⑱-39-706
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「私達で会議を主導して行きましょう」
「我々はソルスキアに配慮しなければならん」
「勿論考慮するわ。少なくとも南部の為になるように、ね」
「問題はルボアール王国だ。今まで通りなら相互不干渉のはずだが」
「大臣、質問が」
「何かな」
「大国のルボアールが相互不干渉というのは?」
「うむ。ルボアールは特に国内諸侯の影響が強い。王家と言えども諸侯に強くは出られない。領という独立国が存在しそれらのリーダーが王家であるようなものなのだ。国際的には南部協調路線だがその実、個々の領国で国際的批准が認識されているかというと怪しいところだな」
(連邦国家みたいなものか)
「良い意味で言えば独立心が強い、悪い意味で言えば纏まりが無いって事ね」
「その領主は干渉されるのを嫌う。勿論どの国の領主でもそうだろうが特にルボアールの領主はその気持ちが強い。故に国家としてもソルスキアのように積極的な外交も無い。今回の援軍もようやく重い腰を上げたといったところだ」
「なるほど(俺は干渉しないからお前等も干渉すんなってところか)」
「しかし今回その重い腰を上げて来たのだからには何かしらの外交的成功を持ち帰りたいはずよ」
「シンファンとルボアールとで戦闘は有ったのか?」
「偵察部隊らによる局所的なものだけらしいわ。本格的なものは無いようね」
「いつも通りだな。では相応の返礼で良いのではないか?」
「今回の相当の被害で相当の見舞金が必要になっているの」
「・・・なるほど」
「元老院は、国の戦争なのだから国が負担すべき、と言っているけど流石に通じないようね。明らかにその原因は元老院派の副官だった訳だから」
「元老院が負担すると?」
「お優しい女王陛下も今回ばかりは元老院に責を負わせるお積りだと思う」
「・・・それでファナキア殿が外交官になった訳じゃな」
「生かしといて良かったわ」
と言いながら俺を見た。
俺は額を搔いた。
ポリポリポリ
「ギリギリまで待った甲斐はあった訳じゃ」
「そうね。明後日出立しましょう」
「・・・えっ!?出立って、もしかして」
「えぇ。塩会議によ」
「えっ!?明後日出発!?急過ぎません!?」
「何言ってるの、外交も戦争よ。主導権を握るなら相手より先んずるのが常識でしょ」
「他の両大国はどうするんです?」
「別に一緒に来たくなかったら来なくても良いだけよ」
「えぇー!?ファナキア様に決まったからこれからどうするか話し合うんじゃないんですか!?」
「そんなの向こうに着いてから話し合えば良いのよ」
「北部はもう来てるんですか?」
「まだよ」
「じゃぁまだここで話し合っても良いんじゃ」
「戦争で負けて会議にも遅れて来たら良い笑いものだわね」
「やっべぇ(わざとそれをやるつもりか)」
「北部の奴等は従来通りなら元老院の外交官だと思ってるでしょうけど、私が外交官になったと知ったら吃驚するでしょうね」
「?」
「元老院派の外交官だったらある程度の妥協は出来たじゃろうからな、金で」
「な~るほど」
「特にシンファンを通じてやり取りしてたみたいだけどそれも今回は無理。更に私が外交官になった事で慌てるでしょうしね」
「じゃろうな」
「?」
「分かった。明後日、出発じゃ」
「宜しくね。さぁーて、忙しくなるわね」
「大臣・・・」
「運命は急に来るもの。期日が決まっておるイベントに対処するなど大抵の者なら出来る事じゃ。要は予期せぬイベントに遭遇した時に発揮する才が本物の才というものであろう」
「冒険者には必要なものよ」
「あんたら違うだろ」
その後はファナキアと話を詰めた後に城を後にし、大臣の居た屋敷に戻って出発の準備を話し合って俺は宿に戻って来た。
俺が城に行った後、彼女達は宿に戻っていたのだ。
「ただいまー」
『お帰りー』
シュッ
マヌイが山ブドウを一粒投げて寄越した。
パクッ
「お疲れ、カズ兄ぃ」
「モグモグ、マジ疲れた」
「どうだったの」
「ソルトレイクの外交官が決まって、ファナキアになった」
『えっ!』
「マジで!?」
「マジで」
「会って来たの?」
「会って来た。メッチャ睨まれた」
『こっわ!』
「塩会議に向けて、明後日出発になった」
『はっや?』
「えっ!?国際会議でしょ!?そんな急に決まるもんなの?」
「外交も戦争なんだと」
「えっ。他の、ソルスキアとかルボアールとかの外交官とは会ったの?」
「いや。現地で会議するんだと。その為の明後日出発だ」
『ひえー』
「兎に角、決まったものはしょうがない。食料武器弾薬揃えていくぞ」
「戦争じゃない」
「言っただろ、戦争なんだよ。交渉決裂したら戦争継続だろぅが」
『マジかー』
「マジだ。俺達も戦争終わって気持ち緩んでたから締め直さんと」
「大変だねぇ、カズ兄ぃ」
「お前等も締め直すんだよ!」
「はーい」ポイッ
と言いつつまた一粒投げた。
「あーん」
俺が口を開けて待ってると、
バサバサ
ヒュン
レイヴが掻っ攫って行った。
「「あっ!」」
「締め直せていないようね」
「グァー!」
カツールク商会にも報告だ。
「という訳で、ファナキア様と同行する事になった」
「ふーむ。塩会議に、ファナキア様とねぇ」
「行きたくはなかったが、成り行きで、仕方ない」
「ベオグランデ公国の大臣の所に行った後で同行になった。ベオグランデとの伝手って事かしら?」
「そういう訳だ。詳しくは俺からは話せん。恐らく後日ファナキア様からカツールク商会には話があると思う」
「ふーむ。ファナキア様があたし達の助けにとあなた達を寄越し、そのあなた達がベオグランデ公国の大臣の所に行った後でファナキア様との同行話。ベオグランデと何か有るのかしらね」
「余所には話さんようにな。命に関わる」
「それほど?」
「元老院絡みだ」
「・・・分かったわ。これ以上の詮索は寿命を縮めるわね」
「そういう事だ。縮めて良いのは納期とスカートの丈だけだ。そう言った訳で食料武器弾薬類を調達したい」
「分かったわ。普段ならセクハラ男に融通はしないんだけどファナキア様関係なら仕方ない、用意するわ。だからあなたもしっかり護衛しなさいよ」
「される側なんだが」ボソッ
「なんか言った?」
「行きたくねぇよー!」
「うわっ!なに!?」
「行きたくねぇよー!」
「何なのよ」
「戦争終わってダラダラしてた所に無理やり依頼が有って。嫌々行くのよ」
「・・・なぁるほど。それはお気の毒ね」
「行きたくねぇよー!」
「まぁまぁ。じゃぁあたしから餞別って事で、山ブドウ贈るわ」
「「「「わーい!」」」」
「俺への餞別なのに食べる気満々じゃん!」
怪我をしてしまい、しばらく投稿できなくなってしまいました。申し訳ありません。
再開は未定です。