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第八十七話:伊400の休息③

 案内人が去った後でも日下と橋本は暫く呆然というかあまりにもの想像以上の出来事だったので思考が追い付いていなかったのである。


「所で上陸の件ですがどうされますか? 時間の概念がないので半舷上陸も不可能ですし?」


 橋本の言葉に日下は少し考えると全乗員に上陸を許可しようと言う。


「これはある一種の試練だと思う事にする。もしかしたらこの乗員の中に、この世界を気に入って残るかもしれないからな?」


 日下の言葉に橋本はそれでよろしいのですか? もし、全員がこの世界に残るといえばどうなされるのですか? と尋ねると日下は笑いながら答える。


「まあ、頭を掻いて誤魔化すさ! もしそうなっても俺は只一人でもこの伊400に乗って元の世界に戻るがね? 全自動システムに移行してね? そして何処かの世界でもう一度、乗員を探すさ? まあ、そんなことにならないと確信しているがね」


 日下の何気ないが凄まじい決意を知った橋本も頷いてその時は私もお供しますよと言い館内放送で上陸許可を伝えましょうという。


予想通り皆が歓声を上げて艦から出ていきそれぞれ思い思いに散っていった。


「……さて、俺達も行ってみるかな? 橋本先任将校、ここからは個人でこの世界を過ごそう。伊400の修理もAIコンピューター制御による修復プログラムですることになるみたいだな? 吉田さんが必要な情報をコンピューターにインプットしていたからね?」


♦♦


 日下は、この要塞に来てどれぐらいの年月が経ったか分からないが体感的には半年位の気がするが正確な時は分からなかったがとても充実している日々を送っていた。


 伊400の修理も順調で新たなパワーアップを兼ねているのである。


 最も日下は伊400の修理及び新兵器の調達及び更新パワーアップ作業が終われば出航する気でいたのである。


 要塞のあらゆるところに散っている乗員とは遠隔無線装置でいつでも連絡をとれるのあるので何の心配もいらなかったのである。


 その最中、ある所で懐かしい顔見知りの人物と再会する。


「日下艦長ではありませんか? お久しぶりです、巡洋駆逐艦“雪風”艦長の富嶽です、お元気そうで何よりです」


 呼び止められた日下が振り向くと同じ世界出身である富嶽武夫が笑みを浮かべていたのである。


「久しぶりですね? 富嶽艦長こそ変わりないようで安心しました」


 日下と富嶽は固い握手をした後、立ち話をしていたがふと、富嶽からこの近くで昭和時代の趣がある居酒屋を見つけていますのでそこで一献どうですか? と誘われる。


「おお、昭和の居酒屋ですか。懐かしいですね? それではせっかくの誘いですので行きましょうか?」


 富嶽の案内でその店の前に来た時、日下はおおっと感嘆な声を上げる。

 その店は、昭和時代の大阪新世界にある居酒屋そのものであった。


「この世界に来た時、偶然に見つけたのですよ? 店の大将もこの世界に魅せられて留まる事を決意したみたいですよ?」


 店内もまさに昭和と言う独特の雰囲気がして二人が席に着いた時、大将がやってきておしぼりを出してくれる。


 串カツの特盛を前にしてビールで乾杯すると一気に飲み干して串カツをほうばる。


「いや~、久しぶりというか……良い店ですね?」


 二人は暫く食べ物の話をしていたがやはりお互いの世界について気になるのでその話に移行していった。


「富嶽艦長はマリアナ沖海戦の半年前の時代に行ったのですね? しかし、歴史の修正ですか。私が帯びている任務と性質が違いますね? まあ、それはおいといて現在の状況はどうなっているのですか?」


 日下の質問に富嶽は現在の状況を詳細に答える。


 マリアナ沖海戦は日本海軍の圧勝で終わりハルゼーとスプルアーンス機動部隊はほぼ空母・戦艦全てを失ってハワイに退却していったことをいう。


「まあ、その原因は私達がこの世界に来た時、米軍の潜水艦を片っ端から沈めていきましたからね? 小沢艦隊も何の心配もなく猛訓練に励むことが出来たのが大きな原因ですね? 後、装甲空母“大鳳”の甘い部分も指摘して万全な体制を確保できたのも良かったです」


 そしてマリアナ諸島全体の防衛も厚く構築出来て新たに絶対国防圏のマリアナ方面司令官に『栗林忠道』中将が大将に昇任してサイパン島に着任したことを説明する。


「おお! 栗林閣下が……そうですか、富嶽艦長のいる時代では栗林閣下がおられるのですか」


 そして自分たちはハワイ真珠湾を再び攻撃しようと作戦を立てている途中ですと伝えると日下も自分の事のように頷いて激励する。


「私達の目的は違うが根底は同じですね? 祖国日本を救うことです」


 日下の力強い言葉に富嶽も頷く。

 それから日下も自分たちがいる世界の状況について説明する。


 不思議な事にこの世界での店の閉店時間は存在していないのでどれだけいても大丈夫なのである。


 ようやく会話の内容が尽きて二人は店を出ていく。


「日下艦長、とても充実して楽しかったです。それでは私は艦に戻りますが日下艦長は兵器市場にいかれましたか? 潜水艦用の兵器等も沢山展示されていましたのでこれからの行動に必要になるかもです」


 富嶽の言葉に日下はお礼を言うと再び固い握手をして別れる。

 彼の姿が完全に視界から消えてしばらく立っていた時、ふと疑問を感じる。


「……そういえば彼はこの要塞に入港する抽選? に当選したのかな? まあ、どっちでもいいか。それよりも兵器市場が気になるな。少し寄ってみるか」


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