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HappyHunting♡  作者: 六郎
第4章 サーヤ (グンナー:エタル、マキロン)
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④-17-74

④-17-74




翌朝も2人に呼ばれて一緒に朝食を取ることになった。


「おはようございます。エタルさん!」

「おはよう。プリシラちゃん」

「もう!ちゃんじゃないですよ。子供じゃないんだから!」


昨日までがウソのように元気だ。

この切替の良さが子供の特権だな。


「子供は元気が1番だよ」

「もう!」

「奥さんは少し疲れてるようですが」

「あ、えぇ。少し遅くまで話しまして・・・」

「そうですか」


(元気になりましたね)

(無理してるんだ)

(無理?)

(心の整理はついてない。でも変わらないといけない)

(無理してでも?)

(僕達が出来るのは彼女の頑張りを茶化すことなく受け入れることだよ)

(さっき早速茶化してませんでした?)


奥さんは窶れてはいるが病的なものは見られない。

プリシラちゃんとの話は良い結果になったのだろう。


「ありがとね、エタルさん。あれからお母さんと話したの」

「そうか。それよりお腹空いた」

「もう!でね。お父さんは許せないけどこれから2人で頑張っていこうって!」

「熊も食べてみたいな」

「もう!・・・あ、あのマーヤさん!」

「・・・は、はい」

「今までごめんなさい。私やっぱり嫌ってたみたい、でもあなたは仕方なかったんだよね、奴隷だったんだし・・・」

「・・・あ、あの」

「プリシラちゃんが謝ることはないよ」

「え?」

「マーヤ君が愛人契約をしていたのは事実だからね。ただ彼女に選択権は無かったと、理解してくれたらいい」

「・・・うん」

「・・・」

「朝から湿っぽいのは不吉だよ。何か歌ってよプリシラちゃん」

「だから子供じゃないってば!16才だし!」

「「「えっ!?」」」

「じゅう・ろく・さい!」

「ほほほ、よく間違われるんですの」

「マジか」

「幾つだと思ったのよ!」

「じゅう・・・5才」

「「うそつけ!」」

「ほほほ、さぁさ。食事にしましょ!」


「おいしいですね!先輩」

「あぁ、味がしっかりしてるな。塩が普段より多めに入ってるのかな」

「えぇ。お分かりになられます?」

「この辺は岩塩が取れるのですか?」

「んーん。岩塩は取れないよ」

「じゃぁ、海から?」

「んーん。海も遠いよ。海亀だよ」

「?」

「海亀だよ、海亀」


(どういうことだ菊池君)

(周りの様子は変わりません。当然の一般常識って感じですね)

(岩塩は取れない、海も遠い。なんでそこで海亀が出てくる?)

(海からは遠いのに海亀・・・なるほど、分かりません)

(よし、ここはサーヤ君に合図を送る)

(分かりました)


