終焉を呼ぶ魔女
その魔女は世界の終わりを呼ぶ存在だった。
だから「魔女が生まれたら殺す」。
それがその世界の常識だった。
しかし、その行為をためらった者達がいた。
その夫婦は、やっと授かったその子供を殺す事ができなかった。
やがて、世界に害をなす存在になると分かっていても、愛を注がずにはいられなかった。
だから、魔女となる存在はすくすくと育ち、愛らしい女性になった。
そのまま、普通の人間として生きていけると思うほど、その女性をとりまく日々は平穏だった。
しかし、彼女は魔女。
ある日、その体に秘めた魔の力を暴走させてしまう。
そして、彼女は大切な人も、住んでいた故郷も失ってしまった。
危険な魔女。
恐ろしい魔女。
やっかいな魔女。
驚異的な魔女。
憎むべき魔女。
忌むべき魔女。
死すべき魔女。
世界中の人が、その魔女を討伐しようと、魔女の元へ押し寄せた。
魔女は死にたくないから、それらをすべて叩きのめす。
涙をこぼしながら、叩きのめす。
仲良くしたかったと、叩きのめす。
ただ生きたかったのにと、叩きのめす。
そうして、最後の一人を叩きのめしたとき、全ての人類が死滅した。
魔女の日々に、静寂が訪れた。
危機はもうない。
しかし、平穏も、もう訪れない。