④-12-69
④-12-69
それから数日は魔幼虫と魔犬を狩り、慣れさせていった。
そのお陰か、菊池君も《魔力感知》を習得出来た。
サーヤ君の特訓も毎日行っている。
更に数日後。
「習得出来ました!《魔力検知》と《魔力操作》を習得出来ました!」
サーヤ君が泣いて喜んでいる。
「カズヒコさんの魔力を感じたと思ったら・・・」
「よくやったサーヤ君!」
「・・・はひ。ありがとうござひます」
何年も新しいスキルを覚えることなく、Lvも上がることなく生きて来たサーヤ君にとって新しい可能性を得られて感極まったようだ。
「それを毎日自分で続けるんだ。いいね」
「はひ!」
「はっはっは。元気がいいな!」
「それにしても早くないですか?習得するの」
「うーむ。やはり魔族だからって言うのも有るかもしれんな。あと覚えさせたっていうよりも感じさせたってのも有るかもしれん」
「検知と操作だから?」
「あぁ。魔力そのものを感じさせたから・・・とか?」
「うーん」
「まぁ。検証はこれから始まったばかりだ色々考えていこう」
「そうですね」
「日記を付けていくか。魔法日記」
「そうですね。魔法図鑑を独自に作っていけば私やサーヤの今後にも役立つでしょうし」
「お、おう」
「どうせなら独自に魔物図鑑とかも作りましょうよ。どうせ世界周るんだし。そうだ、各地の特産品とかも」
「そうだな。行商人やるんなら必要だな」
「行商人になるんですか?」
「あぁ。冒険者しながらね。強くなって金も稼ぐ。凄いだろ!」
「はい!凄いです!」
「はっはっは。そうだろう、そうだろう」
「そうだ。サーヤ君にもホイッスル作っとくよ」
「ホイッスル?」
「そうだね。笛だよ。森で迷子になってもそれを吹いて知らせるんだ」
「分かりました」
「それから近々ワライマイタケを殺そうかと思ってる」
「えっ。早くないですか?まだサーヤが」
「あぁ。だがこのままただハリエット家に泊まるのも気が引ける。リオンヌさんみたいにワライマイタケで取引すればどうかと思うんだ。ハリエット商会の方も旦那さんがいなくなってこれから先どうなるかって所だろうし」
「なるほど。目玉商品をってことですね」
「あぁその通り。ただサーヤ君に合わせて当初は頻度は低めにする」
「そうしましょう。じゃぁ早速明日にでも?」
「あぁそうしよう。心配することは無いぞサーヤ君。ワライマイタケを殺すに当たって君は何もする必要はない。周りを警戒していればいいから」
「そうよ。私と一緒に居ればいいからね」
「は、はい」
「よし。そうと決まれば先ず1匹殺して確信してからブリトラさんに相談しよう」
「そうしましょう、って先ずゴブリンを背負子で持ち込まないと!」
「そ、そうだった!明日はゴブリンだ!」
翌日。
狩りに出かけようとしたらブリトラさんに呼び止められた。
「少し、お時間よろしいですか」
「分かりました。2人は部屋で待っててくれ」
ブリトラさんとテーブルに向かい合って座る。
「夫の懇意にしていた不動産屋に相談したところ、最近借りたことが分かりまして」
「・・・そうですか」
「事情を話してキャンセルさせて頂きました」
「事情を話す必要は無かったんじゃないですか」
「ある程度相談していたようでして」
「そうですか」
「結構な金額が返ってまいりまして。エタルさんのお陰です」
「いえ、お世話になっていますからお気になさらず」
「ありがとうございます。これはほんのお礼ですが」
「受け取れません」
「えっ!」
「受け取れませんね」
「た、足りませんか・・・」
「いえ。必要ありません。宿を提供していただいているので必要ありません」
「そ、その程度では・・・」
「必要ありません」
「そ、そうですか。分かりました」
「ブリトラさんにお聞きしたいのですが」
「はい、何でしょう?」
「ハリエットさんが亡くなられてこちら、商売の調子はどうですか?」
「正直以前ほどではありません。夫はあれでも有能でしたから」
「ワライマイタケをご存じですか」
「えぇ。勿論です。なかなか手に入らない高級な魔物です」
「買っていただけませんか」
「えっ」
「僕達から買っていただけませんか」
「ワライマイタケを狩ることが出来るのですか」
「可能性は高いと思ってます。他の土地でもマイタケを狩って来ましたので」
「まぁ、ではあの60万エナは?」
「その通りです」
「なるほど」
「正直僕達も冒険者です。相応の値段で買っていただきたい」
「エタルさん達はお金を。私共には持ち直す足掛かりを・・・ということですか」
「ギルドだと安いってだけですよ」
「9000エナ。で、どうでしょう。それが今の限界でして」
「捌けますか?」
「はい。希少品ですし。ご心配には及びませんわ」
「分かりました。ただ僕達はやり方がありまして」
「やり方?」
「えぇ。基本目立ちたくないので普段からそのように行動しています」
「え?」
「ただ、降りかかる火の粉を払うのに躊躇はしません」
「あぁ、なるほど」
「なるべく僕達がワライマイタケを狩ってるとバレないように協力していただきたいのです」
「承知いたしました。商員にも伝えておきます」
「よろしくお願いします」
その日、俺とサーヤ君とで2匹のゴブリンをハリエット商会に持ち帰った。
その夜。
「ちょっと先輩!」
「どうした?」
「魔法図鑑に載ってたんですけど!」
「あぁ?」
「杖を使えば威力や射程なんかが伸びるんですって!」
「なんだって!」
「そういえばお2人は杖を持っていませんね」
「まぁ。知らなかったというのもあるが。これからも持たないんじゃないか?」
「どうしてです?雷魔法の射程が伸びますよ?」
「杖持ってたら魔法使いってバレるじゃん」
「そうだわ!」
「なるほど」
「油断してる所への必殺の一撃が僕達の必勝パターンだからなー。それに杖大きいし」
「スタッフと、短いワンドっていうのも有りますね」
「バックパックに入るんなら買っても良いかな?」
「前みたいに持ち物検査されたりしたら困りません?」
「拾ったとか、売るつもりとか。誤魔化せないかな?」
「いけー・・・るー?」
「いけー・・・そう?」
「そういや、魔法使いを相手にした戦いも想定した方が良いな」
「魔物にもいるのかしら?魔法を使う奴」
「いると聞いたことが有りますね」
「なんてこったい」
「盾が要るかもですね」
「僕のスタイル的に要らないんだよなぁ」
翌日。
「ホントに何もしなかったんですけど・・・」
ワライマイタケを仕留めてサーヤ君に担がせていた。
「これで9000エナだ」
「・・・す、凄いですね」
「この後もう1匹狩るわよ!」
「・・・1万8000エナ」ゴクリ
「まぁ、毎日は狩れないからスキル上げ用の日と、お金を稼ぐ日と分けてやっていくから」
「はい!」
「ほ、ホントに狩って来られたんですね・・・」
「えぇ。納めてください」
「わ、分かりました。ありがとうございます。持ち直して見せますわ!」
「よろしくどうぞ」
それからしばらくサーヤ君の訓練と金稼ぎをバランスを見つつこなしていくことにした。




