①-07
①-07
「あんたらだと取られるねぇ~」
「どういうことです?」
「身分証が必要だな」
「今日この街に来た僕達でも取れますか?」
「農民や俺たちみたいな商売人なんかは税金納める時にそいつを見せるんだけどよ。あんたらだと、手っ取り早いのは冒険者かね」
「「冒険者!!」」
「あぁ、冒険者ギルドに行ってこの街の冒険者カードを発行してもらって、それを門番に見せりゃ~いいんだよ」
「なるほど、ありがとうございます」
「エルドさん、肉屋のパルムさんってご存じですか?」
「あぁ、知ってはいるがそんなに深い付き合いじゃ~ねーよ」
「門番のガルトさんから聞いて、奥さんが産休に入るから人を探してるって聞いたんですけど」
「あぁ、そんな話聞いたな。働きたいのか?場所を教えてやるよ」
「お願いします」
「パパただいま~!」
「お~!エルザ!お帰り!こちら今夜泊まるお客さんの・・・」
「え~と・・・カズです」
「え~と・・・ミッキーだよー」
(えっ!うそだろ!)
「ミキ!ミキで~す。よろしくね!」
「こんにちは!いらっしゃい!よろしく!」
「元気いーねー!何才かな?」
「10才だよ!おねーちゃん美人だねー」
「まぁ!ありがとー。正直な子ですねー」
「いつまでも泊まっていってね」
「はっはっは。営業トークが上手な子だ」
ごすっ(ぐはっ)
「かわいい子ですねー、看板娘ですかー」
「はっはっは。そうなんだよ!この宿はエルザでもってるんだよ!」
「食材買ってきたから今晩楽しみにしててねー」
「ありがとうー、楽しみに待ってるよ!」
「じゃーパパ荷物置いてくるね」
「おぉ頼んだよ」
「あつつ、しっかりした子ですね」
「ありがとよ。自慢の娘ってやつさ」
「今晩楽しみにしてますよ」
「おう、味はそこそこだけど量はあるから、それで勘弁してくんな」
「ところで冒険者ギルドって何処にあります?」
「名前ビックリしたぞ」
「美姫だから大丈夫でしょ」
「いや、寄せてたよね。トーンとか、裏返ってたし」
「つい・・・」
「それより今後その名前でいくか。とりあえず」
「そーですねー。どうせ転生したんだし自分の好きな名前でいきたかったんですけどねー」
「もう名乗っちゃったしなー」
「ですねー。これでいきますか」
「ちょっと損した感じあるな」
冒険者ギルドに着いた。
木造で結構新しく建った感じだ。隣に倉庫のような建物もある。
戸を開けて入ると中は結構な広さで脇に2階へ続く階段も見える。
閑散としていて冒険者は数人しか見当たらない。
受付嬢に話しかける。
「こんにちは」
「こんにちは。今日はどういったご用件でしょう」
「冒険者登録したいのでご説明頂けたらと思いまして」
「わかりました。登録には15歳以上。登録料と致しましてお一人1000エナ必要となります」
「「たかっ!」」
「お二人ですと2000エナですね。そのあと少々お時間頂きましてギルドカードをお渡しして完了となります。どうされます?」
「少々のお時間というのは?」
「犯罪歴の確認とかです。他のギルドのカードがあれば幾分速やかになりますけど」
「他のギルドのカード?」
「はい。各地の冒険者ギルドでその都度登録料をお支払い頂くことになります」
「「たっかっ!」」
「そのギルドカードに上書きされるので複数持つ必要はありませんよ」
(複数持つことも出来るわけだ)
(名前変えれますね。クヒヒ)
「どうされます?」
「少し考えますね」
「わかりました。あちらのカウンターに冒険者要項がありますのでご覧になってはいかがでしょう」
「ありがとうございます。そうさせていただきます」
「まずいぞ菊池君」
「登録すると残り6000エナ。一気に6割になりますよ!」
「危険だ。そもそも冒険者になったからって稼げるとは限らんだろう?」
