⑤-16-92
⑤-16-92
休んだ翌日、宿舎を出て補給をした。
「テントは置いていくんですか?」
「あぁ、一応《隠蔽》を掛けておくが大丈夫だろう」
「いやそっちじゃなく、持って行く物少ないと何処かの村に滞在してるって疑われません?」
「1つは持って行くから、1つのテントで寝起きしてると思うだろうから大丈夫だよ」
「そう・・・ですかね」
「その分食料と水が入る。しかも村だから井戸が使える。食料を多めに持って行こう」
「3つのバッグにパンパンに詰めれば2週間分くらい入りますよ」
「よし。それで行こう」
「えぇ!?2週間も?大丈夫ですか?」
「大丈夫ですよシレナさん。任せてください」
「そ、そうですわね。腕は確かですし」
「貴女の笑顔を取り戻しに行ってきますよ」キリッ
「そ、そうですか。よろしくお願いします」
「お任せく「ドスッ」うぅぅ・・・」
「じゃぁ、行ってきますねー。サーヤ、お願い」
「は、はい」
ずるずるずる
シレナさんは2週間という長さにびっくりしていたが荷物には大して疑問を持った様子はなかった。
同じく門衛も。
村に着いたその日は休んで、明くる日の夜から掃討を再開した。
そして2週間の掃討でエリアの大体は掃討が終わったように思う。
最初の1週間が過ぎた頃には慣れて来たようで休日を入れなくても連日実働出来たのが大きい。
「あとは後日にまた来て森でキャンプしながらアンデッドを発見、ってことで良いんじゃないかな」
「そうですね。大体は狩りましたからね」
2週間の長期出張を終えフォセンの街へ帰った。
「えぇ!?さ、30匹!?」
応接室でシレナさんが叫ぶ。
「北西の森はほぼ討伐し終えました。あとは何日かキャンプして死に残りがいないかの確認くらいですね」
「ほ、ホントに3人で狩られるとは・・・」
「貴女の為に頑張りました」
「ゴーストは狩るのも難しいんですが見つけるのが1番難しいんです。それをこんな短期間で・・・」
「貴女の「ドスッ」たぁぁぁ・・・」
「あの。良ければ今日のと今までの報酬を合わせて両替していただけませんか?」
「は、はい。分かりました。ただ小判以上は王都でしか扱っていませんので金貨でよろしいですか?」
「そうなんですね。じゃぁ、それで結構です」
「分かりました。少々お待ちください」
シレナさんが部屋を出て行く。
「そう言えばギルド長の姿が見えんな」
「そうですね」
「人と会ってるようだが何かあったんだろうか」
「さぁ」
ノックが有りドアが開いてシレナさんが帰って来た。
「お待たせしました。こちら両替を終えた物でございます」
「ありがとうございます」
「それとお三方にはギルドランクアップの手続きをして頂きたく」
「分かりました」
「後ほどカウンターまでお立ち寄りください」
「シレナさん、今日ギルド長は?」
「あぁ。実は今日、王国の盗賊討伐軍の方々がお見えでして」
「!?進展が有ったんですか?」
「どうやらそのようで。別室で会談中です」
「しかし軍の方が来られたら統治官に悟られませんか?」
「連絡員の方がお忍びで来られてます」
「なるほど。良い内容であればいいんですが」
「えぇ」
「ジャン君は元気ですか」
「え、えぇ」
「あとで饅頭でも差し入れで持って行ってやるかな」
「もう!やめなさいよー」
コンコン
「はい?」
ガチャ
「やぁ。来てると聞いてな」
「お久しぶりです、ギルド長」
「あぁ、元気そうで何よりだ。調子はどうだね?」
「ギルド長!この2週間で30匹もの討伐です!」
「なっ、何!?30匹!?」
「はい!」
「2週間でか!?」
「はい!」
「なんともはや・・・言葉にならんな」
「ほぼ討伐し終わったと思います。あとは森でキャンプして残敵を探すのみですね。それと北西の村は開放してあります。いつでも戻れますよ」
「村もか!?」
「はい」
「うーむ」
