④-13-70
④-13-70
スキル練習と金稼ぎを初めて1ヶ月経たないか頃。
冒険者ギルド本館で採集などの依頼をチェックしていた。
本館の中はいつもと違って少しザワザワしていた。
そういえばこの時間にこんなに居るのも初めてかもしれない。
「なんかあったのかな?」
「さぁ?」
「カウンターにメネットさんが居るから聞いてみるか」
「そうしましょう」
「おはようございます。管理者さん」
「お、お早うございます!エタルさん、マキロンさん、マーヤさん」
「くぉら!」
「いてて、何か有ったんですか?」
「えぇ、大熊が現れて冒険者に死者が出まして・・・」
「大熊?魔物ですか?」
「はい。立ち上がれば3mを優に超す大熊でして・・・」
「「でかっ!」」
「はい・・・皆さんも気を付けてください」
「分かりました」
「あと1つありまして・・・」
「?」
「ある噂が広まってるんですよ」
「噂?どんな噂です?」
「隣の国に領都ヴィヴィエントって大きな街が有りまして。そこの有力な冒険者のグループが壊滅して結構な騒ぎになったらしいんです」
「ほ、ほー。じゃ狩りに行ってきますね」
「ちょい待ち!それで?メネットさん、それで?」
「それで、冒険者同士の争いだろうって噂なんですけど。大きな街ではよくある事なんですよ。この街のトップは俺達だ・・・みたいな」
「えぇ、あるでしょうね。それで?」
「それで、壊滅したグループっていうのがどうも殺されたんじゃなく病気で死んだっぽくて。でも病気で死んだんならニュースにならないんですけど、14人が病死って事で。疫病じゃないかーって騒ぎになったんですって」
「へー・・・14人が病気で・・・それで?」
「でね、でも病死したのがグループの冒険者だけだったの!他の冒険者や一般人には1人の死者もいなくて・・・それでね、呪いじゃないかって」
「「呪い!?」」
「えぇ。特定のグループの人しか死んでないからね」
「死んだのは病死で間違いないの?」
「えぇ。病気や毒の解析スキル持ってる人がいるから調べたらしいんだけど、間違いなく病死なんだって。呪いの痕跡も無し」
「毒でも呪いでもなく病死・・・」
「ってか呪いなんてあるのかよ」
「あんたは黙ってて!それで?」
「それでね、死因は分かったけどなんで死んだか・・・分かりづらいわね、なんで病気になったか全く分からなくて騒ぎになったって訳!」
「その騒ぎが有ったのはいつですか?」
「えーっと、1ヶ月くらい前らしいわよ。ここから結構離れてるから噂も届くのが遅いの」
「ふーん。その壊滅したグループって名前分かってるんですか?」
「えぇ!マカロンって言うらしいわ!」
「ぶふっ」
「どうしましたエタルさん?」
「いや、今日も綺麗ですねメネットさん」
「ま、まぁ。エタルさん・・・」
「それで!冒険者たちが騒いでるって訳ですか?」
「え?えぇ、そうなの。冒険者だけの病気に大熊に・・・験担ぎが多いから、冒険者は」
「なるほど。私達も気を付けますね。じゃ!」
「え?えぇ、お気を付けてー!エタルさんまたねー」
本館を出て狩りに・・・行かない。
「あれ?行かないの?」
「ちょっとお茶しましょ」
「え、なんで?」
「なんでじゃないの。分かってるでしょ?行くわよ!」
「・・・はい」
僕は無理やりお茶に行く。
店に入って席に着いた。
「説明してもらおうか!」
「えー、いきなり?」
「リオンヌさんの所に行くだけじゃなかったんですか?」
「あ、あの何が?」
「ん?そうね、サーヤは知らないわよね。えっとね・・・」
菊池君がご丁寧にもサーヤ君に説明している。
結構オーバーな表現が多いな。
「そ、それは心配しますよー!」
「でしょー!」
「毒解析スキルだってよ!」
「うるせぇ!」
「おわっ!?」
「危険を回避していこうって言ってたでしょ!?」
「でもあいつら菊池君を犯して殺そうと・・・いやもしかしたら連れ帰れって命令もしてたかもしれんな。尚許せん!ブッ殺す!」
「もう死んでますぅー!」
