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HappyHunting♡  作者: 六郎
第18章 魚の丘、羊の谷
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「魔導具の情報に関しては問題無い、お前達に渡そう」

「良いんですか?」

「お前達が魔導具を集めてドゥベルチに卸してくれれば街の発展になる。構わんさ」

「将来的に魔法使いギルドを誘致したいんですが」

「うむ。考えておこう。しかし何よりも先に発展してもらわねばな」

「そうですね」

「欲しい情報というのはユニークアイテムという事だが?」

「えぇ。どんな物か、俺達は殆ど知らないんで」

「結局は性能だからな。冒険者に必要なのは武器防具だろうから、それらに付属する性能もある程度分類出来る」

「なるほどねー」

「知りたいのは値段との事だったな」

「はい。行商で仕入れるにしても掴まされたくないんで、ある程度の相場は知っておきたいなと」

「うむ。我が国の相場でだが教えておこう。当然ここならもっと高くなるだろうな」

「まぁ今はドゥベルチで売ろうにも買い手が居ないでしょうから、ここで売って得た金をドゥベルチの投資に回す事になるでしょうね」

「ふふふ、そうしてくれ」


「それと、これは断ってくれても構わんのだが」

「ん?」

「お前にまた新たに依頼を出したい」

「ほぉ」

「勿論、魔導具の情報はこの件に関して何も関係が無いので断ったとしても情報は渡すからその積りで聞いてくれ」

「分かりました」

「これから塩会議が開催される」

「えぇ」

「ワシと共に出席して欲しい」

『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はぁっ!?』

「其方に外交官となってワシの隣に居て会議に参加してもらいたい」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?」

「アレクサンドリアの外交官となって大臣の隣に居てくれ」

「・・・もうそんなお年頃なんですねお爺ちゃん」

「ボケとらんわ!」

「またか!なんで俺が国の外交官なんて務まると思ってんだよ!冒険者だぞ!」

「3公会議外交官も我々の予想通り・・・予想を遥かに超えてその任を果たしてくれた。其方なら出来る」

「無理だっつーのっ!国の事情なんて知らないんだぞ!折衝なんて出来る訳ねぇーだろーがっ!」

「それはワシが居るから大丈夫だ。内情や細かい数字なんかはワシが話す。其方は交渉を担当して欲しい」

「3公会議は知った顔が居たから何とかなったが塩会議は誰も知らないんだから交渉なんて無理だよ!」

「外交官なんて皆そんなものだ。知らない相手と交渉をする。商人や冒険者と似たようなものだろう」

「まぁ確かに・・・いやいやいや!俺はこの通り貴族じゃないから礼儀作法も無いし、相手の外交官は当然貴族だろうから話し合ってる内に無意識に怒らせるかもよ!」

「それはそれで構わん。我々が任命した外交官だ、怒らせるなり好きにすれば良い。それが全権委任という事だ」

「重ぉーい!」

「責任に対する相応の褒賞も考えておる」

「欲しーい!」

「其方は一度外交官を勤め上げた、もう一度くらい出来るはずじゃ」

「反対よ!」

「「ん?」」


「私は反対よ!」

「ジーナ」

「何故です!?何故冒険者のロッシが外交官をしなきゃいけないんです!外交は政治家の仕事でしょ!」

「う、うむ」

「どうした、ジーナ」

「ロッシ、あなた疲れてるのよ」

「・・・」

「ルンバキア、ベオグランデ、ベルバキア、ソルトレイク。私達は全部の戦争に参加したわ。全部よ、全部!あなたは私達の為に、私達が命を落とさないように且つ復讐である戦争の勝利の為に心身を削って働いたわ。そしてその所為で・・・疲れてしまっているのよ!」

