⑤-02-78
⑤-02-78
「「「ゾンビ!?」」」
目は白濁。
服は着ているが皮や肉が一部無くなった体。
フラフラした歩み。
我々の想像するまさにゾンビだ。
「サーヤ君。ゾンビは確か死霊魔法か自然発生だったな」
「は、は、はい」
「上位アンデッドがこの辺に?」
「分からん。とりあえず今の情報をまとめるぞ」
「「はい」」
「ゾンビは魔物だな?」
「はい。魔石が取れるらしいです」
「であれば殺せる・・・倒せるな」
「ややこしいわね」
「頭を潰せば倒せるんだったな?」
「はい。それ以外の倒し方は分かりません。申し訳ありません・・・」
「だから謝るな。知らないだけなんだから」
「はい、すいま・・・」
「どうやって倒します?」
「先ずはセオリー通りにいこう。頭部破壊だ。弓でいくか。菊池君?」
「了解!」
ビシュッ
見事に頭に命中した。
2,30mは離れているのに凄いものだ。
やはりスキルの恩恵か。
「倒れましたね」
「よし。近づいて様子を見よう」
「「はい」」
頭に矢が刺さったゾンビを囲み、見下ろす。
「動きませんね」
「動きませんね」
「動かないな。ちょっと長めの木の枝探してくる」
「何するんです?」
「つんつくするんだよ」
「警戒し過ぎ!」
俺は木の枝を持ってきてつんつくしてみるが動かない。
傷口に刺し込んでみるがこれも動きがない。
「大丈夫そうだな」
「魔石取るの勇気要りますね」
「心臓の反対位置だったね。俺がやろう」
「あ、私が!」
「いや、俺がやる。とりあえず首を切り落とす。開胸作業中に噛みつかれでもしたら事だからな」
「「ひえー」」
ドンッ
やはり人間の首を落とすのは初めてだからだろうか、
1発では落ちなかった。
何発かでやっと切り落とし、左胸を切り開く。
「血は出ない。骨も脆いな」
「時間が経ってるんでしょうかね?」
「そうだろう。そして・・・あったぞ。魔石だ」
「あれ?いつもの魔石の色じゃないですね」
「ホントですね。暗いというか」
「そうだなー。赤黒い?」
「ゾンビになって魔石が出来たのか、魔石が出来たからゾンビになったのか」
「死霊魔法でってならゾンビになってからでしょうね」
「この世界は火葬だろ?どうして死体が・・・む」
「「どうしました?」」
「魔力反応・・・俺は今感知範囲30m程だから結構余裕があるにしても結構な数だ」
「どのくらい?」
「20はいる。そろそろ見えるぞ」
森の中に蠢く影が見える。
「ゾンビですね」
「ゾンビだな」
「どうしましょう」
「ふふふ。何を言ってる迎え撃つに決まってるじゃないか」
「ちょ、なんでそんな興奮してるんですか」
「興奮なんてしてないよ」
「うそだー!妄想が現実になってヒーハーするんならこんな顔するんだろうなって顔してるもん!」
「どんな顔だ」
「え、えと・・・」
「さっきと同じだ・・・が、木々が邪魔で危険だ。開けた道沿いに誘き寄せよう。そこで迎撃だ」
「「了解!」」
道まで戻ってそこから迎撃することにした。
ゾロゾロと森からゾンビ達が出て来る。
「良し。周囲の警戒は僕に任せて君達はゾンビを倒してくれ!」
「「了解!」」
次々に矢とボルトが飛んでいきゾンビの頭部に命中している。
菊池君なんかは風魔法で首を落としている、怖いぞ菊池君。
残り5体を残したところで、
「射撃止め!」
「えっ、まだいますよ」
「はい」
「バトルハイだな。ゾンビを倒してるとそうなってしまうんだろう、怖いぞ君達」
「「え?」」
「菊池君。魔法で足を切断できるかい?」
「やってみます~~~~・・・」
「《風刃》!」
ザシュッ
「もう少しだったな」
「いえ、射程ギリギリだったんで。引きつければ距離減衰なく切断出来ると思います」
「よし。残り全部そうしてくれ」
「分かりました」
足が無くなって這いずってる1体に近寄って心臓を刺した。
「やはり心臓を破壊しても動くみたいだな」
「弱点は頭部と」
ズボッ
魔石を取りだす。
「魔石だな」
魔石を失ったゾンビは動かなくなった。
更に1匹に近付き足で押さえて動けなくする。
「よし。サーヤ君。タッチして《吸精》を掛けるんだ」
「「!?」」
「そうか!死霊魔法なんかの魔法でゾンビになったんなら魔力を吸収すれば!」
「ゾンビを倒せるかも?」
「そういうことだね。やってくれ」
「はい!」
倒れて踏みつけられてジタバタしているゾンビに触ってスキルを発動するサーヤ君。
するとゾンビが痙攣しだした。
「これは・・・苦しんでるような?」
「そうですね。今までの動きではないですね」
そうこうしてる内にゾンビは動かなくなった。
「はぁ・・・終わりました」
「終わった・・・全部吸収したのか?」
「はい・・・吸収出来るだけ吸収しました」
「そうか。確かに《魔力感知》に反応は無いな」
「あ、確かに。じゃぁ倒したって事?」
「あぁ。サーヤ君のスキルで倒した」
「凄いじゃない!サーヤ!」
「は、はい!」
サーヤ君は自分のスキルで倒したのが嬉しかったのだろう、目が赤い。
「その後気分はどうだ?アンデッドの魔力を吸収して身体の調子とか悪くなったりはしてないか?」
「・・・はい。気分も体も変わりありません」
「ちょっと!サーヤがゾンビになる可能性が有ったんじゃないですか!?」
「まぁ、ゼロではないな」
「ちょっと!」
「生きたままゾンビにはならないだろうし、掛けられた魔法じゃなくそれを維持している魔力を吸ったんだ。大丈夫だろうっていうのは有った」
「それでも!」
「いえ!私はスキルで役立てたのがうれしいです!」
「うーん」
「僕も一か八か何てやらないよ・・・今は」
「今はって・・・」
「それじゃぁ、タッチせずに離れて倒せるか試してみよう」
「分かりました!」
その後、残りのゾンビを離れた位置からでも倒せる確証を得た。
「これは凄いな!」
「凄いよサーヤ!」
「ありがとうございます!」
「僕の《殺菌》と同じで、即効性は無いが遠距離から確殺出来る。凄いぞ」
「しかもゾンビは《吸精》掛けられてる間は痙攣して近づいて来られないから安心出来るわね!」
「僕の出番はないな」
「良かったじゃないですか。周りの警戒しといてくださいよ」
「そうだな。無理に接近戦する必要なんてないよな。噛まれたくないし」
「なんで寂しそうなんですか」
「そ、そんなことないもん」