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HappyHunting♡  作者: 六郎
第18章 魚の丘、羊の谷
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「そろそろ良いか」

「「「はぁ~!疲れたぁ」」」

「お疲れ様」


森に着いて奥に進んで来た。

俺と菊池君の《魔力感知》を当てにせず森を進もうという事になってサーヤ君、マヌイ、ケセラの探索で森を進んでいたのだ。


「いざとなったら2人が言ってくれるとはいえ、やっぱ難しいね」

「森は注意する所が多過ぎて神経を擦り減らします」

「やはり斥候は大変なんだな」

「俺も《魔力感知》せずにいたから疲れたよ」

『嘘でしょ!?』

「マジで」

「何でよ!」

「俺もスキルに頼らず探索してみようと思って」

『ふざけんな!』

「ぎょっ!?」

「危険でしょ!」

「菊池君が居るから良いかなと思って・・・」

「予め言っときなさいよ!事故ったらどーすんのよ!」

「そーだよ!」

「不用心です!」

「なめてるのか!」

「ごめんなさい」

「それで、こんな奥まで来るのは?」

「実験をしようと思って」

『実験?』

「うん」

「何の実験?」

「銃だ」

「!」

「「「銃?」」」

「出来たの!?」

「いや、まぁ、出来たというか、銃というのがどんなものか3人に説明しとこうと思ってな」

「仕組みとか、威力とかって事?」

「そんなもんだ。だから人の耳に入らないように街道からかなり離れる必要が有る」

「そうね。1km離れても聞こえるらしいし」

「「「そんなに大きな音が!?」」」

「山とかの方が良いんじゃない?」

「いや。吹き降ろす風に乗って遠くまで聞こえるらしい。だから風が無い森の中が良いと思う」

「ふーん」

「《EMP》」

『お』

「良し。周囲数km内に強力な魔力反応は無い。ここらの開けた場所を探してそこで実験を行う」

『はーい』




開けた場所を見つけて準備だ。


「先ずこれが銃身となる筒だ」

「銃の形になってないわね」

「あぁ。単なる筒だ」

「「「これが銃・・・」」」

「火縄銃と同じ仕組みだ。筒に火薬を入れその後に弾を入れる。横に穴が開いてて火薬はその穴から外に通じている。外の火薬に火を点ければ、筒の中の火薬にも着火、爆発。爆発する力を利用して弾を発射、という流れだ」

