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第七十二話:黒い陰謀

 帝都東京のある場所の地下室にて数人の人物達が薄暗い部屋で煙草を吸っていた。


 時間は丑三つ時で帝都は昼間と全然違う雰囲気である。


「どうやら、揃ったな? では、定例会議を始めるがそれぞれの現状況を報告してくれ」


 顔は良く見えないが司会者担当らしき人物の軍服には海軍大将を示す肩章が刺繍されている。


「では、私から報告させて頂こう」


 海軍中将の肩章を付けた人物が立ちあがり自分が受け持っている担当の事を報告すると共に問題点を上げる。


「米国からの報告ですが相当、お怒りのようです。カリフォルニア州を制圧されて反撃しようにも反撃できないとの事です」


「少将、貴官の任務は我が海軍の暗号担当だが……うまく米国に渡すことができないのか? 聞いたところによると米国方面の我が艦隊は自前の暗号を使用していると聞いているのだが?」


 大将の肩章を付けた人物が不快な声で言うと少将は困惑した表情になり話す。


「残念ですが現在、陸軍の『樋口季一郎』大将が全ての権限を握っていて海軍をも指示できる歪な指揮系統だそうです」


「山本は……反対しなかったのか? 海軍の作戦を失敗させるために“長門”に送ったのだが?」


「……残念ながら彼に何の変化があったのか知らないがどうやら戦死した『石原莞爾』に抱き込められたと分析している」


「ちっ、あの変人か! しかし奴が現場に復帰した時から構想が狂ってきている」


 今まで聞いていた大佐の肩章を付けた人物が声を発して青天霹靂な事があったが少し変更してみてはいかがですかと言う。


「ヒトラーとルーズベルトが手を結んだ事は知ったが流石にそれは驚いたがそれも長くは続かないだろう。この戦争で日本を敗北させるのは必須だがそれはドイツではなく米国の手によってだ!」


「その通りだ、私達は米国へ駐在武官や研修で行ったが日本の何十倍もの国力を誇っているのを間近で見た。どうやっても最後は国力によって敗北するのは必定! 故に日本に米国と同じ民主国家にするためには日本軍そのものを解体させねばならないし最もそれに近づくには海軍を壊滅させねばならない」


「海軍を壊滅させることが出来ればあの東條英機も失脚することは間違いない。奴が権力を握っていれば色々とややこしいからな?」


「まあ今出来ることはカリフォルニア州を米軍によって奪回してもらわなければならない。その為には連合艦隊の殆どを内地に戻そうと思う」


「全軍か?」


「いや、南雲が率いる艦隊は無理だろうな? 樋口大将直属になっているから」


「矛盾するがいかに海軍の犠牲少なくしてカリフォルニア州を米軍に奪回させねばならない。南雲中将には気の毒だが死んでもらおう! 二階級昇進と引き換えだがな? 海軍の援護なしでは陸軍さんも干しあがるだろう」


「布哇に駐留している艦隊も引き揚げさせる。海軍軍令部からの厳命とすれば山本も断れないだろうしそのあと、査問会にかけて問いただす」


「情報によると既に米国は日本海軍の数十倍に及ぶ艦船を建造して順次、出撃すると言うから流石の南雲も大和があっても撃破されるだろう」


「まあ、天皇制は残してもらった方がいいしそれについては米国も理解しているという。万が一、天皇に危害が及べば間違いなく陸軍が大暴走するのは目に見えているからな?」


「よし、本日はこれにて終わるとしよう。後、海軍人事だが愚直に徹するような提督は後方勤務に下げて猪突猛進や臆病で決断が中々できない者を司令官につけよう」


 こうして日本を故意に敗北させようと暗躍している人物たちは解散して明日から再び己の職場に戻るのだがこの陰謀者達の存在を東條は勿論、憲兵隊・特高警察を支配下に置いている内務省も未だ知らない。


♦♦


 その頃、伊400は北上を開始して現在、アラスカ海コディアック島南方30海里の海上を航行していた。


 月が煌々と海面を照らしていて幻想的な雰囲気の中、艦橋甲板にて『日下敏夫』艦長は熱々の甘酒が入った紙コップを手にして星空を眺めていた。


 そんな日下の下に橋本先任将校がやってきて日下に言う。


「星空を見ていたのですか? 綺麗な満月ですね」


 橋本が空を見上げると満天の星空が輝いていて満月が海上を照らしている。

 その満月を見ながら日下が口を開く。


「星空はいい、彼らは幾万年・幾千年ものその場にとどまり私達を照らしてくれる。まあ、星々にとっては私達の戦いもちっぽけな存在だろうな? 所で何かあったか? ただ星空を見に来たわけではないだろう?」


 日下の問いに橋本が頷くと極東方面で活動しているルーデル機と連絡が入り満州方面と日本本土の事情が手に入ったと聞く。


「満州方面から聞くがどんな状況なのだ?」


「はい、国境は未だ突破されていなく善戦している感じですがソ連の方があまりやる気がないようです」


「……近いうちにソ連と停戦条約が結ばれる可能性があるな? そして日本本土の件は?」


 橋本が苦い表情になり内容を日下に話すと彼も眉を潜める。


「やはり、ネズミがいたか。しかも超弩級が! して、誰かも分かっているのか? まあ、予想しているが」


「いえ、録音はしているとの事で後、数分後にこちらにデータが転送されてきますので直ぐに解析命令します」


「……私がいた世界での大東亜戦争は初めからおかしかった。わざと負け戦をしていて絶好チャンスがあった場面でも中途半端な事をして失敗に終わり原爆を投下されてポツダム宣言を受け入れて終戦……」


「米国と内通していた者達が思ったより多かった? そして、高級将校の一部が真っ黒か灰色か?」


「あの広島に落とされた原爆も本当は高射砲によってB―29を撃ち落とすことが出来た筈だが上からの命令で撃ち落とすなという事で見逃した事例があったが戦後、闇に葬られてしまい陰謀論でしかない存在になった。まあ、この世界では奴らを暗闇から日の下に炙り出してやる」


 日下は星空を改めて見上げると心の中で喋る。

「(先ずはライプチヒを始末する!)」


もしこれが本当なら到底、許されません!

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