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HappyHunting♡  作者: 六郎
第5章 異世界・オブ・ザ・デッド (フォセン:エチル、マイン、ターニャ)
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⑤-08-84

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「全く。なんてこった」

「はぁー、眠い」

「だ、大丈夫ですか?」

「ったく。しゃべるなって言ってんのにこれだよ!」

「ホントですよ!」

「サーヤ君!これが人間って奴だ!約束なんてこの程度なんだ、連中にはな。君も気を付けろよ!」

「はい!」

「俺の《魔力感知》があるから周囲の警戒は任せろ。荷物と食料と水を急げ」

「「了解!」」


宿まで走り荷造りをし、隙を見て保存食と水を盗む。


「いいんですか?」

「迷惑料だ。どうせギルドにツケが回る」


「荷造りは大体で良いぞ。街から出たらし直せばいいから」

「「分かりました」」


準備を終え宿を出て西門へ向かう。

門までは走らない。

怪しまれるだろう。

いつも通りの感じで門まで来て、

いつも通りの感じで門衛に話しかける。


「あれさっき帰って来たばかりだろ?」

「ギルドからの依頼でして。全く大変ですよ」

「そうか、それは大変だな。しかし徹夜明けなんだ。気を付けろよ」

「分かってますよ。サクッと終わらせて逃げますよ」

「あぁ。そうした方が良い。おーい!開けてやってくれ!」


森で野宿したとあって一目置いてくれたのだろう。

えぇ、逃げますよ。

すんなり通してくれそうになったその時、


「おぉーい!待て!開けるなー!」


声の方を見ると馬に乗った男が叫びながら走ってくる。


「なっ、なんだ!?」

「あれはギルド長だな!?」

「何かあったのか?」


門衛が口走っている。


「どどどうします?」

「門は開けられんな。今逃げたら立場が悪くなるだろう。ここは様子見だ。隙を見て逃げる。いつでも逃げられるように準備はしておいてくれ」

「「了解」」


「はぁはぁはぁ・・・」


門衛の1人にクツワを取らせ、ギルド長らしい男は息を切らしながら馬から降りた。


「どうしたのですかギルド長!馬で街中を走るとは街法違反ですよ!?」

「はぁはぁ・・・あぁ。火急の用でな。街の大事に関わる」

「街の大事!?」

「あぁ、はぁはぁ。その者達に用が有ったのだ」

「この者達?ギルドからの依頼で外へ出るとか」

「ギルドからの依頼?・・・ま、まぁ、そうだな」

「急な変更でも?」

「うん?う、うむ。それで部屋を貸してくれないか」

「分かりました。待機所に案内します」

「よろしく頼む。すまんが君達、付いて来てくれるか」

「お断りする」

「むっ。何故だ」

「理由が無い」

「むむ。ギルドからの依頼と門衛には言っていたそうだが?」

「アンデッド討伐はギルド依頼じゃないんですかね」

「むー。その件で話がある」

「僕達にはありません」

「うーん。君達の事情は聞いている」

「であれば引き留めることは出来ないと思いますが」

「先ずは話を聞いてもらいたい」

「僕達を裏切ったどこかの誰かさんもそんなセリフを吐いてましたよ」

「うーん。話を!話を聞くだけでもお願い出来んか」

「この街の人間は信用出来ません」

「むむむ」

「どうしても話をと言うのなら」

「言うのなら?」

「街の外で」

「なに!?」

「おい!いくら何でもギルド長に対してその口の利き方は何だ!それに街の外で話し合いだと!」

「街の為に命懸けで野営しアンデッドを退治して帰ってみれば僕達を捕縛しようとする。堪らないな」

「捕縛?ギルド長!どういう?」

「こっ、込み入っているのだ!」

「僕達も少し譲歩しましょう」

「譲歩?」

「壁の上でなら応じましょう」

「うーん・・・分かった!構わん」


僕達は壁の上へと階段を登っていく。


(待機所じゃ駄目だったんですか?)

(兵士の待機所だぞ。囲まれたら逃げられん)

(なるほど)

(壁の高さは約5m・・・飛び降りられるか?)

(《頑健》君があるし・・・多分)

(壁にぶら下がって降りるだけでも2m近く縮まる。3m程なら大丈夫だろう)

(分かりました。サーヤも覚悟しといてね)

(はい!)


壁の幅は約1mほど。

ギルド長と相対する。

俺の後ろには菊池君とサーヤ君の2人だけ。

ギルド長の後ろには誰もいない。

兵士に囲まれることも無いだろう。


夏の朝日が暑い。

徹夜明けに堪えるな。

ギルド長も汗ばんでいる。


「ここならいいだろう?」

「えぇ」

「先ずは名乗っておこう。冒険者ギルド長のタルバだ」

「エチルです」

「先ずは詫びよう。誰にも知られたくなかったというのにこんな騒ぎになってしまったこと」

「・・・」

「そして君達からゴースト討伐の方法を聞き出そうとしたこと。

冒険者の不文律を侵し、君達の利益を侵害せしめようとしたことを。

誠にすまなかった。どうか謝罪を受け入れてもらいたい」

「・・・」

「・・・どうだろうか?」

「話は以上ですか?」

「うん?う、うむ。そうだが」

「話が終わったのであれば行かせていただきます」

「そっ、それは!」

「話を聞くだけ・・・という話だったはずですが」

「そっ、それは・・・」

「不文律であって明文化されていない以上罰することも出来ない」

「むむ」

「謝罪、というなら言葉だけではなく行動で表して欲しいです」

「行動?」

「僕達を街の外へ出す、ということです」

「そっ、それは!」

「条件を聞きましょう」

「条件?」

「街に残る条件です」

「残ってくれるのか!?」

「だから、その条件です」

「あ、あぁ。先ず今回強硬的に、君達の利益を損なおうとした者達は、以後君達に近寄らせない」

「強硬派の名前と役職を教えてください」

「・・・この街の統治官オヴィエドだ」

「・・・トップですか」

「分かって欲しい。街の為にした「次の条件は?」・・・あ、あぁ」

「賠償として20万エナを用意する」

「・・・20万は必要ありません。ただゴースト討伐報酬を2万加算してもらいたい」

「6万か・・・分かった応じよう」

「・・・以上ですか?」

「あ?あぁ。以上だ」

「期間を決めてもらいたいです」

「期間?」

「アンデッド討伐期間。これは依頼です。当然ある程度の期間は必要でしょう」

「そうだな・・・分かった。3ヶ月!3ヶ月だ」

「報酬は?」

「報酬?さっきの6万じゃ?」

「あれは賠償でしょう。これは報酬」

「ぬぬ、20、いや30万エナ出そう!」

「分かりました。受けましょう」

「そ、そうか」

「ところで」

「む」

「強硬派を近寄らせないと仰いましたが」

「あぁ」

「どのように?」

「うーん・・・」

「まぁ、それは任せますよ。では正式な依頼締結はギルドで?」

「あ、あぁ。そうしよう」


僕達は階段を降りていく。

階下にはシレナさんが来ていた。

話が終わるまで待っていたようだ。


「シレナさん。汗まみれじゃないですか」

「エチルさん・・・」

「シレナ。彼らは残ってくれることになった」

「ホントですか!?」

「これから本館で依頼票を作る。一緒に来てくれ」

「わ、分かりました!」


「寝られるのはもう少し先になりそうだ」

「「はぁー」」


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