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第十二話:潜航、そして雷撃

投稿します

 その頃、伊400はパナマ運河を破壊する為に二十ノットで洋上航行をしていた。


 山本長官にその旨を知らせると山本からよろしくお願いするよと快く承諾を得ることが出来たのである。


 伊400は現在、ステルス・光学迷彩シールドを展開しているので誰からも発見されず隠密航行である。


 艦橋甲板上では日下艦長は椅子を置いて読書をしていた。

 他の乗員達も甲板上で思いのまま自由にしている。


「艦長、航海科から連絡がありましたがこの地点から北東四百海里地点にて米空母を補足したとの連絡がありましたが?」


 発令所から橋本先任将校が出てきて日下に報告すると日下は頷くと本を畳んで立ち上がると背筋を伸ばす。


「う~ん! 休憩は終わりだな、第二級戦闘配置準備を全乗員に覚知してくれ」


 折り畳み椅子を持ちながら発令所に続くハッチを降りていく。

 発令所に降り立つと同時に艦内外に第二級戦闘配置のサイレンが鳴り響く。


 甲板上でボーッと呆けていた乗員達が一瞬で戦う男の表情になり飛ぶように艦内に戻っていく。


「艦長、無人偵察機“晴嵐”から画像が送られてきました」


 日下はスクリーンに映すために、映像信号を切り替える。

 すると海上には空母一隻、重巡二隻、駆逐艦七隻が航行していた。


「ふむ……空母”レキシントン”に重巡二隻の内、あれは“インディアナポリス”だな」


 映像を見ながら日下が呟くと橋本が感慨深く艦長に話す。


 その内容は、殆どの平行世界に行くとあの巡洋艦を必ず撃沈する事になりますね? と苦笑しながら言うと日下も苦笑いしながら頷く。


「……それで何処に行くのでしょうか? そのまま行けば“サンティエゴ”海軍基地ですね? まあ、戦略のセオリーで言えば大西洋艦隊の“ホーネット”“ヨークタウン”“ワスプ”“レンジャー”と合流するのでしょうね」


 橋本の言葉に日下も同意見だと言うと“レキシントン”を見逃すか撃沈するかどうしようかと意見を聞くと橋本は放っておくのも手ではないでしょうか? と言う。


「ふむ、しかし“レキシントン”を撃沈すれば太平洋には空母がいなくなるからな。恐らく来年には大西洋からパナマ運河を超えて太平洋に入ると思うからパナマ運河を破壊して“レキシントン”を撃沈すれば暫くは手も足も出ない」


 日下の説明に橋本はなら、やることは一つですね? と笑みを見せると日下も頷く。


「よし、“レキシントン”と重巡“インディアナポリス”を沈めるぞ! 51式誘導魚雷を一番管と二番管に装填だ! 潜航開始二十秒前、深度五十メートルまで潜水後、発射するぞ? 徳田、いいな?」


 CIC区画で全戦闘用武器管制システムを操作している徳田大尉が了解です! と元気のいい声で返答する。


「ベント弁制御開始」

「メイン・バラスト・タンクに海水注入!」

「潜航開始!」


 伊400はゆっくりと潜航していき深度五十メートルで潜航を止める。


 魚雷管制室では“レキシントン”“インディアナポリス”の座標を“晴嵐”から通して入力していきそれを魚雷にインプットする。


「艦長、こちら魚雷管制室! 情報を入力完了、魚雷装填よし!」

「こちら日下、了解した! 魚雷発射口開放」


 艦首魚雷発射口がゆっくりと開いて海水が入り込んでくる。

 CICの徳田は、魚雷発射OKのシンボルがタッチパネルに点灯されるのを確認すると無線マイクで発射許可を申請する。


「こちら日下、発射タイミングは任せる」

「了解です! 発射カウントダウン十秒前」


 そして十秒後、徳田がタッチパネルの発射ボタンシンボルを二つ続けてタップすると艦首魚雷発射口から勢いよく二発の誘導魚雷が放たれる。


「発射完了だな、三十分後に命中予定か」

 “レキシントン”まで距離四百キロを時速七百キロの魚雷が超高速で激走していく。


♦♦


 伊400が魚雷発射した二十八分後、空母“レキシントン”では『マーク・ミッチャー』中将が甲板上で険しい表情をしながら飛行隊長と会話していた。


「ハルゼーが戦死したと聞いたが未だ信じられないよ、キンメル大将も重傷を負って二度と戦場に戻れない身体になってしまったという……おいたわしい」


「後任にニミッツ大将が任命されたそうですがハワイは陥落して“サンティエゴ”海軍基地に臨時司令部を置いたとか?」


「日本海軍は六隻の最新鋭空母を展開していると言う。こちらは太平洋に当艦一隻だけしかいない。来年初頭に大西洋から機動部隊がパナマ運河を通過して合流する事になるがそれでも“ホーネット”“ワスプ”“ヨークタウン”“レンジャー”そして“レキシントン”の五隻……しかも艦載機の練度も現時点では低すぎる」


「ええ、反撃するまでは無謀な行動を慎んで臆病すぎるぐらい防御に徹するのが最良だと思いますね? 現段階では」


 ミッチャー中将が頷くと突如、直下型大地震が起きたかのような振動が“レキシントン”全体を揺さぶる。


 誘導魚雷が船底で爆発したのである。


 数万トンの船体が持ち上げられると同時に竜骨がバキバキという音と共に引き裂かれていき“レキシントン”はハの字に真二つに折れて一瞬で轟沈していく。


 爆発の衝撃はガソリンタンクや魚雷爆弾を保管している倉庫を直撃して一瞬で誘爆してしまったのである。


 爆発した衝撃でミッチャー中将は思いきり吹き飛ばされて海に落ちる。


 落下した衝撃で彼は左腕を骨折してしまったがその痛みを感じるまで信じられない情景を見る。


 威風堂々と航行していた巨大空母“レキシントン”が中央部から折れて黒煙を吐きながら海中に没していく様子を……。


 “レキシントン”に命中した数秒後に重巡洋艦“インディアナポリス”にも船底で魚雷が爆発してその衝撃で一万トン足らずの船体は木っ端微塵になって海の藻屑となったのである。


「……太平洋には魔物がいるのか?」


 そしてミッチャー中将は、体全体に激痛が襲って気を失ってしまうが救助に駆けつけて来た駆逐艦に無事に収容される。


「リ、リヴァイアサンだ! 海の悪魔だ! いや、モビーディックだ!」


 何の前触れもなく一瞬で空母と重巡が轟沈したので艦隊の将兵は恐怖に支配されてパニック状態になるがそれを鎮めるべき司令官も重傷を負ってしまう。


 それでも何とか海に投げ出された乗員達を救出してサンティアゴ海軍基地に急行することになる。


祝日です、体を休めて英気を養います。



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