④-10-67
④-10-67
翌日。
ハリエット家は忙しくしていた中申し訳ないが3人1部屋にしてもらった。
明日、葬式らしい。
準備を手伝えることも無いだろうし僕達はサーヤと菊池君の装備を買いに出かけた。
やはりヴィヴィエントほどの品揃えは望むべくもなくサーヤには1番良い革鎧を買った。セクシーではない。
「力のステータス適性が僕よりも高いから革鎧でも良いと思うんだよね」
「そうですね。”INT”が高くて他は平均的ですし、《頑健》君も有るし私達より力は強いんじゃないですか?」
「今までがあまりな生活だったからステータスは伸ばせていないかもしれないが、これから経験値を積み重ねれば僕らを抜くかもね」
「ほ、ホントですか?がんばります!」
「うん。がんばって!」
武器屋で弓は試射をさせてもらえたので菊池君の《弓術》スキルがどんな具合か確かめていた。
やはり初めてだったからか手間取ることはあったが何度か試射するうちに慣れたようで問題ない様子だった。
ただやはりクロスボウより扱いは難しく、的に当たりはするが狙ったところには難しい。
当分はサーヤの魔物慣れと菊池君の弓慣れに勤しむことにしよう。
装備選びに時間をかけたので遅めの昼食を取った。
「おっ、美味しいです!」
「そ、そうか。良く味わって食べるんだぞ」
「は、はひ!」
口いっぱい頬張りながら食べるサーヤ。
今までが偲ばれるな。これからは美味しい物を食べよう。
その後は冒険者登録を3人でした。
エタル、マキロン、マーヤで登録した。
管理者とムヒをおちょくりたかったが時間が合わなかったんだろう居なかった。
魔物図鑑で周辺の魔物を調べる。
「この辺はワライマイタケってのがいるみたいです」
「ん~。陽気な魔物を想像するが殺し合いではシュールだな」
「そうですね」
「マーヤはワライマイタケって知ってる?」
「いえ、すいません」
「マーヤ。いちいち謝らないでいいぞ、っていうか謝るな」
「そうよ」
「君はもう奴隷じゃないんだ。いちいち気を使わなくていい。直ぐには無理だろうがこれも慣れるように。いいね」
「は、はい」
「戦いで気を使ってたりしたら死ぬわよ」
「は、はい」
「良し。ワライマイタケをメインにいつものルーティーンだな」
「そうですね。納品館で値段調べましょう」
「サ、マーヤは魔幼虫で慣れ始め、マキロンは同じく魔幼虫でスキル取得だな」
「そっか。魔幼虫だ!」
納品館で買い取り額を調べると7000エナだった。
「すごいです!7000エナも!」
「あぁ。今までは1匹だけだったが、これからはマーヤが居るからな。更に倍の14000エナだ。どうだ!」
「すごーい!すごいです!」
「はっはっは」
その後背負子や使ったポーションの補充をしてその日は帰った。
次の日の葬儀に僕達も出席してくれと言われた。
葬式用の服など要らないという。
貴族以上くらいから着るのだそうだ。
「教会らしいね」
「教会か~」
「お2人は教会へ行ったことないんですか?」
「あぁ。神は・・・精霊信仰ってところかな」
「そうですね」
「精霊信仰なんですね」
「サーヤ君はどうなんだい?」
「神は信じてないですね。助けてくれませんでしたし」
「・・・そうだな」
「因みに宗教ってどんな感じなの?一神教?」
「一神教は北部に多いって聞きました。昔奴隷王が一神教と戦って色んな宗教を認めたって」
「「ぶっ」」
「また奴隷王か、様々な因習と戦ってるな。親近感を覚える」
「じゃぁ南部は宗教の自由があるの?」
「はい。奴隷仲間も色んな神様を信じてましたね」
「互いの宗教への寛容さが平和に繋がるのだろう。そう考えると更に北部への忌避感が増すな」
「宗教は特にそうですね。唯一の神を信じてるんじゃなくて、唯一の神しか信じない。怖いわ」
「そら選民思想になるわな」
「でも一神教だからって強要してる訳じゃないかもしれませんよ?」
「政治は排他的だが宗教は他の宗教に寛容って?ないない。文化的な下地が排他的だから政治もそうなるんだよ」
「一神教が怖いんじゃなく他の宗教を認めないのが怖いんですよね」
「気にはなるが」
「行ってみれば分かりますけど・・・」
「行きたくねーな。北部出身者に会ってみれば良いかもよ」
「お。先ずはそうしましょう」
葬式は鐘3つを合図に始まった。
教会の中で神父が死者を送る言葉を詠み魂の安寧を願う。
シンボルは、長さが等しい十字架とその交差点を中心に45度傾けた一回り小さな十字架。
そしてその小さな十字架の外円。
参列者もそのクロスを各々持っているようだ。
それを手に神父の祈りに自身の祈りを合わせる。
教会での行事が終わり外に出る。
この世界では火葬にし同じ所に埋葬する。共同埋葬だそうだ。
埋葬と言っても土の中ではなく教会の敷地内の建物の中に死者目録を納める。
街の中を有効に活用するためだという。
灰は自由にしていいらしい。
持ち帰っても良いし。街の外に撒いても。
今回ハリエットさんは遺体がないせいで火葬には出来なかったが、遺体が有る場合事前に火葬にするそうだ。
納棺が終わったところで解散となった。
ハリエット邸に帰りながらサーヤ君に聞く。
「なんで火葬にするんだい?」
「ゾンビになるからです」
「「やっぱりか!」」
「そんな直ぐゾンビになるの?」
「いえ。ゾンビは上位アンデッドの死霊魔法で生み出されるって聞きました」
「死霊魔法!?魔法は8種類しかないんじゃないの?」
「人間に扱えるのは8種類らしいです」
「なるほど」
「ヴィヴィエントのお姉さんも転移魔法とか言ってたじゃない」
「確かにな」
「あと自然発生するとか」
「ゾンビが自然発生?なにそれ恐い!」
「ってかゾンビが居るのかよ・・・」
「・・・先輩。顔が笑ってますよ」
「ふふ、何をバカな」
「ゾンビの世界を妄想してた男が、妄想が現実になったらこんな顔するんだろうなって顔してましたよ!」
「サーヤ君!ゾンビは頭を潰せば死ぬ・・・死ぬ?まぁいい。死ぬ、そうだね?」
「は、はい。頭を潰せば動かなくなるって聞きました」
「よーしよし」
「わっるい顔してるわ~」
「ゴーストはいるん・・・だよね」
「はい。います」
「それはやだなー」
「幽霊は・・・駄目ですね」
「因みにどうやって倒すの?」
「ゴーストは魔力体って言われてまして」
「「魔力体?」」
「はい。魔力で体が出来てて、なので魔法で倒せるって聞きました」
「なるほどー。じゃぁ僕達は大丈夫か。他の方法は?」
「魔力を込めた魔水っていうのを掛けるらしいです」
「魔水?そう言えばそんな物どっかで見たような・・・」
「魔術師ギルドで見たような・・・」
「そうか、それだ。他には?」
「魔法の武器で倒せるそうです」
「マジックアイテムか」
「普通の武器は効かないそうです」
「やはり・・・」
「今日はこれからどうします?」
「魔虫と魔犬、出来たらゴブリンを狩りに行こう」
「この時間だとそんなに狩れませんよ」
「サーヤ君が初めてだからそんなもんでいいだろう」
「それもそうですね。サーヤ!初陣よ!」
「は、はい!がんばります!」
「先ずは色んな事に慣れることから始めよう」
その日、サーヤ君の様子を見てゴブリンは止めておいた。