「ですよね。恐らく依頼をこなしていくんでしょうけど・・・装備も整えないといけないし・・・」
「登録だけで1000エナだと装備はもっと掛かるな」
「今冒険すべきではないでしょう。まだ冒険者じゃないし」
「くっ、その通りだ。そもそも冒険者になるために来たんじゃないしな」
「身分証のためですもんね」
「でもちょっと、あそこにある依頼掲示板っての見に行かない?」
「・・・そうですね。報酬も気になります」
「どうやら掲示板は5つあるな。討伐、調査・・・」
「護衛、採集、その他・・・ですね」
「まず今僕達がやるとしたら・・・採集、その他か」
「その他は、単純に他の4つ以外って感じですね」
「それぞれランクがあるな。恐らく難易度かな?」
「ランクってその分野でのランクでしょうか」
「なるほど」
「今出来そうなのは・・・消去法ですね」
「じゃー、まずは採集からってことか。報酬はと・・・安いものもあれば高いのもあるね」
「安いのは依頼の報酬は無くて納品の代金だけみたいですね」
「う~ん、どれから手を付けていいのやら。ちょっと受付のお姉さんに聞いてくる」
「すいません」
「はい」
「初心者の冒険者の依頼って何から始めればいいんでしょう?」
「そうですね。まずは常設討伐依頼のゴブリン退治でしょうか」
「「ゴブリン!!」」
「近辺の薬草採取は取りつくされてますから森や山の奥に行かないといけませんから、ある程度魔物を倒せるだけの力が無いといけませんね」
「ですので魔犬や魔虫なんかで様子見てゴブリンで力をつけるってところでしょうか」
「普通の犬と魔犬の違いは・・・?」
「魔石があるかないかですね」
「「魔石!!」」
「因みに魔石の買取なんかは?」
「はい、してますよ。隣の建物、納品館の納品受付にお渡しください。魔石に限らず魔物の素材全般、納品を受け付けています」
(あ~、倉庫みたいな建物の)
「因みにここで初心者冒険バッグというのを販売していまして」
「「初心者冒険バッグ?」」
「はい。初心者に必要な大概なものが入っていて、1万エナです」
「そ、そうですか。また来ますね」
「はい、またのお越しを」
「確かに僕達は何を揃えればいいか分からないからバッグ買うのはありかも知れんな」
「でもまだ冒険者やると決まったわけじゃないですから今必要じゃないですよ」
「確かに!」
「何にせよ当分登録出来ないですよ」
「そうだなー。とりあえず紹介してもらった職に就いて金を貯めつつ、更に稼げる職を見つけよう」
「そうですね」
「じゃーこれからパルムさんの店まで送るよ」
人に尋ねてパルムさんの肉屋を探した。
「こんにちはー、パルムさんのお肉屋さんですか?」
「はいはい、そうですよ」
どうやらこの人が奥さんなのだろう、お腹が大きい。
「門番のガルトさんから奥さんの産休の為に働く娘を探してるって聞いたんですが」
「あらあら丁度よかったわ。じゃぁ今から面接出来るかしら?」
「はい。宜しくお願いします」
「じゃぁこちらに来てくれる?」
(終わったら宿で待ってて。俺は街壁工事当たってみる)
(分かりました)
「おっ、やってるやってる」
俺が来た街壁工事をしている現場は街の南西だった。
ここらの街壁の高さは1m~1.5mぐらいか。
「こんにちはー、責任者の方いますか?」
「おぅ、俺がここの責任者のラザールだ。何の用だ?」
「門番のガルトさんがここを紹介してくれて、ここで働きたいんです」
「あぁ、ガルトから。いいぜ。最初1ヶ月見習いで日当600エナだ」
「そっから使えるようなら800エナだ。どうする?」
(安っ!なんてこった。宿代払ったら100エナしか残らんぞ)
(しかし他に当てもないしやるしかないな)
「働かせてください」
「よし、いつから来れる?」
「明日からお願いします」
「分かった。鐘が2つ鳴る前にここに来い」
「鐘が2つですね、分かりました」