「「「ふんふん」」」

「ソルトレイク河北の戦いで旗艦爆破の後に衝撃波が来たな?」

「「「うん」」」

「爆発のエネルギーが衝撃波となって遠く離れた場所まで届いたんだが」

「それを弾に乗せるって事?」

「その通りだ」

「「「ふーん」」」

「実際に見ないとイメージが難しかろうな。実験してみよう。ここに火薬がある。今から火を点ける」

「大丈夫?」

「この位ならな。いくぞ」

「「「うん」」」


シュワー


「「「おお」」」

「これが燃焼だ。しかしこれを密閉された空間で行うと爆発となる」

「どう違うの?」

「瞬間的に燃えるのが爆発だ。瞬間的に燃えた場合、燃焼によるガスと熱の発生で急激な圧力変化で高温高圧になり爆発となる」

「「「ふーん」」」

「普通、焚火とかは土を掛ければ消えるな?」

「「「うん」」」

「燃えるには空気が必要だって言ってたよね」

「マヌイ、よく覚えてるな」

「うん」

「そうだ。しかし火薬は特殊で、空気が無くても燃える。つまり密閉されてても燃えるんだ。そして密閉されていた場合、」

「爆発する」

「その通りだ」

「「「ふーん」」」

「今これだけの火薬であれだけの燃焼が起きたな?」

「「「うん」」」

「じゃぁ今度は銃の実験をする。今回使う火薬の量はこれだけだ」

「さっきより多いね。でもそんなもんって感じだけど」

「まぁな。この細い筒に入れるくらいだからこんなもんだ」

「「「ふーん」」」

「よし。じゃぁ銃を載せる台を土で作る。《土壁タイタンティース》」


グググ・・・


『おぉ』

「次に、的を設置する為に的の位置に土の壁を作る《土壁》」


グググ・・・


『でかっ!?』

「安全の為と音を拡散させる為に広く作る。そして俺達の観測用に土壁を作る」


グググ・・・


『おぉ』

「穴が開いてるわね」

「観測用に強化ガラスを入れる為だ」

『ほほー』

「銃に《罠》を設置して遠隔で撃てるようにする」

『なるほど』

「これで良し、と。じゃぁあの壁の向こうに回って実験を見るとするぞ」

『はーい』




壁の裏に回って来た。

強化ガラスを嵌めてみんなの方に向く。


「じゃぁ全員フル装備だ」

『えっ!?』

「メットとゴーグルマスク着用。サーヤ君とケセラは盾を装備しろ」

「ちょちょちょ、そんなに!?」

「たったあれだけの火薬だよ?」

「食料を燃やす時にも使いましたけど、あの時もこれ程じゃありませんでしたよ?」

「そこまでする必要が有るのか?」

「安全上、する必要が有る」

『嘘でしょ』

「各自盾の後ろから観察するように。マヌイは耳を塞いどけ」

「ちょちょちょ、もう行くの?」

「風が吹いたりして火薬が飛ぶかもしれんしな」

「わ、分かったわ。みんな、準備して」

「「「はーい」」」

「・・・よーし、準備終わったな。じゃぁ行くぞ」

『ゴクリ』

「カウントダウン開始。3,2,1・・・」


ォオーッン!!


