⑤-14-90
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僕達は街へ帰った。
実に3日ぶりだ。
門衛にも心配された。
どうやら門衛は一味じゃないみたいだ。
その足でギルド本館へ行く。
「皆さん!どうしたんですか、3日も!?心配したんですよ!?」
「どーも、シレナさん。心配おかけしまして」
「いえいえ。ご無事で何よりでした」
「それでジャンって言う冒険者が宿舎に居るって聞いたんですが」
「ジャンさん?はい。皆さんの護衛の1人ですよ。今も宿舎に、って。ちょっと!皆さーん!どこ行くんですかー!」
僕達は宿舎に走った。
宿舎には4人の魔力反応が有る。
幸い1か所に固まっている。
食事か談話でもしているんだろう、都合が良い。
「4人居て1か所に固まってる。逃がさないように出入り口を固めるが接近戦はしないように、いいね」
「「分かりました」」
4人いる部屋の出入り口は2か所。
一方を俺1人で、もう一方を菊池君とサーヤ君で固めた。
俺はドアを蹴り入り叫ぶ。
「ジャンってクソ野郎はどいつだ!?」
ガタッ
1人が席を立って菊池君とサーヤ君の方へ走った。
ドアを蹴破り一目散に外に出て走っていくが、
ビシュッ
ザシュッ
「ぐああぁぁ!」
2人の矢とボルトが膝裏に突き刺さる。
流石弓術スキルだな、素晴らしい。
「どっ、どういう事ですかっ!皆さん、説明してください!」
走って付いて来ていたシレナさんが叫んだ。
僕達は本館へ行き、タルバギルド長とシレナさん、それとジャンと、応接室ではなく尋問室のような部屋に居た。
ギルドが冒険者に詰問する時とかに使うらしい。
「皆さん説明してくれますね!」
シレナさんはかなり興奮していた。
それもそうだろう。
冒険者が街中で人を撃ったのだから。
膝を撃たれたジャンは椅子に座っている。
「えぇ、勿論です。護衛が裏切って僕等に攻撃を仕掛けてきました。そいつらの仲間がこのジャンです」
「何だとっ!?」
「何ですって!?」
「ウソだ!俺は何も知らねぇ!言いがかりだ!」
「じゃぁ、なんで逃げた」
「び、びびっちまってよ。いきなりだったから」
「護衛が裏切った?本当なのか?」
「えぇ」
「それで!その護衛は?」
「僕等が反撃して捕まえて吐かせました、それでジャンが仲間って分かったんですがここに来る途中で逃げられて雇い主に匿われました」
「なんだと!」
「くそっ!あいつら俺を置いて」
「恐らく雇い主がやって来るでしょう」
「そっ、そうだ!来るぜ!俺を助けにな!」
「なんでお前を助ける?言いがかりなんだろ?」
「そっ、そうだけどよ」
「やっぱり、あいつらの仲間じゃないか」
「な、仲間ってゆーか、大体護衛が襲いかかったってホントかよ!おめぇらが襲ったんじゃねーのかよ!」
「何のために?」
「うっ、か、金とか」
「ゴースト討伐で金はある。貧乏冒険者襲うよりゴースト襲うよ」
「う、うるせー!誰が貧乏冒険者だ!」
「お前以外他に居ないだろう、鏡見ろよ。じゃぁ仲間じゃないんだな?」
「そうだ!」
「だったら雇い主が来ても無関係だ。お前はここに居ろ」
「なっ、ちょ、え?」
「お前は別件だ。後日に調べるから、今は雇い主の方に対応します、いいですねタルバさん」
「お、おう。そうだな」
「雇い主は強力な権力を持ってます。逃げたあいつ等を盾に僕等を攻撃するでしょう」
「ちょーーーっと待ったぁ。実は仲間なんだな」
「な、何?」
「な・か・ま。仲間なの、俺達」
「馬鹿言え。なんで僕とお前が仲間なんだよ」
「馬鹿か!おまえとじゃねーよ!そいつら!統治官のとこに逃げたやつらと俺は、な・か・まなの。お分かりぃ?」
「さっき違うって言っただろ」
「ウソでしたー!ごめんなさーい!」
「お前らのリーダーは契約したって言ってたけど・・・まさか・・・」
「そーでーす!契約しましたぁ!統治官とぉ!おめぇら覚悟しろよ!ここから俺のざまぁ物語の始まりだぜ!」
「タルバさん」
「あぁ。おい、ジャンもう1度聞くぞ」
「あーん?」
「護衛とは仲間なんだな?」
「そうだよ!」
「誰と契約したって?」
「だーかーらー!統治官とだっつってんだろがっ!」
