表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

23/90

第二十三話:新たな潮流

投稿します

 

ここは数ある平行世界の一つである世界である。


 令和××年、ハワイ近海で実施されるリムパック演習に参加する為に海上自衛隊の艦艇二隻がミッドウェイ南方五海里の地点を航行していた。


 ヘリコプター搭載護衛艦DDH-143“しらね”とヘリコプター搭載護衛艦DDH-182“いせ”の二隻であった。


 今回のリムパック演習は刻々と現実になりつつある中国による台湾侵攻と尖閣諸島侵攻を阻止する為に米国・英国と合同訓練であった。


「ふう、やっとミッドウェイか! 後どれぐらいで真珠湾に到着するのだ?」


 “しらね”艦橋で『山崎塔屋』二等海佐(四十五歳)が艦長席で航海長の『西山俊樹』三等海佐に尋ねると彼はカレンダーを見ながら後、十日ぐらいですねというと頷く。


 彼は一般枠から幹部候補生の試験を受けて中の中で合格したが持ち前の性格と人を引き付ける何かの魅力のお陰で出世を兼ねて護衛艦の艦長に就任した。


「はあ……司令部は俺がアメ公を嫌いなのは分かっている筈なのに無理やり送りやがった! しかも大のアメリカ贔屓でアジア軽視の『久留間重蔵』一等海佐(五十五歳)と一緒とは……先が思いやられるぜ」


 “いせ”艦長である久留間の事を言っていた。


 彼は異常なほど、アメリカ贔屓で原子爆弾投下も米国の正義の下で行ったと信じていて何百万の本土決戦で死ぬ国民や軍人を救ったと言っている。


 全て悪いのが陸軍で特に東條英機や石原莞爾と言った者達の暴走で戦争を引き起こしたと。


 なので靖国神社に祭られているいわゆるA級戦犯といわれている人物を嫌悪していて分祀するべしとの意見の持ち主である。


 防衛大学を上位五番以内で卒業し親が防衛省の大臣政務官であると共にアメリカ海軍や陸軍の事をべた誉めするので在日米軍司令部においても絶大な信頼を勝ち取っていたのである。


 勿論、そんな感じなので“いせ”の乗員の殆どから陰で馬鹿にされているのである。


 ブツブツと文句を言う山崎の下に航海科の『千堂道夫』二等海尉が天気図を持ってきて困惑した様子で報告してくる。


「艦長、天気図に乗っていない積乱雲が発生したようでこのままの針路だと三時間後に直撃しますが?」


 山崎は直ちに“いせ”に連絡するとTVモニターに久留間の姿が現れる。


 お互い敬礼すると久留間から積乱雲を迂回するので進路変更することを決めてハワイ司令部へ連絡したとのことをいう。


「了解しました、本艦は“いせ”の後を追尾します!」

「うむ、了解した」


 TV通信が終わると山崎は全艦内区画に、万が一に荒天に巻き込まれた時の対応体制に直ぐに移行できるように待機命令を出す。


 二隻の護衛艦は大きく迂回してやり過ごそうとしていたが二時間後に突然、二隻の前に超巨大な漆黒の金床雲かなとこくもが出現する。


「…………何だ? あれは……」


 山崎は持っていた水が入った紙コップを知らない間に落としたが誰もそれに気づいていなくただただ茫然としていたのである。


 それは久留間も同じで“いせ”艦橋にいたものも唖然としているだけであった。

 超巨大な金床雲は二隻を軽々と呑み込んだかと思うと一瞬で消滅する。

 だが、その海面には二隻の護衛艦の姿が一切、無かったのである。


♦♦


 昭和十七年三月に入るがハワイ近海は平穏無事でたまに米国潜水艦を発見するが伊400の協力の下、駆逐艦による爆雷攻撃で既に十隻を沈めていたのである。


「いや~、随分と楽な潜水艦狩りだな!」


 駆逐艦“雪風”艦橋で『寺内正道』中佐が感嘆の声を上げる。


 本来の史実ではこの時期は掃海艇の艇長であったが日下少将から山本長官に頼み込んで駆逐艦等の艦長人事を変更するようにお願いしたのであった。


 先日、行われた伊400と中佐以上の陸海軍将兵が一堂に会しての顔合わせを実施して実に二日間もの期間、邂逅が行われて超大成功で終わったのである。


 初めは眉唾と思っていた人物も見たこともない伊400の艦内設備や今までの戦闘を録画した映像を見て最終的には納得する。


 特に日本本土決戦時の映像は皆が息を呑んでいて伊400の攻撃で数千機の爆撃機が一瞬で羽虫の如く落ちていく様子や一発の魚雷でこの時代では未だ竣工していないエセックス級大型空母が真っ二つに折れて爆沈していく映像は圧巻で皆が歓声を上げていたのである。


 その後、日下少将は演説を行い石原莞爾による日本改造について熱弁を振るいそれに向かって一致団結することを皆で誓ったのである。


 そして現在、空母“瑞鶴”・戦艦“山城”・重巡“最上”“熊野”・軽巡“鹿島”“阿武隈”・駆逐艦“雪風”“陽炎”“暁”“雷”“響”でミッドウェイ方面を警戒航行していたのである。


 伊400は現在、真珠湾に停泊していて日下と石原による定時会話をしていた。


「日下少将、貴官のお陰でハワイ防衛が随分と楽になっていて大変、感謝していますよ、本当に有難うございます」


 石原の礼に日下はとんでもないと言ってこちらこそ色々と便宜を図っていただいて助かっていますと礼を言う。


 そして会話を終えて日下が石原の執務室から出ようとした時、副官が飛び込んできて現在、ミッドウェイ方面を警戒している南雲中将から正体不明の軍艦二隻を発見したとの事を報告してくる。


 偵察機が捉えた写真を見た日下は素っ頓狂な声を上げる。

「……護衛艦“しらね”型と“いせ”型護衛艦? 何故、こんな時代に……?」


護衛艦を出しましたが米帝大嫌いな艦長と米帝大好きな艦長が登場です、しかも石原莞爾や東條英機の事が大嫌いな御仁ですので嵐が吹くかと?


次話もなるべく早く更新します

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