「村民を帰還させます?」
「いや。先ず我々が確認してからだ。先遣隊を遣わして村を確保する」
「僕等は北西の森でキャンプしてますので何かあれば森の方に」
「うむ。分かった、よろしく頼む」
「ところで連絡員の方が来ていると伺いましたが」
「そうだ。今話が終わったところでな、それもあって君等に会いに来た」
「進展が有りましたか?」
「あぁ。間もなく、あと数日後には統治官逮捕の為の一団が街に来る手筈となっている」
「!逮捕ですか」
「そうだ。ギルドは国直属だ。我々との約束を反故にし、冒険者を殺して女を攫うなどと国家反逆罪に等しい。領主を通り越して国が直接逮捕するのは余程の重罪となるだろう」
「国家反逆罪・・・」
「あぁ。街の為という言い訳もあの契約書ですっ飛んだな」
「ジャンも?」
「あぁ。証人だから一緒にしょっ引かれる。見ていくか?」
「そうですね。下世話ですが僕達を襲った黒幕の顔を見ておきたいですね」
「いいだろう。あと数日で街まで来る。2週間で30匹も狩ったんだ、それまで休みたまえ」
「ありがとうございます。ではお言葉に甘えてショーを楽しみますよ」
「あぁ、そうしてくれ」
本館を後にし、宿舎に帰った。
「ギルドに逆らうと怖いですね」
「だねー、国直属だもんなー」
「今回は味方で良かったですけど・・・」
「そうだなサーヤ君。いつもこうだと思わないようにしよう。たった10年前も戦争が有った訳だしね」
「やっぱり目立っちゃ駄目なのよ。厄介ごとがやってくるわ」
「しかし金は稼げるのは確かなんだよなー」
「マイタケもそうでしたしねー。ジレンマだわー」
「逆に言えば僕達の味方になるギルドを見つける旅っていうのも良いんじゃないかな?」
「なるほど!世界を回った後、どこに住むかってなるとギルドと良い関係を持ってる所が良いですもんね」
「なるほど」
「もし旅で敵対的もしくは嫌らしいギルドに遭った場合は、即行で逃げよう」
「さんせーい!お金より命ですからね!」
「そういえば結構貯まったんじゃないか?」
「はい!今280万エナ超えてます!」
「えぇ!?」
「はっはっは!どーだ、凄いだろうサーヤ君!」
「はい!そんなお金見たこと有りません!」
「はっはっは!そーだろーそーだろー」
「これに成功報酬の30万エナはほぼ確定ですからね!」
「300万超えか!数年後には収納袋も夢じゃないな」
「でも店頭には並ばないから伝手を作らないと」
「それもそうだ」
「収納袋を買うんですか?」
「そうだサーヤ君。収納袋が有ればもうテントなんか背負わなくていいぞ」
「わぁ!」
「でも逆に怪しくないですか?」
「む。そうか。持ってなきゃ持ってないで、あいつ収納袋持ってんじゃね?みたいな?」
「そうそう」
「うーん。じゃぁ1つだけ背負っとくか?ぱっと見、1人用か3人用か分からんだろう」
「なるほど。3人用に見えるけど実は軽い1人用のを持っておけば良いと」
「そうそう。それに街とその周辺では必要だけど、森の中では収納袋に入れておけばいいし」
「そうしましょう、ってまだ持ってないんですけどね」
「取らぬ狸の、ってやつだね」
「統治官の逮捕を見るって、良かったんですか?」
「あったりまえじゃないか!俺を殺して君達を犯そうとした奴だぞ!?見ないでどーする!なぁ?サーヤ君!」
「はい!」
「先輩まさかっ!」
「いや、今回は《殺菌》使わないよ?領主に捕まったんなら温情とかありそうだけど流石に国に逮捕って・・・結構重罪っぽいし」
「ホントでぃすか~?」
「××が20年だったろ。それ以上になるだろうし。死はある意味救済だからな、もっと苦しむ道を与えんと気が済まんよ」
「討伐軍の点数稼ぎってところも、点数になるくらいだからってのもありそうですしね」
「あぁ。オヴィエドめ、目の前通りかかったら飯食ってうまーって顔してやる!」
「性格悪っ!」




