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HappyHunting♡  作者: 六郎
第17章 虹の根元 (ウォーカー、ハンナ、ローラ、ヤヤ、セルラ)
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俺はミキ達の下に戻った。


「・・・ウォーカー」


ミキの顔色が悪い。


「まぁ、殿軍の士官はあんなものだ。気にする必要は無い。しかし情報は得られなかったな」

「副官、俺達はここまでにしたいと思ってます」

「ん?何故だ。追撃戦はこれからだぞ、これからが1番戦果を得られるのだ」

「メンバーの調子が良くないのでね。戦争続きで負担が、泳いで疲労も有りますし。それに・・・」


と、俺は目線を向けた。

向けた先は捕虜をリンチしている兵士達が居る。


「ふむ。お前達は北部に復讐のため参戦していると聞いていたが」

「戦争に勝って復讐は出来ました。しかし実際に戦ってみると精神的に”くる”ものがありまして、特に女には、ね」

「ふむ。手柄は良いのか。金は必要だろう」

「幸せの為には必要ですが不幸になってまでとは思いません」

「・・・ふむ。良いだろう。これからは抵抗はほぼ無いだろうし奇襲も必要無いだろう。お前達は青将軍の任務も果たした事だし今回もこれで任務を果たしたと見做そう」

「有難う御座います」

「隊長と話して今日はここで夜を明かす事になった。お前達も野営の準備を手伝ってくれ」

「分かりました」

「よーし皆!仕事に取り掛かれ!」




「ご免なさい、カズヒコ」


俺達は焚火を囲んでいた。

簡易な組み立て椅子に腰を降ろし火にかけた鍋を見ていた。


「気にするな、お互い様だ」

「折角戦争に参加したのに見返りの報酬が・・・」

「先ず勝って生き残る事が出来た。戦争の経験も積めた。まぁやはり、前世世界から来た俺達2人には戦争は酷だったという事だ。それを体感出来たのは・・・良かったと思いたい。トラウマになったが、前にも言ったがこの世界では戦争リスクが高い、非常にな。今後の為にもデカい戦争を経験出来たのは良かったと思い込む事にしよう。そうしなきゃやってられん」

「・・・えぇ」

「先祖の恨みや復讐の為に攻めて来るって言ってたけど」

「私達と同じね」

「同じ理由で戦争しているという事だな」

「どうだろうな」

「「「「ん?」」」」

「貴族連中さ。あいつ等が恨みや復讐の為に戦争を起こすかね」

「あたし達も復讐で参加してんじゃん」

「ベルバキア公国の事を思いだせ。奴隷売買契約でベドルバクラ王国と繋がってたろ」

「経済的理由で?」

「北部の国民、つまり平民が「南部に攻め込めー!復讐させろー!」って盛り上がった訳じゃないだろう?」

「そういう話は聞かんな。もし国民の多くがそういう機運なら諜報で引っ掛かっただろうし」

「貴族が起こして国民が乗っかったってこと?」

「普通の人って、普段は何事も無い日常を送りたいって人達が大半だと思うんだよ。俺達みたいにハイリスクな冒険者になりたいと思っても、じゃぁ実際に冒険者になるかっていったら、色々理由考えて止めると思うんだよな」

「・・・前世と同じって事?憧れや夢の為に会社辞めてまでは、って」

「こっちの世界でも冒険は物語になったりして夢やロマン溢れるものだ。しかし実際の所、冒険者は害獣駆除業者。古代の遺跡やそれこそダンジョンに・・・ケセラ、この世界のダンジョンって夢やロマン有るの?」

「一攫千金を狙うと言うのなら、有る。エナ通貨や高い能力のマジックアイテムはダンジョンでしか得られないからな。収納袋は人の手で作る事など出来ない。だからこそ高額になる」

