④-09-66
④-09-66
「あ、あの聞きたいことが」
「何だい?」
「エタル・・・カズヒコさんは2つしかスキルないんですか?」
「あ、あぁ。違うよ、僕のスキルで隠してるんだ・・・これが僕の全部のスキルだ」
「えっ!えぇ!10個!?」
「あ、あぁ。10個・・・うん」
「凄いです!10個なんて!」
「いやこの年で10個有ってもね」
「そうなんですか?」
「成長が限られてしまうのよ。パン屋さんとか肉屋さんとか、もう無理」
「ぐすっ」
「先輩。私のも」
「あ、あぁ」
「えっ!?ミキさんも6個も?」
「でも多分冒険者ならこの数は普通らしいわよ」
「そ、そうなんですか」
「はっはっは。悲観しなくていいよ、僕達が教えてあげるから」
「教える・・・」
「そうだ。職人たちは弟子に教えたりしてスキルを覚えさせるらしい」
「そうなんですね!」
「あぁ。だからこれから覚えられるから大丈夫だ」
「はい!」
「えっ!?2人とも魔法を使えるんですか?」
「あぁ。だから2人でやってこれたんだよ」
「そうですね。魔法はやっぱり強いわ」
「魔法使いかぁ~、憧れます」
「分かるわ。これで冒険者やる決心がついたし」
「やっぱり強いんですか」
「強いわ。で、先輩が至近距離、私が遠距離だから補い合ってるのよ」
「へー」
「サーヤ君も魔法使えそうな気はするけどね」
「えっ!」
「他の子とは違う感じを受けるんだよな・・・」
「他の子と違う?」
「あ、あの・・・」
「ん?」
「実は・・・」
「どうした?」
「私・・・魔族なんです」
「「・・・まぞく?」」
「まぞくって何?」
「えっ、魔族。魔の一族です」
「魔族!?マジかよ!」
「・・・はい」
「んで魔族って何?」
「えっ」
「エルフとかドワーフとか獣人とか・・・そんな種族的なもの?」
「あ、いえ。ヒト族です。ただ他より魔力が多くて・・・」
「なるほど!それでか」
「それでかって?」
「初めて会った時からこの子だけ魔力がズバ抜けて大きかったんだよ。今でも僕達より大きい」
「マジで!?」
「今まで会った中で1番かな。2番はギルモ・ドゥ=ラ・マージオに居たお姉さん」
「へー。あの人が」
「あの・・・お2人は魔族を知らない?」
「あぁ。っていうかすっごい田舎にいたから世の中の事何も知らないんだ。そうだ、スキルは僕らが教えるから君は一般常識を教えてくれよ」
「そうですね。そうしましょう」
「じゃぁ、魔族から教えてくれ」
「あ、はい。魔族は他よりも魔力が大きくて。大昔に戦争を起こして以来人間の敵って事で蔑まれてる種族です」
「「ブー!」」
「いきなり重いの来たな」
「ヘヴィーでしたね」
「大昔に戦争を起こした?」
「はい。人魔大戦って言うらしくて」
「人魔大戦・・・」
「エルフやドワーフや獣人、ヒトは勿論あらゆる人間を巻き込んで」
「それは普通の戦争と違うの?」
「魔族が魔力に飽かしてこの世界の覇権を狙ったって言われてます。魔族の国が全ての人間を相手に起こしたって」
「壮大だな。いつの時代の話?奴隷戦争より前?」
「何百年も前って聞いてます」
「はっ?何百年も前?そんな前の事でまだ蔑まれてるの?」
「・・・はい」
「なーんだ。くっだらない」
「・・・お2人は嫌いになりませんか?」
「「え?」」
「魔族って知っても。私の事嫌いになりませんか?」
(菊池君。これは思ったより重いぞ)
(ですね。恐らく蔑まれて生きて来たんでしょう。ヘヴィーです)
(これは僕らがカバ・・・カヴァーしないと)
(そうですね。サーヤは仲間ですから!)
