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HappyHunting♡  作者: 六郎
第18章 魚の丘、羊の谷
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⑱-12-679


(尺度は土地ごとに違うと会話にありましたが、読み易いように変換されて表記しています)

⑱-12-679




昨夜はあれからも今後の予定を話し合い解散した。

明くる今日。

村人達は気合を入れて仕事をこなしていた。

昨夜来たのは代表者だったので、カツを入れられた後に村人全員に話して回ったという。

その甲斐も有っての気合の入れようだ。


指示は案内人と親方に任せて俺達5人は午前中を使ってある物を製作した。


「これが洗濯機ですか」


サーヤ君が確認してきた通り、これが洗濯機だ。


「そうだ。前に話した自転車を組み込んだ」

「「「自転車・・・」」」

「これを回せばこっちが回るのよ。こっちを車輪にすれば地面を走れるって訳」

「「「ほほー」」」

「この前の戦争の時に駆動部分は作ったからこれを回すというのは分かるな?」

「「「うん」」」

「なのでこれを回せば後ろに備え付けてる樽が回る・・・実演した方が早いな。菊池君」

「えぇ。よいしょっと」

「歳がバレるな」

「避けとせ避けなせ童が通る~」

「待て待て詠唱すな。今から菊池君が実演する。先ず足をこのペダルに置き、漕ぐ」


駆動部分と連動した樽は横に倒した状態で、地面を転がるような感じで回っていく。


ぐるんぐるん


「「「おお~」」」

「まぁ当然駆動部分が回る。それは戦争でも使ったから知っていると思うが、同時に後ろの樽も回ってるだろ」

「「「うん」」」

「漕げば、樽も回るんだね」

「そうだ。水車と同じだ。水車が回れば粉ひき臼が回る。原理は同じだ」

「「「ほほー」」」

「樽は縦に回るのね。前世だと大体は横回転だったけど」

「駆動部が縦回転だからな。それに簡単に連結するには縦回転が自然だろう」

「でもカズヒコさん。樽に洗濯物を入れるというのは分かりますが、それで洗えるんでしょうか?」

「普通は洗濯板を使って洗ってたよね」

「はい」

「それだと物理的な力、つまり、擦ったり叩いたりして洗ってた訳だが」

「はい」

「それだと汚れは表面的にしか落ちない」

「結構落ちてましたけど・・・」

「石鹸を使ってたからな。石鹸を使う事で汚れを落ち易くさせるんだ」

「確かに手の汚れとか髪を洗ってサッパリしてましたし、服の汚れも落ちてましたけど」

「手の汚れ、髪の汚れも脂が大部分だ。要は垢だな」

「「「でしょうね」」」

「服の汚れも臭いの原因も皮脂、つまり垢だ」

「「「ふんふん」」」

「服の汚れが落ちにくいのは脂が繊維に絡まって落ちにくくなっているからだ」

「「「ふんふん」」」

「石鹸を使う事で絡まった状態から浮かす事が出来る」

「だから落ち易いと」

「その通りだ」

「「「ふーん」」」

「つまり、擦ったりの力で落とさなくて良いから疲れないと」

「その通りだ、流石だなサーヤ君」

「えへっ」

(良い笑顔!)

「でも何で石鹸で落ち易くなるんだろ」

「皮脂は酸性、石鹸はアルカリっていう関係があってアルカリだと脂が落ち易い・・・ちょっと難しいんだが」

「でも石鹸も脂から作られてるんだよね。それで何で脂が落ちるんだろうっていう」

「お前天才だな」

「えへへ」

(良い笑顔!)

「その通り。水と油は混ざらないっていうのは知ってるな?」

「「「うん」」」

「だが石鹸は水にくっつく性格と、油にくっつく性格とがある。石鹸の油が皮脂の脂とくっついた後で水にくっつく事で服から脂が落ちる訳だ」

「「「ほほー」」」

「水と油の境界を無くし混ぜ合わせる、これを界面活性と言って石鹸は界面活性剤と言うんだ」

「「「へへー」」」

「それで擦ったりしなくても落ちるんですね」

「そうだ。ただ石鹸水を服によ~く馴染ませる必要が有る」

「それでこの樽を回して服に石鹸水を馴染ませるのよ」

「「「なるほどねー」」」

「実演してみよう。といっても普段から自作の石鹸を使った洗濯はしているから洗浄力は知っているよね。だから手作業で洗濯した洗浄力と、洗濯機を使った洗浄力を比べてみよう」

