⑤-18-94
⑤-18-94
「君達はホントによくやってくれた!これは契約満了の報酬だ、受け取ってくれ!」
「・・・確かに」
「それとこれはお詫びの印だ、受け取ってくれ」
「お詫び?」
「あぁ、護衛の件だ」
「あぁ。いいですよ。必要ありません」
「え?」
「これから街の復興に必要でしょう。そちらに回してください」
「な、い、いいのか?」
「えぇ。その代わりと言っちゃ何ですが」
「なんだ、言ってくれ」
「今度立ち寄った時にでもまた便宜を図ってくれれば」
「分かった。それくらいならお安いご用だ。しかしホントにいいのか?」
「えぇ。ショーも見れましたしね」
「ショーか。オヴィエドは王都に移送されたらしい。裁判はまだ先だがな」
「皆さんはやはり旅に出るのですか?」
「この街の復興を見れないのは残念ですが」
「そうですか・・・残念です」
「えぇ。僕もあな「ガスッ」たぁぁ・・・」
「私達も残念ですわ。復興した頃にまた立ち寄らせて頂きます」
「あ、あぁ。是非そうしてくれ。本来の街を見て欲しいからな!」
「復興を祈ってますよ」
「ありがとう。それで最後に1つ頼みが有るんだが」
「頼み?」
「あぁ。いや依頼と言った方が良いか」
「依頼?」
「あぁ。この手紙を届けて欲しいんだ」
「手紙の配達」
「そうだ。ここから北西に行った2つ目の街に王国軍盗賊討伐隊の本部が有るんだ。そこに手紙を届けて欲しいのだが・・・どうだろうか」
「盗賊討伐隊・・・嫌な予感がするんですが」
「はっはっは、手紙を届けるだけだよ。報酬は1万エナだ、あらかじめ払っておこう。信用できる君等なら確実に届けてくれるだろうからな」
「手紙の配達に1万エナ・・・更に疑いが増すんですけど」
「普通の手紙ではなく、王国軍に届けるんだ。それぐらい当然だ」
(どう思う?)
(嫌な予感はしますが、かなーり稼がせてもらいましたしねー)
(そうだな。サーヤ君は?)
(私はお2人がよければ)
(君の意見を聞いてる)
(はっ、はい。私も沢山お金を稼ぎましたし多少はいいのかなと・・・)
(分かった)
「分かりました、お受けしましょう」
「あぁ!そうか、良かった。ではこの手紙と・・・報酬の全額前払いだ」
「前払い?」
「王国軍に払わせるのもな」
「そうですか。この手紙を渡すのは軍関係者であれば誰でもいいのですか?」
「出来るなら門衛などの番をしている者に託してくれ。その際にワシからだと言ってくれ。依頼票の達成サインも宛て先の人物が書いてくれる」
「サインはまぁ・・・必要無いっちゃ無いんですけどね」
「そう言わんでくれ。この先王国内を通るんなら盗賊討伐隊のエリアを通る事になる。その際の便宜を図れるように書いた物だ。是非サインを貰ってくれ」
「・・・分かりました。大盗賊団はどうなんです?」
「あぁ。一応かなりの戦力を削減したらしい。だが肝心の幹部と頭領が捕まらずじまいだ。収束は当分先だろう」
「そうですか。これから行く街は大丈夫なんですか?」
「勿論だ。本部を置いて街も安心して生活出来ている。何の問題も無い。物資も豊富にあるだろう」
「分かりました。ではこれで、出発します」
「うむ、世話になった。また街に寄ったら顔を見せてくれ」
「エチルさん、マインさん、ターニャさん。ありがとうございました。また街に来て下さいね」
「はい。お2人も、復興をよろしくお願いします。街にはお2人の力が必要です」
「ありがとう」
「では」
僕等はまた西の門から出る。
非常事態宣言は解除されたとはいえ、ゾンビはいるかもしれないので門は閉めたままだ。
門衛に開けてもらい外に出る。
辺りは静かだった。
この街に来るまでも街道沿いとはいえ静かだったがそれなりに音が聞こえていた。
あれは森の中の生き物たちの生活音だったのだろう。
今はホントに静かだ。
動物がいないからだろう。
ゴーストはいなくなったはずだ。
ゾンビも街の人達で駆除、いや成仏されるだろう。
「約2か月くらい居たのかな?」
「そのくらいですね」
暦は9月に入っていた。
晩夏とは言え、残暑が厳しい。
「夏の思い出は幽霊退治かぁ」
「ゴースト自体は無難に狩れてましたね」
「今までもそうだったけど、僕達の特性を活かした狩りの相手を探してるからね」
「結構稼げましたね」
「今の資産状況はどうなの?」
「330万エナです」
「凄いです!」
「いやー、稼いだねー」
「頑張りましたもん」
「夏は北の涼しい所で、冬は南の温かい所で過ごせばいいんじゃないか?」
「リッチー!」