バシバシバシ


強化ガラスに飛散した物が当たった。


『ひゃぁー!?』


俺を含めて全員が音と衝撃に身を竦めた。


バタバタバタ・・・


衝撃音が森に響き鳥たちが羽ばたいていく。


「おえっ」


俺はえずいた。


「ちょっ、えっ!?銃でしょ!?なんで爆発するの!?」

「はぁ~」

「こほっ、こほっ・・・」

「耳が、耳が・・・」

「カズヒコ、なんで爆・・・って、どうしたの!?」

「おふっ。土の感知切るの忘れてた。衝撃で気持ち悪い・・・」

「確かに凄い衝撃だったわね・・・なんであの量の火薬で・・・って、マヌイ!?大丈夫」

「ほぇー」

「マヌイも三半規管やられたな。衝撃は空気の振動だ、耳の良い獣人にはきつかったんだろう」

「サーヤも大丈夫!?」

「おほっ、はい、なんとか」

「ケセラは!?」

「耳が・・・」

「エルフだしな、前に鼓膜が破れた事も有ったし。とりあえず皆が落ち着くまで休憩しよう」

「そ、そうしましょう」




全員が腰を下ろしたり横になったりで回復に努めた。

かく言う俺も横になった。

感知系はこういう時に弱いな。


しばらく休憩した後、実験の検証に入る。

銃の場所まで戻って見下ろした。

辺りには鼻をつく臭いが微かに残っている。


「破裂してるわね・・・」

「あんなに衝撃あればそりゃぁって感じだよ・・・」

「鉄の筒が破裂って・・・凄いですね」

「全くだ。想像を絶する威力だ。これを兵器に利用する?正気か?」

「実験は成功なの?」

「成功でもあり、失敗でもある」

『?』


俺は屈んで火薬が出ていた横の穴を見た。


「ちょっと!まだ熱いわよ!」

「あぁ、触りはしない。うん、破裂してるな。圧力がここから逃げたんだろう」

「銃身もひしゃげてるわよ」

「耐えられんかったんだな」

「凄い威力だねぇ」

「的を見てみるか」


的の位置まで移動した。


「・・・全然当たってないわね。っていうか弾じゃない物が当たりまくってて弾が当たったかどうかも分からないわ」

「そりゃぁねぇ。あんだけひしゃげてたら当たらないよ」

「兵器としては失敗、という事ですか」

「その通りだ」

「成功というのは?」

「予想通り、という意味では成功という事だ」

『予想通り?』

「海亀の爆破、旗艦の自爆。どちらも燃焼ではなく爆破、つまり爆発によって起こった」

「そうね」

「旗艦の爆破にどれだけの火薬が使われたのかは分からんが、海亀の時はある程度知る事が出来たな」

「はい。その時に入手も出来ましたし」

「あぁ。その時の火薬の量を考えても、あの時の爆破規模は大き過ぎると、思ったんだ」

「そう言えば。私もバウガルディ軍の陣地を焼いた時も思ったのよね、あれだけの火薬であれだけ燃えるのかなって」

「そう言えば、そんな事言ってたねぇ」

「つまり、この規模の爆発は予想通りだったって事ですか」

「・・・正直予想以上だった」

『おい!』

「まぁ確かに。最初のあれだけの火薬が燃えたのを見て、あっ、こんなものかと思っていたからな」

「「「確かに」」」

「どういう事?予想以上だったって事は、銃の実験としては失敗って事?」

「その通りだ」

「うーん・・・実験を繰り返せば、」

「結論から言うと、今の俺の技術では銃の製造は不可能だ」

「えっ!?」

「不可能なんだよ」

「カズヒコの技術じゃぁって・・・他の人には?」

「転生人、つまり前世知識で作ろうとする銃は不可能だろうという結論だ」

「前世知識・・・」

「火薬を燃やす実験を最初にやったよな」

『うん』

「ケセラが言ったように、正直それ程の規模じゃなかっただろ」

『うん』

「だからこそ量を少ししか増やしてないのにあれだけの爆発になってビックリしてるんだけど」

「「「うんうん」」」

「ここから話す事は俺の仮説だ。絶対じゃない事は覚えておいてくれ」

『うん』

「最初に燃やした実験も、前世じゃあれだけ燃える事は無かった」

「えっ!?」

「前世じゃあんなに燃えないんだよ」

「・・・最初の実験から激しかったって事?」

「そうだ」

「何故?」

「恐らく魔力だ」

『魔力!?』

「魔力が化学反応に反応したんだと思う」

「!」

「「「?」」」

「魔力が有るから魔法が撃てる、スキルが撃てる。体も強化される。全て魔力が作用している。身体強化、何故パワーが増すのか。体内で燃料を燃焼しているからだ」

「・・・そうか。そこに魔力も反応して・・・」

「爆発的なパワーが得られる。そう考えると体内のエネルギー燃焼も化学反応だ。つまり魔力は化学反応に反応すると」

「相乗効果が生まれる」

「こいつの様に」


俺は破裂した鉄の筒を指した。


「火薬の量を減らすのは?」

「さっきのが最低限だ。あれ以上減らすと密閉性が無くなって爆発じゃなく燃焼になる。不発だ」

「・・・予想以上だったって訳か」

「あぁ」

「カズ兄ぃは今の技術では無理って言ってたけど?」

「魔導具だ。しかし魔力が関係する以上、威力はそれこそ文字通り爆発的に増える。火薬を使った銃は無理だろうと思う」

「・・・この世界で銃が無いのも」

「恐らく昔から転生してる奴は居ると思うが、銃の存在が無かったのはそういう理由だと思う」

「火薬を使わない銃が出てくると思いますか?」

「正直分からん。《剣術》スキルの《ソニックブレード》なんかは近い存在じゃないかと思うんだが。究極がファナキアのスキルだな」

『うーん』

「しかしカズヒコとミキが以前言っていた銃の利点、それは銃はそこまで訓練していない人間でも簡単に人を殺せる兵器、という事だったが」

「そうだな」

「だとしたら、スキルというのは才能だ。誰もが発現するものではない。そういう意味では銃と似たようなスキルを持つ者が居たとしても誰もが持てる訳ではないだろうから脅威は無いと思うが」

「それは、そうだな。今までの戦争でもそんなスキルは見なかったし」

「となると脅威になるのは、魔導具になるだろうな」

「そうだな」

「そう言った魔導具は・・・騎士時代にも聞いた事は無いから無いと思うが」

「魔導具の図鑑なんて無いんでしょうか」

「魔導具はダンジョンによって出るものが違うからな。ただ魔導ランプのような汎用的なアイテムは共通して出るらしいから、有ったとしたらそういった物が中心だろう」

「ふーむ。過去に出たアイテムを網羅したものは無いのかな」

「今までギルドでは見なかったわね」

「売り切れてたんじゃないの?」

「その可能性はありますよね。ダンジョン関係はお金になりますから図鑑になってたら冒険者だけじゃなく買うでしょう」

「そうだな。ダンジョンに潜ってアイテムを得ても、それが価値あるものか分からんのなら荷物になるだけだし探索の邪魔になるだろうし」

「ふーむ。オランドさん、魔術師ギルドに行って聞いてみるか、もしくは・・・」

『もしくは?』

「国の偉いさんに聞いて、有ったら売ってもらうとか」

『それだ』


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