「その為に命を懸けて、か。しかし実際の所冒険者はみんなの憧れなのかと言ったら全く違う。逆に怪しい目で見られる事の方が多い。何故だ」

「夢やロマンじゃなくお金の為だからでしょ」

「雇い主を裏切って殺したりしますし」

「強奪する為に同僚を殺そうとしたりな」

「暴力団って見られてるのね」

「ベルバキアの冒険者ギルドマスターも言ってたな、社会に適応できない奴等の受け皿でもあると」

「言ってたね。街の人に迷惑をかけるより魔物を狩らせようって」

「だろ。だから冒険者は・・・何の話をしてたんだっけ?」

「「「う~ん」」」

「貴族が戦争を起こしてるって言ったんでしょ」

「そうそう。だから俺達みたいな冒険者になるより普通の職に就いて働いてる人が大半だと思うのよ」

「街の人の大半はそういう人達だからね」

「だからそういう人達が戦争を起こそうとはあまり思わないって事ですね」

「でもそういう人達が復讐の為に戦争に参加してるんでしょ?」

「切っ掛けだと思うんだよ。貴族達が「戦争するぞー」って言って徴集するじゃない、」

「でも志願兵も居るでしょ」

「だから切っ掛けなのよ。普段は普通の生活してて、戦争するんなら参加するかーって集まるんだと思うのよ。略奪や女、先祖の復讐、全部叶うわけじゃん?」

「「「「まぁね」」」」

「自分達で国を動かして戦争しよーって訳じゃなく、国が戦争しよーって言うから戦争に参加した、ってのが大半だと思うんだけどね」

「それはそうなんだろうけど、だったらやっぱり根本的に復讐心があるから戦争に参加するんでしょ」

「しかし切っ掛けが無ければ戦争には参加しないんじゃないか?貴族を無視して自分達だけで戦争しようってなんないだろ。戦争が無い時はその復讐心は奴隷に向かうんだろうが」

「復讐心を無くす事を考えるんじゃなく、戦争を起こさない事を考えるべきだと?」

「そんな大それたことは俺達で考える事じゃないだろ。第一俺達の復讐を忘れろって言うのか?」

「・・・」

「俺達が復讐の為に戦争に参加したんならあいつ等が復讐の為に参加するのも許容しないと。ミキ、お前、俺達が正義だと思って戦ってたのか?」

「・・・いえ」

「・・・俺達2人は転生者だ。何故俺達が転生してきたのか、それは分からない。しかしもし神という存在が居るとしてその神に俺達が選ばれて・・・お前はそう思ってんじゃないだろうな、俺達は神に選ばれたと」

「そうは・・・思っては、ないけど・・・」

「カズ兄ぃは思ってないの?」

「思ってる訳ないだろ」

「でも普通の人と違いますわ」

「偶々だ。偶々今まで上手く行っただけで、俺が計算してそうなった訳じゃない」

「それが選ばれたという訳では?見えざる力によって導かれたと」

「運が良かった、それだけだ、俺がそう思ってるって事が重要だろ」

「・・・えぇ」

「俺達のスキルがLv8や統合スキルになっても超人的な強さになった訳じゃない。人類最強と言われた16世も毒で死んだ。少し強くなっただけで人間離れした訳じゃない。あの16世ですら殺されるんだ、俺達は運が良かっただけだ。しかしその運を引き寄せたのは俺達が苦労を重ね必死に生き抜いて来たからだ。最初は冒険者から始めて魔物を狩り、戦争に参加するようになって対人戦闘も経験を積んだ。知識だけで知っているよりも実体験した事で体に染みついたんだ、生き残る術をな。しかしその結果精神的にやられてしまったのは・・・ある意味予想された事だったがやはり大きな問題だ」

「・・・えぇ」

「でも知らないでいたんじゃこの先の冒険者人生は厳しかったんじゃない?」

「私もそう思います。トラウマを抱えはしましたけど知らないで殺されるよりは良かったと、思いたいです」

「ストレスの無い人生などありはしない。ならストレスを抱え込んでも強くなる方が家族の安全の為になると信じたい」

「俺達は家族だ、家族で支え合ってこの先生きてゆく。俺も過去何度も死にかけたがお前等が助けてくれた。お前がお前である限りこの先も人権について悩んでゆくだろうがそれで良い。それがお前の個性だからな。しかしそれで家族が犠牲になるのだけはあってはならない」