「そういやぁ呪いがあるってよ!あいつ等の魂呪ってやる!平穏な死後なんて送らせんぞ!」
「カズヒコさん怖いですぅ」
「もう危ない橋渡るのやめるって言って!」
「いいや言わない」
「もう!」
「守るって誓ったからな。約束は守る」
「え、と。いや・・・まぁ」
「サーヤ君も。パーティに入ったから同様に守る」
「・・・カズヒコさん」
「とりあえずパーティに害なす不届きもんはタダでは殺さん!手足潰して無抵抗の所をゾンビに食わせてやる!」
「「えー!」」
「呪いの掛け方も調べんといかんな」
ビシュッ
ボルトがゴブリンの頭に突き刺さる。
「クロスボウならあまり気にならないんですけど・・・」
「まぁ剣や棒でブッ叩くのは、気が引けるよな」
「・・・はい」
殺したゴブリンからボルトを引き抜くサーヤ君。
以前ならそれすらも忌避感があったが成長している。
解体して魔石も抜き取る。
「でもこのバックパック?すごい使い易いですね!」
「そうでしょ!オーダーメイドよ!」
「バッグの中だけじゃなく外にも色々持てるので。ボルトとか!」
「このままいけばサーヤ君も弓術を習得出来るかもしれんな」
「ホントですか!?」
そこに《魔力感知》に反応が有る。
「!?急速に接近するヤツがいる。気を付けろ。あっちからだ」
「!?はい!」
指さして方向を教える。
「ボアアアァァ!!」
「熊だな!」
「デカ!?」
「ギルドで言ってた大熊でしょうか!?」
走り込んできた大熊は威嚇か、立ち上がって大吼えを上げる。
「グアアアァァァ!」
「おおぉ、なんだ空気が震える?」
「「きゃああ!」」
大熊の右手が俺に襲い掛かる。
ブワンッ
「あっぶね!」
《見切り》でギリギリ躱せた。
躱されると思ってなかったのか大熊は威嚇で吼える。
ビシュッ
矢が大熊の背中に刺さる。
「サーヤ!撃ちなさい!」
「はっ!はい!」
大熊に何本か矢が刺さっていくが、表面に刺さってるだけで奥に届いてる様子はない。
「顔の周辺を狙ってくれ!」
「分かった!」
「はい!」
大熊は顔が狙われてるのが分かるのか手で覆ったりしている。
ザシュッ
ショートソードで切りつけるがこれも浅い。
遠距離職を狙おうとすれば俺が切りつけ、俺を襲おうとすれば遠距離職が矢を放つ。
大熊はイラついたのだろうか、立ち上がって咆哮した。
「ボアアアァァァ!」
「うおっ!?」
「「キャッ!?」」
また大熊の右手が俺に迫る。
《見切り》で躱し様に右手を斬りつける。
「グアアアァァ!」
これも浅い!
「くそ。持久戦だ!」
「「はい!」」
しかし大熊も結構な傷を負って動きが鈍っているのだろう、《見切り》易くなってきた。
そしてさっきから俺しか見ていない。
完全に俺を標的に決めたようだ。
その後で菊池君たちを狙うつもりだろう。
させんぞ。
矢が尽きるかもしれない。
俺の体力の方が確実に持たない。
持久戦って言ってもただ打つ手が無いだけで彼女達を安心させるために言ったんだよな。
致命傷を浴びせることは出来ない。
どうする?
魔法しかないか。
俺は詠唱を始める。
よし、やるぞ。
受け流して懐に飛び込み《雷撃》だ。
決心した俺は大熊の一撃を待った。
「《風刃》!」
ザシュッ
大熊の左目が裂ける。
「グウウアアァァァ!」
右手の一振りが来る。
それを受け流したが剣が折れ、飛び込もうとした時、
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《受け流し》を習得しました。
《見切り》と統合して《カウンター》となりました。
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「なっ、何?」
直後、振るった大熊の右手が外側に振り払われた。
「ぐぅ!」
右腕に爪が掠る。
しかし咄嗟に身体が動き懐に飛び込む。
「《雷撃》ぃぃぃぁぁぁ!」
バリバリバリバリバリ
5秒間程だろうか、雷が俺の目の前から大熊の顔に放たれ続けた。
その場に巨体が沈んだ。