「シレナ君、人を呼んで来てくれ」
「分かりました」
「な、なんだ?」
「その契約って言うのは何だ?」
「そっ、それは言えねぇな。俺達の秘密だ」
「エチル君。君は知ってるのかね?」
「えぇ、勿論です。こいつの仲間でリーダーのやつが持ってました。これです」
契約書をタルバさんに渡す。
「こっ、これは!?」
「そ、そりゃー!?何でおめぇが持ってやがる?」
「だーかーらー!リーダーを捕まえた時に取ったんだよ」
「たっ、確かにオヴィエドのサイン!それに魔力サイン?」
「それで特定できますか?」
「あぁ、魔導具で調べればこの魔力サインがオヴィエドの物だって証明出来る!」
「そうですか」
「エチル君を殺し女は連れ帰れ?あの野郎!」
「ギルド長!連れてきました!」
シレナさんが2人の冒険者を連れて来た。
「ご苦労!おい、ジャンを下の留置所にぶち込んどけ!」
「な、なんだって!?」
「誰にも会わせるなよ!」
「おい!どーゆーことだ!」
「お前は殺人と誘拐の共犯ってことだ。あと違法奴隷売買の疑いもある」
「は?」
「仲間なんだろ?」
「う、ウソでしたー!じつはオ」
「いやさっき証言したから嘘は通じんぞ」
「へ?証言?」
「仲間って証言しただろ。忘れたのか?」
「あ、いや、その・・・知らなかったんだ!そんな計画があったなんて知らなかったんだ!」
「知らなかった?」
「あ、あぁ!酒酌み交わすくらいの仲ってだけで、そんな大それた計画してたなんて知らなかったんだ!」
「いやそれも知ってたって証言しただろ、さっき」
「へ?」
「統治官だって証言しただろ?」
「え、いや、そ、それは・・・こいつが!こいつが言ってたじゃん。統治官がやって来るって!」
「僕は雇い主って言っただけで統治官なんて一言も言ってないぞ」
「そ、そん」
「統治官って言いだしたのはジャン。お前なんだよ」
「は・・・ウソ」
「嘘じゃないでーす!本当でーす!ぷぷっ」
「てっ、てめぇ!ブッ殺してやる!」
冒険者が止めに入る。
「おっ、罪状に脅迫が加わったな。流石ジャン君、宿舎で待ってるだけの冒険者だけはあるわー」
「なっ、てっ、てめぇー!覚えてやがれ!統治官が来たらてめぇらブッ殺してやる!女は犯して奴隷にして売ってやるぜ!」
「統治官は来ないよ」
「ブッ殺ー、は?」
「だーかーらー。統治官は来ないって」
「な、なんだと?だっておまえさっき・・・」
「嘘でしたー!ぷふー!お前の仲間は統治官の所に行ってませーん!」
「なっ、なんだと!じゃ、じゃぁ、どこに・・・」
「あぁ。ここにいるよ」
「こっ、ここに?」
「サーヤ君」
「はい」
サーヤ君が大きい袋から護衛達の首を床にばら撒く。
「「「う、うわぁー!」」」
「うお!」
「きゃあぁぁ!」
首の1つを踏んづけて俺は首を斜めに傾けながら喋りかける。
「全員死んだよ。7人全員」
「な、7人?確か護衛は4人だったはずじゃ・・・?」
「タルバさん、街の外にあらかじめ隠れてましたよ」
「なんだと!?」
「僕達の護衛4人と待ち構えてた3人の計7人でした」
「7人を・・・3人で?しかも無傷?」
「いえ、すごーいダメージを負いましたよ。シレナさん」
「えっ!?どこ、どこを怪我したんです?」
「こ・こ・ろ。心を。ギルドの護衛に裏切られてすごーく、すごーく傷付いちゃった、僕達」
「もっ、もうしわけ・・・」
シレナさんが涙ぐんでいる。
それは申し訳なさからなのかそれとも―――
俺は落ちている首の1つを掴んで拘束されてるジャンの下に行く。
「ひっ」
「そんな嫌がってやるなよ~、仲間だろ~」
首をジャンの顔に擦りつける。
首の下あごを持って喋ってる風にカチカチさせる。
「ジャンー、仲間だろー、仲良くしようよー」
「ひっ、ひぃぃぃ」
「捕まったっていうのはー、ほんとだよー。でもーゾンビにされちゃったー」テヘペロ
「うわぁぁぁ!」
「おまえもー、はやくー、こっち来いよー」
「ひえぇぇぇ!たすけ、助けてっ!」
「タルバさん」
「あ?あぁ。証言するんだな?」
「するっ!なんでもする!ゾンビにはしないでくれー!」
「下に連れていけ!」
「「はっ、はい!」」
その場に5人と数個の首が残った。