「・・・分かってるわ」

「それと、神に選ばれたとか思うなよ」

「分かってるわよ」

「神に選ばれたから神を信じる、そういう奴等が権力を持って戦争を起こしたんだ、聖戦とか言ってな」

「リィ=イン教国の奴等ですね。神を信じているくせに神を騙って己の欲望のはけ口を女に向けた」

「俺は正義なんて信じていない。正義か悪か、2つに1つなんてあるわけない。そんな簡単じゃないからこそ何時までたっても戦争は無くならないんだ、前世今世変わらずな」

「じゃぁあたし達の復讐は意味が無いって事?正義なんて無いんだったらやる意味は無いの?」

「何言ってる、簡単、いや、単純な事だ」

「何?」

「やられたらやり返す、それだけだ。正義とか建前とか体裁とかそんな余計なものは必要無い、ただ単純に自分の本能に従って行動するだけだ。つまり敵をぶちのめす」

「ニャア」

「出来上がったようだ。先ず食べよう。食べて生き残った幸せを噛みしめようぜ」




翌未明に追撃軍は出発した。

俺達は駐屯地に残って防衛の任に就いた。

彼等が帰って来るまでの役目らしい。

決戦で勝っての追撃戦で大体の奴等が追撃軍に参加したので残って防衛するのは負傷兵かやる気が無いか命令されて仕方なく残った奴等か。

そんな理由も有って俺達は頼りにされた。


その日から捕虜の後送が始まった。

2日後には駐屯地指揮官に後を託した副官も捕虜を引き連れ本陣に帰って行った。




「無事の帰還、ご苦労」

「ファナキア様も少し顔色が良くなりましたか」

「サウナに入ったからかしら」

「そう言えば見慣れぬ宿舎だと思いましたが、あれが」

「兵士用の大人数で入れるものと幹部用の2種類を作ったわ。男女は時間帯で別々にしてあるの」

「では私も報告後にでも入ってみますか」

「えぇ、そうして頂戴。では聞きましょうか」

「は。奇襲の成功で人的被害を抑えて追撃初日は成功、その後の追撃も順調との事です」

「奇襲の結果から聞きましょうか」

「結論から申しますと、奴で間違い無いと思います」

「ふむ。海亀襲撃の成功は奴等5人だけで成し得た?」

「はい、可能だと」

「ふむ。エリート部隊50人をねぇ」

「奴等の戦闘力はそれ程とは思いませんでした。直接戦闘してはおりませんでしたがしかし心理戦に重きを置いた戦い方でした」

「ふむ。海亀でも《罠》を使っての心理戦だったわ。しかし最後は直接の戦闘だったけど」

「海亀では奴等5人しか居なかったからでしょう。今回は奇襲部隊が居ましたので直接戦わない作戦にしたものと」

「まぁ、なるべく楽な方にって感じではあったわね」

「直接戦わなかったとは言え、弓の扱いは抜群でした」

「ほぉ。海亀でもそうだったらしいから。そう」

「藪に隠れていた者を射殺しています」

「《察知》系、しかもかなりの」

「自分達が有利になるよりも敵が不利になる方を優先して力業は避けておりました」

「決戦に負け士気は最悪、しかし死兵で窮鼠状態。決戦に勝って浮ついた兵なら噛みつかれる恐れも有った、そういう事かしら」

「と言うか、そもそも被害が出るのを恐れている節も」

「・・・彼の言動は挑発も多く馴れ馴れしさもあり、かと言って不当な扱いには断固として許さない気概があった」

「奴の他は4人共女。普段から被害を抑える方針ではなかろうかと」

「普通の冒険者なら冒険者になったのだからある程度のリスクは承知の上でリターンを望むもの」

「金を稼げる追撃戦も金じゃなくメンバーの体調を優先し止めました」

「家族を優先、か」

「狩人だとも言っておりました」

「ふむ。普段は魔物の駆除を主に、戦争で復讐の為に参戦した、か」

「報告ではソルスキア、ルンバキア、ベオグランデで参戦しておりますな」

「諜報員、というよりも渡りで各地の情報を収集しているだけ、なのかしら」

「輜重隊の護衛を望むというのも、それなら分かります」

「復讐の為に参加はするが、自分達が傷付くリスクよりも戦争に参加して勝つ、その達成感で復讐心を満たしていた」

「しかし海亀襲撃事件を察知して間に合わないと見るや、自分達で解決しようと奮戦」

「傷付く事は恐れど北部に負ける事は許さない。ふ~む」

「7色目には宜しいのでは?」

「・・・」


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