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第七十七話:決闘①

 現在、伊400はベーリング海を抜けた北極点南方2万5千メートルの水深1500メートルを航行していた。


「艦長、不気味ですね? こちらはわざわざパッシブソナーを毎分事に打っているのですが何もコンタクトがありません」


 橋本先任将校の言葉に日下艦長は頷く。

 通常では絶対やってはいけないパッシブソナーの乱射であったがあえて日下は餌を撒いて敵からの行動を待っていたのである。


「ソナー室、艦の上下右左右に何の反応も無いか? 敵の船体は恐らくステルス仕様だと思うが小さな変化や腑に落ちない気配等するか?」


 ソナー室からは相変わらず何の変化もないと報告が入るが数秒とも立たないうちに緊迫感のある報告が入る。


「艦長! 前方4500メートル深度900メートル地点で一瞬ですが自然音と違う音をキャッチしました!」


「バラストブロー! アップトリム10度、深度900メートルまで浮上だ!」


 日下の命令と共に伊400の船体から海水が吐き出されてゆっくりと浮上していく。


 深度900メートルに達した時、突如に凄まじい衝撃が司令塔に直撃するが次元を超えた防御力を誇る為、ノーダメージであった。


「!? ようやく姿を現したか!」


「艦の前方100メートル地点に突然、反応ありました。どうやらステルス機能を切ったようです。奴の潜水艦の背後を取っていま! 通信が入りました、モニターに出します」


 上から吊り下げられているモニターに相手の顔が映し出される。


 何処にでもいるドイツ海軍の軍服を着た人物だったが人工皮膚で構成された醜悪な表情をしていた。


「ようやく会うことが出来たかな? 私は嬉しいよ! 私はね、日本の事やナチスドイツの事など、どうでもよかったのだよ! 貴方をおびき寄せるためが目的だった! 罠にはまったな? 日下君?」


 ライプチヒ艦長の醜悪な笑みに日下も不敵な笑みを浮かべて彼も又、挑発するような言葉を発す。


「異世界潜水艦同士の決闘のチケットをくれるとは光栄だ。念のためにきいておきたい。貴方の最後は火葬か水葬か圧死かどちらがいいのかな? ライプチヒ君?」


 不敵な笑みで返した日下に対して先程以上の醜悪な表情をしたライプチヒは言い返す。


「その言葉をそっくりお返ししてやる」


 通信が切れてモニターから彼の顔が消えると日下は命令を出す。


「1番から8番の発射口を開放! 海水注入!」

 既に装填されていた魚雷発射管口が開放される。


「艦長、運がいいですね? 奴の背後を取っています。あの潜水艦には後方用の魚雷発射管がありませんので」


 橋本の言葉に日下は心の中でそうかな? 疑問に思っていた。


 腐っても最新鋭潜水艦の艦長である人物なのでわざとではと思ったがやはり背後を取っている絶好の位置故、様子を見ることにしたのである。


「距離1800メートル離れた時に発射だ!」


 Uボートが速力を上げて伊400と距離が離れていくが特に何も動きがない行動に橋本が不思議そうな表情で日下を見ると彼は命令する。


「全弾、発射!!」


 伊400の艦首魚雷発射口から8本の魚雷が放たれる。

「深度900メートル、自動追尾に移行しました! 爆発まで10秒!」


 日下は腕時計を見ながらカウントダウンを見守るが不思議な事に10秒過ぎても爆発しなかったのである。


「ソナー室! 魚雷は爆発してないのか?」

「は……はい! おかしなことに魚雷そのものが消滅と言うか……?」


 ソナー員の言葉に日下はじっと考える。


 それを見ていた橋本も摩訶不思議なものだと考えるが、ある一つの答えが思い浮かんできた。


「(まさか……いや、そのまさかもあるか……)」


 橋本が日下の方を見ると彼も何かの答えを思い浮かべた感じがするのを感じる。


「橋本君、どうやら奴の潜水艦にはブラックホールシールドが展開されているのではなかろうか?」


 かつて別世界での戦いの最中、同じ現象を経験した日下はそれと酷似していることを思い出したのである。


「ええ、あの時は相当、難儀をしましたが……それに対抗できるのは超音速で放たれる物質には全く効かなかったかと? あの時は後部15センチレールガン砲で勝利できましたが?」


「……どうやらそれが正しいのかもな? よし、速度を上げて奴を追い抜いて後部レールガンにて決着するか」


 日下は機関室に出力限界まで上昇させて前方の敵潜を追い越せと命令する。


「通常の戦いでは背後を取られるという事は死に直結しますが今回は皮肉にも逆パターンですね? まあ、艦の構造上……後部に設置したのですからね?」


 橋本の言葉に日下も苦笑いしたがそれでもこの伊400のシルエットは美しいし装備も全て満足している事を言う。


「艦長! 前方に回廊があり奴はそこに侵入しました! 上方は数百メートルの厚さがある氷が一面に展開していますので追い越すことは出来ません!」


 操縦士の『鮫島紘一』曹長が正面に展開している3D立体映像に映し出されているモニターを見ながら答える。


「奴め、初めからそこに入り込む予定だったのか。まあ、時間は沢山あったはずだからさもありなん。暫くは鬼ごっこだが何処かで切り札を用意している筈だ」


 日下はじっとモニターを見ながら前方のUボートを睨みつけていた。


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