「「「はーい」」」


「先ずは洗濯物の容量に対して適度な石鹸水を用意」

「はい」

「予めつけ置きした方が良いんだが今回はパス。樽に洗濯物と石鹸水を入れ、蓋をし、自転車を漕ぐ。菊池君頼んだ」

「あいよっ!」


ぐんぐんぐん


菊池君がペダルを踏んで勢いを増すと樽も連動して回っていった。


「えっほ、えっほ、えっほ」


ジャバジャバジャバ


「えっほ、えっほ、えっほ」


ジャバジャバジャバ


「えっほ、えっほ、えっほ」


ジャバジャバジャバ


「これ、どれ位、漕ぐの?」


ジャバジャバジャバ


「10分くらい?」

「こーたーい」

「はーい」


菊池君と交代して俺が漕ぐ事になった。


「えっほ、えっほ、えっほ」


ジャバジャバジャバ


「えっほ、えっほ、えっほ」


ジャバジャバジャバ


「もう良いんじゃない?」

「よーし」

「「「もう終わり!?」」」

「洗濯物を取り出して見てみよう」


回転が止まった樽から洗濯物を取り出してみんなで輪になって中心にある洗濯物を見た。


「落ちてるな」

「凄いです!手洗いと同じくらい落ちてるのに手洗いよりも時間がかかってないです!」

「これ5人分の洗濯物だよねぇ!」

「1人分でも結構な時間がかかるのに5人分纏めて、しかも大幅に時間が短縮!?なんでもっと早く作らなかったんだ!」

「ご免なさい」

「でも前世の洗濯機ほどじゃないわね」

「それは洗剤の所為だな。合成洗剤には酵素が入ってる。酵素は垢の主成分のタンパク質を落とす力が強い。石鹸は弱い」

「十分落ちてますよ!5人分の洗濯物がこんな短時間で終わるなんて!凄いです!」

「樽に付いてるこの栓を抜いて洗濯水を出して見てみよう」


ゴボゴボゴボ


『真っ黒!』

「結構汚れてるんですね」

「5人分だからね」

「驚きの黒さだな」

「それだけ落ちたという事だよねぇ」


「後はすすいで脱水して終わりか」

「すすぎはそんなに時間かけなくて良いんじゃない?」

「5分くらいで良いか」

「じゃぁみんなで1分ずつ漕ぎましょうか」

「「「は~い」」」

「すすいだ後は絞って干すんですね」

「いや。脱水にも道具を作った、これだ」


もう一組の自転車洗濯機を用意した。


「「「「・・・さっきのとは樽が立ってるだけで他に違いが無いようだけど」」」」

「その通りだ。樽を立てただけ。洗濯樽のように横置きだと回した時に重力の関係も有って片寄が出来やすく、片寄った場合うまく脱水できない。だから洗濯機とは別に脱水機を作った」

「普通によく見る自動洗濯機みたいね」

「脱水は遠心力を利用するからな」

「樽が二重になってるね」

「中の樽は穴が開いてるだろ」

「うん」

「中の樽だけを回すと遠心力で脱水された水がその穴から飛び出て来る」

「飛散防止用に二重になってるんだね」

「その通りだ。じゃぁすすいだ後で脱水してみよう。みんなで順番に漕いでいくぞ」

「「「「おー!」」」」


洗濯物を洗濯機に入れ直し、新しい綺麗な水を入れですすぐ、

次は脱水機に片寄らないように入れて漕いでゆく。

マヌイ、サーヤ君、ケセラは初めて自転車を漕ぐので最初はぎこちなかったが、冒険者として生活して来たので直ぐに要領を掴んで、初めてやる動作でもあったので少し興奮しつつ漕いでいた。

若者には新しい刺激というのは重要なのだろう。


シュバババババ


「「「「回るのはっや!」」」」

「遠心力は回転半径と回転の速さが関係している。樽は取り回しの関係上、これ以上大きく出来ないから速くするしかない」


5人で合計5分ほど漕ぐのをすすぎと脱水とで2回、計10分ほどで脱水まで終了した。

確認の為に樽から洗濯物を取り出してみるが手触りが既に良い感じだ。


「良いんじゃないか?」

「手で絞ってた時より乾いてるわね」

「いや、もうビショビショって感触じゃないんだけど!」

「本当です。湿ってると言った方が良いかもしれません」

「回しただけなのに・・・」

「前世でも脱水は回してたもんね。仕組みは同じか」

「電気で回すか、人力で回すか。まぁ疲れはするがこの仕上がりなら納得じゃないかな」

「うーん」

「どうした」

「これ、売れるんじゃない?」

「洗濯機か?」

「えぇ」

「絶対売れるよ!」

「絶対売れます!」

「絶対売れるぞ!時間も労力も断然違う。それに石鹸付けて洗っていると手が乾燥してくる。冬になればひび割れて痛い。冬場の洗濯なぞ好きな者は居ないだろう。これからの季節絶対売れる」

「う~ん」

「どうしたの?」

「転生者ってバレないか?」

「・・・う~ん」

「なんか、魔導具使って「スパン」って感じで綺麗になったら疑われないだろうと思うんだけど」

「原理はモロ洗濯機だもんね。自転車も付いてるし」

「でも。これが有ればみんな、特に女性は助かるよ」

「そうですよ。洗濯は長時間且つ重労働で、ケセラも言いましたが冬だと特に厳しい仕事です」

「こんなに簡単に短時間で終わればその分他の仕事も出来る。空いた時間で賃金を得る仕事が出来たなら収入もアップする。庶民にはうれしい物だろう」

「まぁ・・・昔は三種の神器って言われてたらしいしな」

「何か似たような物から発想を得たって事で逃げれないかしら」

「ん~。風車や水車は有るみたいだし、そこから着想を得た、線はいけるか?」

「実際川に行って水車を考えてる時に洗濯機の話になったんだし、いけるんじゃない?」

「いけるよ!作ろうよ!世の女性の為に!」

「仕事を奪ったりしないかな。洗濯女とか、低賃金でやってそうだけど。低賃金とは言えそれが重要な所得になっている世帯もあるだろうし。その人達の仕事を奪ったりしないか?」

「・・・確かに娼館でも洗濯は対価を払ってやっていました」

『う~ん』

「まぁ、作ってみるか」

「良いの?」

「自転車だと不味いから手回しで樽を回すように改造して作ってみる。それを村で実演して案内人や職人や村人に見てもらって反応を見る。特に案内人はタリルコルさんの下で働いてるやり手だから仕事を奪う云々は判断してくれるんじゃないかな」

「「「「それで行こう!」」」」

「じゃぁ、作ってみるか」


既に自転車駆動の洗濯機を作っていたので、それを除いた手回しの洗濯機を作るのはそれほど時間がかからなかった。


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