「・・・ジーナ。心配してくれているのは嬉しいが、疲れているのは「疲れてるのよ!」」

「あなたは疲れてるの。これ以上の精神的な重圧は、あなたが壊れてしまうわ」

「・・・何か心配させるような事を、俺がしたのか?」

「・・・じゃぁ聞くけど。あなたやりたいの?何でだ、って言ってたじゃない」

「まぁな」

「大臣にお聞きします」

「うむ」

「何故ロッシなんですか、何故彼なんですか」

「・・・ジーナ」

「何でしょう」

「運命を、信じるか」

「運命」

「ロッシはロイヤルスクランブルに騙されて参加したという事だったな」

「えぇ」

「先ず騙されてロイヤルスクランブルに参加するか?大公を決める戦いだぞ。国の頂点を決める戦いに騙されて参加する奴が居るか?居たのだ、ここにな」

『・・・』

「そこから全てが始まった。国土回復戦争、パルカ・ドゥベルチ奪取、ベルバキアクーデター、そして3公会議」

『・・・』

「何故人は生まれてくるのか、生まれてくる事に意味が有るのか、それは分からん、この歳になってもな。しかし1つ言える事が有る。人との出会いには意味がある、と」

「・・・」


ジーナは黙ってしまった。

彼女自身、転生した事の意味を考えていたからだ。


「お前達はンナバイエル達との出会いがあってベオグランデに来た。そしてロイヤルスクランブルでクルル・カトとそして16世と出会った。彼等との出会いがあったからこそ国土回復戦争に参加したのじゃろう。それにパルカを奪取しようと言ったのはロッシじゃ。戦争での出会いでお前達の中に何かが芽生えたからこそパルカを奪取しようと言ったのじゃろう。そして3公会議後にロッシは言った、もう会う事は無いと。しかしまた会った。塩会議の為に集まったこの地でな。敢えて言わせてくれ、建国王と16世の導きなのだ」

『・・・』

「・・・それでも、私は反対です。彼がやる仕事じゃありません」

「・・・そうじゃな」

「大臣」

「ロッシ」

「一晩、話し合いたいんですが」

「勿論構わん」

「それじゃ今日はこのまま帰ります」

「うむ。また何時でも来てくれ。許可証を渡しておこう、これ」

「畏まりました。閣下、衛兵に見せれば待たずに案内してもらえる許可証を用意いたしますので」

「ありがとう。じゃぁまた明日」

「うむ」


カズヒコ達が部屋から出て行った。


「大臣の口から運命なんて、初めて聞きましたよ」

「ふっふっふ。周りは貴族ばかりじゃからな。ワシの口から出る言葉が政治や経済を動かしてしまう。そしてそれに乗っかろうとする奴等ばかりじゃ。陞爵も断ったあ奴等は醜い欲望の為に生きているのではない。それにあてられたのかの」

「欲望に?冒険者でしょう?」

「金は必要だ。しかし奴等は金の為に働いとるんじゃない、生きる為に必要じゃから冒険者になっておるのじゃ」

「?」

「金の為ならドゥベルチに投資などせん。国境の街など危険地帯じゃなく安全な投資先は幾らでも有ろう」

「確かに」

「ウリク商会はベルバキア公都ムルキアの商会らしい、そこに投資した方が良い筈だ。しかしそのウリク商会を巻き込んでドゥベルチに投資した。将来を見据えてじゃろう」

「将来、彼等のですか」

「大金を得て大きな街で享楽的に生きる道もある。現に大半の冒険者はそんなものだろう。冒険者だけじゃなく貴族も同じようなものだ」

「ドゥベルチの街主の座を狙っている者はそんな者達でしたね」

「街を発展させて国を大きくしたいのではない。己の金と権力を増したいだけなのだ。そんな中で奴等に会った。奴等は家族という信念がある。その信念に対して金や力は利用する只の道具なのだ」