2人で「説明しろよ、お前」的な視線を送る。

「「じとー」」


「あ、あの。お2人は海亀ってご存じですか?」

「あぁ。僕達が居たところにもいたよ。勿論海にいる動物・・・だよね?」

「えぇ、ここらでもそうです。でも「塩」という言葉で出てくる海亀は特定の魔物を言います」

「「特定の魔物?」」

「海から上がって世界を横断する海亀。それが今話されてる海亀です」

「渡り鳥ならぬ渡り亀ってところか。でもなんでそれが塩と?」

「世界を横断してる途中で塩を落としていくのですわ」

「海亀が落とす塩の量なんてたかが知れてるでしょう」

「先輩!亀めっちゃ多いんですよ!地面一杯に!」

「な、なるほど!」

「んーん。海亀は1匹だけだよ」

「「?」」

「この街くらいの大きさなんですのよ」

「「なんだってー!」」

「人口7000人の街と同じ大きさ!?」

「そーだよ!」

「信じられんな」

「えぇ、信じられません」

「そうでしょうね、実際に見ないことには。見学ツアーも組まれてるほどですし」

「その亀の背中が池というか湖になってまして。そこに海水が貯まり蒸発して」

「落としていくと」

「はい」

「魔物なの?」

「そーだよ。人は襲わないけど。昔は5匹居たんだけど今は1匹だけ」

「昔は5匹・・・」

「塩をめぐる争いで狩られていって、今は1匹しかいませんの」

「北部は全滅して南部の1匹しかいないんだよ」

「なるほど。経済的に南部が強いって言うのも・・・」

「はい。塩の影響も有りますわね」

「ったく。北部は良い印象ないわね」

「ホントだな」

「マーヤは見たこと有るの?」

「いえ、まだ・・・」

「そうか。じゃぁ折を見て見に行くか」

「はい!」

「そんな巨大生物、僕達も見たこと無いしな」

「そうですね!」


「今日のご予定は?」

「装備を直そうかと」

「それでしたらウチの店を紹介いたしますわ。この街1番を自負しております」

「そうですか。それは甘えさせていただきます」

「はい」

「あと武器屋もご紹介くださいますか」

「分かりました」

「そう言えばショートソード折れましたもんね」

「あぁ、それもあるんだが・・・ちょっと思いついたことが有ってね」

「またですか。まぁ先輩の思い付きは良い方へ行くことが多いですし」




「ブリトラさんとプリシラち「ムッ」・・・プリシラ君はどうするんだい?」

「私はお母さんと店を続けていこうかと思ってます」

「そうか」

「夫が残した店ですから・・・頑張っていこうかと」

「お父さんは許せたのかい?」

「んーん。まだ・・・でも」

「それで良いんじゃないかな」

「え?」

「お父さんを許さなくても」

「・・・」

「君はこの件を知るまでお父さんは好きだった?」

「うん。仕事も・・・尊敬してたし」

「なんであんなことをしたのか・・・?」

「・・・うん」

「君はお父さんのお父さんしか知らなかったんだよ」

「???」

「お父さんは別の面もある。人間の男という面だ」

「人間の・・・男」

「男の欲望というのは知ってるのかな?」

「・・・うん」

「この世の全ての男が持つ欲望なんだよ。勿論僕もだ」

「エタルさんも?」

「当然だ。人間であり人間の男である以上僕も当然その欲望を持ってる。たまにマキロン君やマーヤ君をいやらしい目で見てる」

「ちょっと!」

「エタル様」

「でも実際に行動には移さないよ。そんなことをしたら2人は僕から離れていく。僕は独りぼっちになってしまう」

「ひとりぼっち・・・」

「要はコントロールなんだ」

「コントロール?」

「自分の欲望をコントロールする。美味しい物を食べ過ぎたら太ってしまう。遊び過ぎたらお金が無くなる。欲望をコントロールするんだ」

「・・・うん」

「お父さんは、ちょっとコントロール出来なくなったんだろうね」

「でも」

「僕は君のお父さんに会ったことも無いからどんな人だったかなんて分からないけど君を見てれば優しい人だったって分かるよ。

 でもお父さんとは違う一面。人間のオスの面がコントロール出来なくなっちゃったんだろうね。

 人は色んな欲望を持ってる。美味しい物を食べたい。沢山お金が欲しい。キレイな服を着たい。そんな沢山の欲望を持ってるのが1人の人間なんだ。

 確かにお父さんは君達を裏切った。でも人間の沢山ある面の1つだけを見てその人全てを判断するのは、ちょっと早いと思う」

「・・・はやい」

「父親として、夫として、商人として頑張ってきたのも考えてあげたらいいんじゃないかな。

 今は許す必要はないよ。もし君が大人になって結婚し、子供を産み、おばあちゃんになって子供たちに見守られながら死んだとしよう。あの世でお父さんを叱って上げればいいんだよ。

 お父さんが死んだあと、お母さんと2人で苦労したけど頑張って幸せになりましたって、文句言ってあげればいいんだ」

「・・・うん」

「だから、今は許せなくて良いんだよ」

「分かった!」

「あぁ」

「あと、大人になって結婚したらって、私もう大人だから!」

「お、おぅ」


「はぁー、もう。所でブリトラさん、商売の方は順調なんですか?」

「ぐす・・・はい。いえ、実はあれから他の街への輸送が・・・」

「あぁ、護衛の冒険者が怖いですもんね」

「えぇ」

「お兄ちゃんたちがやってくれたらいいんだけど・・・」

「そしたらマイタケが手に入らなくなるよ」

「そっかー」

「信頼出来る冒険者の選び方・・・ですかね」

「え、えぇ。それが分かれば」

「無理ですね」

「・・・ですわよね」

「ただ可能性を上げ下げするのなら、この街の冒険者を雇うのが信頼は高くなりますね。あいつらは南の街で雇ったみたいですし」

「はい」

「流れ者じゃなくこの地に根差した者、僕達みたいなのじゃなく、ね」

「ほほほ」

「そういう観点から言えば・・・ムヒなんかどうですかね」

「「「「えっ!?」」」」

「ん?」

「いや、ムヒって。先輩喧嘩してたじゃないですか」

「じゃれあいだよ」

「いや、馬車から落としてましたけど」

「出会いは不幸だったがあれは僕が女性を泣かせたと勘違いして突っかかって来たからな、裏を返せば女性に優しいと言える。正義感も強そうだ。現場での護衛の仕事を見てたが堅実だったよ。ゴリラのくせに」

「まぁ、あの受付嬢は・・・ねぇ」

「同行した他の冒険者もなかなかでしたよ」

「・・・そうですか」

「今の護衛の方たちは残るので?」

「え、えぇ。そうしてくれると言ってます」

「商売が順調なら離れていく事はないでしょう。今のうちに地場を固められては?」

「・・・そうですわね。ちょっと考えてみます」




朝食を終え武具屋に行くことにした。


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― 新着の感想 ―
[一言] もっとスマートに教えてあげればいいのに 良いこと言ってるのに説教臭いのが残念 上司としてはあまり慕われてなかったのかもね
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