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第七十六話:援護射撃

 伊400は現在、チュコト海深度1200メートルを15ノットで航行していた。

「奴は何処に隠れているのでしょうか?」


 司令塔の艦長席に座っている日下に橋本が尋ねると日下は天井にぶら下がっているモニターを見ながら答える。


「まあ、長年の勘だが奴は北極点の海中深くに潜んでいるのではないかと推測する」


「パッシブソナーにも反応はありませんし数時間前に打ったアクティブソナーにも反応がなかったので恐らくそうかもしれませんが……」


 橋本の言葉に日下は間違いなく奴はこの広大な北極海に潜んでいると確信するが向こうから何か行動を起こしてもらえば直ぐに対処できるのだがなと言う。


 その時、無線室から樋口季一郎大将から緊急無線が入っていると伝えてくる。


「ほう? 樋口閣下からか、何か事案が発生したのだろうか? 電文をモニターに表示してくれないか?」


 無線室からデータが転送されてモニターに表示されるのを読み始めた日下だったが次第に表情が険しくなる。


 全文を読み終わった日下は艦長席から立ち上がると唸るように口を開く。


「樋口閣下は知らないだろうが不規則に数々の並行世界を荒らしまわる……闇に蠢く蟲がこの時代に出現して動き出したか。ふむ……橋本先任将校、奴らが次に集合した時に纏めて始末しようと思う」


「どのように? 上空から“晴嵐”で焼くのですか?」


 橋本の言葉に日下は大笑いすると流石にそんなことは出来ないし巻き添えになる人々も発生するからそれはないという。


「東條閣下に教えたらいいのでは? 憲兵隊が嬉々として行くでしょう」


 橋本の新たな言葉に日下はふむ……呟いて暫く何か考えていたがパンと柏手を打つと橋本の案を採用しようという。


「ルーデル閣下の“晴嵐”に連絡してAI声紋認識探知等を駆使して蛆虫を日の当たるところに引きずり出してくれと送ってくれ」


 日下の命令が“晴嵐”に送られると直ぐに了解したと返答が来る。


「まあ、この件は終わりにしてだが……カリフォルニア州に張り付いている聯合艦隊全隻を内地に引き返さすとは……無茶苦茶だな」


「ええ、樋口閣下もこの件の対応を知りたくてわざわざ伊400に送ってきたと」


 日下はじっと何かを考えていたが何か思いついたようで橋本にそれを言うと少しだけ吃驚したがそれは面白いと思いますと肯定してくれる。


「援護射撃といくか! 巡航ミサイルでニューヨークの自由の女神を粉々に破壊してホワイトハウスに東海岸も安全ではないぞと脅してやれば全軍が太平洋に行くとは思わない」


 日下はそういうとCICに一番発射管に巡航ミサイル“黄泉”を装填するように命令して深度50メートルまで浮上命令を出す。


「メインタンクブロー!」


 海水を吐き出すと浮力が生じて伊400はゆっくりと浮上開始していく。


 数分後、深度50メートルに達した時、伊400は停止すると日下は魚雷発射管に注水を開始するように命令する。


「注水完了! 発射口開放完了です」


 日下は頷くと一言だけ言葉を発す。

「発射!」


 想像を絶する水圧で放たれた巡航ミサイルは海面に躍り出ると後部エンジンが点火して一気にマッハ15まで超加速して上昇していく。


「命中まで5分間だがモニターで見届けることは出来ないか」


「艦長、この行動を敵さんが探知していれば何か行動を起こすかと?」


 日下はそうだなと頷くと直ちに潜行して水深1300メートルまで降下だと命令する。

 伊400は再び潜行して深度1000メートルに達した時、CICから間もなく命中しますとの連絡が入る。


「まあ、どんな結果になったのかは奴を倒した後でじっくりと確認するか」


 伊400は再び水深1300メートルに達した時、水平に艦を戻して再び航行に入る。


♦♦


 カナダに配備されている対空レーダーが今まで見たこともないスピードで何かが接近していることを探知する。


「司令! 12時の方角から凄まじいスピードで向かってくる飛行物体を発見しました!」


 『カーク・サイモン』少尉がレーダースコープを見ながら大声で叫ぶと司令官『アルス・ポップマン』中将が何処に向かっているか計算しろと言うがサイモン少尉が計算する前に一瞬で基地上空を通過していき計算不能だった。


「あまりにもの高速の為、処理演算能力がパンクして不可能でした」


 巡航ミサイル“黄泉”はそのまま自由の女神の中央部分に激突して爆発する。


 ニューヨークでは突如、爆発音とともに自由の女神が木っ端微塵に破壊されたのを見ると何事だ!? と大騒ぎになる。


 それと大量の紙吹雪がマンハッタン島に落ちていく。

 人々がそれを拾って中身を見ると英語で文章が書かれていた。


「我々は貴国の何処でも狙えるので用心せよ! 自由の女神像のようになりたくなければ! 伊400より」


 このビラは直ぐにワシントンDCに送られて大統領以下全員が見るとルーズベルトは激怒して太平洋及び南方に向かわせる予定の艦隊を東海岸防衛のために艦をわけるはめになったのである。


「それとだ! あの小賢しい潜水艦をどんな事をしてでも撃沈するのだ! 例え、原爆を使ってでもだ!!」


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