「道具、ですか」

「ロッシ・・・特に奴は、狂っておる。狂信者と言って良いほどに」

「・・・」

「ダンジョン教徒と何ら違わん。ただ何を信じているかというだけでな」

「その運命とは」

「この乱世、普通では生き延びられん。16世が認めた狂信者。奴を使い熟す事が普通であるワシの、ベオグランデ公国大臣のワシの運命なのだ」




カツールク商会から紹介されてる宿に帰った。


「先ずは話し合おうぜ、菊池君」

「話し合うも何も、話した通りよ、あなたは疲れてる、だから無理、それだけ」

「確かに疲れた。疲れたと言ってたしな。しかしそれを押して出るだけのリターンは得られるだろう?大臣のお墨付きだし」

「言ったでしょ、あなたが壊れたら意味が無いって。駄目よ」

「何か有ったのか?何か、心配させるような事が」

「・・・」

「確か、夢を見たって言ってたよね」

「言ってたわね。確かに普通夢は見ないんですよ、この歳になると」

「死にそうになると見ると聞くな」

「走馬灯じゃねーか」

「冒険者も見るらしいです。大冒険した後に」

「へー」

「それだけ大変な目に遭った時に見るのだという」

「ふーん」

「カズヒコさんも、それだけ心に負担を感じていたという事ではないでしょうか」

「・・・」

「カズヒコ、あなたは十分やってくれたわ。これ以上リスクを取る必要は無いの」

「確かに。カズ兄ぃは戦争の度にリスクを取って行ってたよね」

「でもそのお陰で戦争が有利になっていた訳だろう」

「でもその所為でカズヒコさんが倒れたのも事実だわ」

『・・・』

「会議は命のリスクは低いように思えるが」

「どうだか。毒殺とかよく聞く話じゃない」

「まぁな」

「というか、あなた、出たいの?」

「北部のクソ共に物申したい気持ちは有る」

「喧嘩腰じゃない。精神的負担も大きそうね」

「カズ兄ぃは気後れとか無いの?国を代表する人相手に」

「無いな。所詮人間だ、そこら辺の屋台の親父相手にする感覚だな」

「それもどうかと思うが」

「流石です」

「国を代表するっていう、責任感なんてものは?」

「んー、無いな。所詮俺も人間だ。頼まれたからやる、頼んだ方に責任があると思ってる。こんな俺を任命したんだからな」

「やりたいって事なの」

「北部の所為で人生滅茶苦茶になった奴等の復讐をしてやりたい」

「だからそれは外交じゃなくて戦争じゃない」

「俺の気持ちは大臣には伝える。それでも任命するんならそれはアレクサ・・・アレクサンドリアの代表?」

「今回アレク3国はアレクサンドリアとして出席するという話だったと思うぞ。その代表としてベオグランデの大臣が選ばれたと」

「そうだったな」

「だからあなた疲れてるのよ」

「みんなそうさ。戦争直後なんだからな」

「・・・」

「特にシンファンの奴等には言いたい事が山ほどある」

「海亀襲撃の件だね」

「ナチュラリストですものね」

「全く同意見だ。海亀を殺して塩を得たとしても短期的なものだ。長期的に見れば我々世代だけじゃなく将来の世代にも恨まれる事になっていただろう」

「過去の過ちから何も学んでいない。ぶん殴ってやりたい」

「会議では止めて下さいね」

「ていうか出る前提なの」

「通商同盟にも利益がある。会議で今後の世界の流れがどうなるか分かるからだ」

「なるほどねぇ。商売には有利だねぇ」

「それによって同盟の商売内容も変わって来るでしょう」

「北部と南部だけじゃなく、各国間の関係も知る事が出来るだろう。同盟には有利だな」

「・・・」

「戦争に出る訳じゃない。命のリスクは低いと思うが、どうだろう」

「私は反対よ。でも出なきゃあなたは後悔するんでしょ?」

「・・・だろうなぁ。出来る事をやらずに不幸な未来を迎えてしまったら、悔やむだろうなぁ」

「・・・出ても壊れ、出なくても壊れるんなら、出た方が良いでしょうね・・・」

「ミキ姉ぇは壊れる前提じゃない。カズ兄ぃなら大丈夫だよ」

「今までもカズヒコさんはやり遂げて来ましたわ。今度も大丈夫ですよ」

「私もそう思う」

(もう・・・壊れかけてるのよ)


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