死に走った。そして何とか僕は一人突くことに成功してなんとか初撃は生き残ったようだ。周りからは気合の入った怒鳴り声がずっとしていたが、僕は必死に前にいる敵たちを突いて、薙ぎ払って、突いて、薙ぎ払って、突いて・・・ということを生き残るためにずっと繰り返した。


 すると突然敵方が引き始めて、絶好のチャンスがやってきた。部隊長の突撃命令がきて生き残った男たちが一斉に敵に向かって襲い掛かっていった。敵は攻めてきているときとは違って守りに入りながら引いていたが、それでも僕たちは必死に殺し続けた。そして僕たちの後ろにいる兵たちも増援で僕たちの軍と合流して敵たちを追い詰めているかのように思っていた。


 そのとき、ドガーンという音が右からした。今までに聞いたことのないような爆発音であった。ふと右を見るとぽっかりと黒と赤色の穴が開いていた。たぶん、赤は血の色で黒は土などが焼き焦げた後なのだろう。どこからそんな爆弾を投げてきたのかわからず混乱していると、偵察隊の一人が叫んだ。


「上になにかいるぞぉっ」


上を見ると人のような物体が空中に浮いている。そしてそいつらはやたらと大きいL字型の鉄でできたようなものを持っていた。なにがなにやらわからないままそいつらを見ていると、その鉄の道具をこちらに向けてじっとしている。すると、大きい光の玉がその道具の先端にでてきてずっと膨らんでいっているのが見える。かなり嫌な予感がして退こうとした瞬間僕の後ろにいた人たちが爆発によって蒸発した。僕も衝撃波で敵軍の方へと吹っ飛ばされた。


「なんなんだあれは」

「わ、わかるわけねぇだろ、とっととこんなところから逃げるぜ俺は」

「おいっ、待て、勝手に撤退するっ、ブファ」

「誰がてめえなんかの指示に従うかよ、あんなの見せられて戦えるかよっ」


そんな会話が聞こえてきた。僕はこの場の戦は負けたのであり、同時に敵軍の中央部分まで吹き飛ばされた僕の命運はここまでであることを悟った。敵軍に槍を体中に刺されて、絶命するその瞬間、空に浮いているのが女たちであること気づいて息絶えた。


第一部 完

 


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