「とは言え政治的に安心かなと思ってた南でもクソ野郎はクソ野郎だな」
「でしたね。まぁどこ行ってもクソ野郎はクソ野郎なんですよ」
「そうですね。どこにも居るんですね」
「サーヤ君は《槌術》は習得出来たんだっけ?」
「・・・いえ、すいません」
「だから謝るなって」
「もうし・・・はい」
「僕もスキルはあんまり上がってないな」
「何上がったんです?」
「《魔力感知》Lv6に、《雷魔法》Lv3になったよ」
「おお!感知範囲は?」
「予想通り60m超えてると思う」
「すっげー!」
「はっはっは。森の中では負けんな」
「でもやっぱり早いと思いますよ」
「Lv上げ?」
「えぇ」
「私もそう思います」
「装備が良いのもあるだろうね」
「装備が?」
「僕達が冒険者になるのに4か月働いてお金貯めて買った装備が初心者用の装備だったじゃない」
「そうでしたね」
「その装備で魔幼虫とか魔犬とかを倒していって、依頼をこなしていって次の装備を買うんだろう」
「そうですね」
「それで次にゴブリンとか猪とかを狩っていってお金貯めて装備を買いなおす、それの繰り返しなんだろうね、普通は」
「でしょうねー」
「僕等はマイタケでいきなり最高の装備を整えられたからね」
「なるほど。装備が良いから高収入の魔物を倒し続けられたと」
「あぁ。勿論《殺菌》のようにスキルの恩恵もあるが大熊みたいなこともある。あれシ-サーペントの装備じゃなかったら右腕失ってたと思うよ」
「確かに。そうなったら冒険どころじゃなかったですね」
「あぁ。防具なら死ににくく。武器なら切れ味の差で殺せるか否かの差が出るだろうし、ひいてはそれが死ににくさにも繋がる」
「ずっと戦い続けれたという事ですね」
「そうだね。怪我したのは大熊の時だけだしね。強い奴と戦って勝って強くなるんだっていうのは五体満足で生き残る事前提で言えることだよ」
「相手が強ければ強いほど大怪我を負う危険が高まり、冒険者引退の可能性が高まるってことか」
「《弓術》のような武器スキルもそうだよね」
「武器スキル?」
「武器スキルと高価な武器との相乗効果があると思う」
「よりランクの高い、報酬と経験値の高い魔物を倒せると」
「うん。その方がスキルLvも上がりやすいだろう。魔幼虫や魔犬ばかりだとこの装備買うのに長くかかるし」
「高価な武器がランクの高い魔物を倒し易くしスキルLvを上げ易くすると」
「スキルLvが上がれば高価な武器を活かせる、正のスパイラルだね」
「そう言えば私も《魔力感知》Lv3になりましたよ。あと《弓術》もLv4に」
「《弓術》早いな」
「私も《弓術》Lv2になりました」
「そうかそうか。順調だな。これで《槌術》も習得出来れば魔族に金棒」
「うわー・・・」
「次に向かうのはどこだっけ?」
「タルバさんに依頼された手紙の配達先、オストフォルド領の領都、ロムスコです」
「領都か、装備や魔術師ギルドで魔物図鑑を買っても良いな」
「そうですね。今なら買えますね」
「サーヤ君は初めての大きな街かな」
「大きな街は幾つか行ったことはありましたが街の中を見て回るのは初めてです」
「そうかそうか。欲しい物が有ったらおじさんに言いなさい。お金を渡そう」
「はい!」
こうして真夏の夜の幽霊騒動は幕を閉じたのだった。
加藤一彦
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頑健Lv2、病気耐性Lv2、殺菌Lv4、隠蔽Lv5、魔力感知Lv6
魔力検知Lv6、魔力操作Lv5、カウンターLv3、罠Lv4
雷魔法Lv3
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キクチ・ミキ
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頑健Lv2、病気耐性Lv2、掃除好きLv3、解体Lv3、弓術Lv4
魔力感知Lv3
風魔法Lv4
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サーヤ
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頑健Lv7、病気耐性Lv7、吸精Lv7、魔力検知Lv4、魔力操作Lv3
解体Lv1、弓術Lv2
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第5章終了