「君が今までどんな生活を送ってきたのかは知らない。僕達が出来るのはこれから君がどうやって生きていくかだ。過去なんて変えられないんだ、まして君が罪を犯した訳じゃない。魔族っていうのを気にしないで欲しい、僕らも気にしない」
「ただ対外的に魔族って言うのは隠した方が良さそうね」
「そうだな。君の《吸精》は固有スキルだろう?」
「はい」
「恐らく種族固有のスキルなんではなかろうか。君の・・・ヒト族の奴隷仲間とかに同じスキル持ってる子はいたかな?」
「いえ。いませんでした」
「小さい頃は魔族の家族が居たんだよね?」
「はい」
「《吸精》持ってる人は居たかな?」
「知りません」
「まぁ、そうだよな」
「10才くらいだもんね、攫われたの」
「はい」
「じゃぁ、《吸精》は《隠蔽》した方がいいな。今後の為に」
「隠蔽?」
「あぁ、こうするんだ」
「あ!私の《吸精》が薄くなりました」
「そうよ。他の人にステータス見られても《吸精》は表示されないわ」
「これが《隠蔽》スキル・・・」
「あぁ。これで《吸精》から魔族って線は辿れないだろう。他に君が魔族って分かるような特徴はあるかい?」
「角が有るとか」
「い、いえ。外見的なものはなにも。魔力が大きいっていうだけで」
「じゃあ何で魔族ってわざわざ言うんだろ」
「少数民族、的な?部族、的な?」
「なるほどな」
「まー見た目で分からないんなら大丈夫では?」
「そうか。じゃぁ取り敢えずは安心だな」
「ありがとうございます!」
「じゃぁ一般常識は追々教えてもらうとして、当面の問題は3人パーティでの戦闘の確立だな」
「そうですね。先輩は盾、私は遠距離。サーヤの立ち位置を決めないと」
「そうだね。サーヤ君は何か使いたい武器とかあるかい?」
「あの・・・棒とか」
「・・・なるほど。それで目覚めたんだったな。んー」
「いきなり接近戦は難しいんじゃない?」
「・・・やっぱり」
「あぁ。僕もそう思う。サーヤ君は当面荷物持ちだな」
「荷物持ち・・・」
「あぁ。先ずは魔物に慣れること。これに集中した方が良い。いざ武器を持っても振るえなかったら逆に危ない。魔物に対しても恐れるのは良いが逃げては駄目だ」
「はい」
「勿論逃げなきゃいけないこともあるけどね」
「生き残るのが優先だからな」
「はい」
「これで君・・・をー!」
「どっ、どうしたんですか?」
「今までマイタケ1人で運んでたじゃん」
「えぇ」
「これから2人で運べるんじゃね?」
「・・・おー!」
「え、え?」
「《頑健》《病気耐性》のスキルレベルが僕らの中では1番高い君がパーティで1番貢献できることは何か。それは荷物持ちだ」
「・・・はい」
「不服かな」
「い、いえ・・・不甲斐ないなって」
「マイタケを知ってるかい?」
「はい。高級キノコです」
「僕達はそれを狩って財を成したんだ」
「60万エナ!?」
「そうだ。マイタケ成金だ」
「マイタケを燃やして灯りの代わりにして靴を探したりね」
「今まで1体しか納品出来なかったがサーヤ君がいれば2倍の納品が可能になる!」
「つまりサーヤがいれば収入が2倍よ!」
「ホントですか!」
「あぁ。強くなるのは急には無理だ、時間を掛けないと。しかしサーヤ君がいるだけで収入は2倍になる!どうだ凄いだろう?」
「はい!私がんばります!」
「サーヤ君にクロスボウを持たせるのはどうだろう?」
「私の?」
「あぁ。菊池君は弓術があるから弓も使えるんじゃないかな」
「なるほど。確かに荷物持つだけじゃ勿体ないですもんね」
「あぁ。クロスボウなら背中に荷物があっても大丈夫だろう」
「じゃぁ、明日にでも弓を買いに行きましょうか。あとサーヤの装備も」
「そうだな。良いのを買おう」
「え、いえ。そんな・・・」
「僕達の装備見たかい?」
「はい。蛇みたいな・・・」
「そう。あれ100万以上するんだよ」
「え-!?100万?」
「そうだ。良い装備が生き残る確率を上げる。冒険者は装備に金を掛ける。分かったかい」
「はい!」
「この街じゃ僕らくらいの装備はないだろうけど良いのを買うぞ」
「ありがとうございます」
「スタイルの良い君に似合うセクシーなヤツを買おうぜ!」
「オラァ!」