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HappyHunting♡  作者: 六郎
第17章 虹の根元 (ウォーカー、ハンナ、ローラ、ヤヤ、セルラ)
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奴等を回り込むように進んだ。

奴等はあまり動いていない。

しかしこちらに対するように配置移動はしている。

恐らく《罠》がある事が無理矢理連れて来た士気の低い奴等を戦わせるには都合が良いのだろう。

窮鼠、って奴だ。


「ここらで良いでしょう」

「攻撃開始するか」

「いえ、まだです」

「しかし本隊は既に駐屯地に攻めているぞ」

「敵本隊の注意も本隊に向いている、だから奇襲すれば上手く行く。奇襲自体を成功させなければ意味は無い」

「巧遅ではないか」

「間に合えば良いんでしょう。死兵と戦って無駄に犠牲を出す必要も無い」

「ふむ」

「俺達5人で仕掛けます」

「我々4人も付いて行こう」

「分かりました」




奇襲部隊本体から9人離れて敵に近付く。

木の幹の裏で作戦会議だ。


「俺とハンナで敵を射る。クロスボウだ。俺にはローラが付け。クロスボウの装填は任せる。ハンナには2人が付いて同じく装填だ」

「「「「了解」」」」

「・・・ここから位置が分かるのか」

「狩人なんでね」

「いや、狩人だとしても・・・」

「いや。狩りですよ」

「・・・」

「2人を同時に狙う。ハンナは俺が撃ったら撃て」

「分かったわ」

「良し、行くぞ」


木の陰から身を乗り出しクロスボウを構える。

狙うは藪に身を潜めて尚且つ集団の後方に居る奴だ。


ドシュッ

ドシュッ


時間差で2発が藪に撃ち込まれた。


《・・・》


声を殺して動揺している様子が視える。


「どうだ?」

「成功です。ハンナ、場所を変えるぞ」

「了解」

「私には分からんが・・・」




場所を変えて装填されたクロスボウをサーヤから受け取り、違う藪にまた2発撃ちこんだ。

暫くすると、


〈もう嫌だー!〉


向こうから叫び声が聞こえた。

しかし、


ドスッ


〈はぅ〉


音は無くなった。


「どうしたのだ」

「頃合いだな。次撃ち込んだら突撃しましょう」

「む。分かった。合図は私で良いか」

「えぇ。俺達はまた場所を変えます」

「うむ。お前が撃ったら号令する」

「ハンナ、行くぞ」

「分かった」




更に2発撃ち込んだ。


《・・・》

〈うっ、うおおおー!〉


「来るぞ!」

「突撃!」

『うおおおー!』

「ハンナ!俺達は後方の奴を狙う!」

「クロスボウで!?」

「そうだ!」

「分かったわ!」

「回り込む!付いて来い!」

「何処へ行く!?」

「副官!あんたは部隊の指揮を!」

「むう!皆の者迎え撃て!」


俺達5人は隊を離れ敵のサイドに回り込む動きだ。

味方は突撃して来た敵と戦闘になっていた。


「俺とハンナで敵後方の奴等を狙い撃つ」

「隠れながらね」

「そうだ。次々撃つから装填を頼む」

「「「了解」」」




バウガルディ軍。


「戦え戦え!祖国の為に1人でも多く道連れにしろ!」

「くそがー!」

「祖先の恨みを!家族の恨みを晴らすのだ!」

「てめぇも戦いやがれ!」

「私は貴様たちの指揮をっ!?」サクッ

「撃たれたぞ!?」

「サイドに隠れてやがる!」

「きたねぇぞ!」

「部隊をサイドに回すりゃっ!?」サクッ

「士官が撃たれてく!」

「もう駄目だ!」

「だから殿軍なんて嫌だっつったんだよー!」

「トンズラじゃー!」

「あっ!待て!踏み止まって戦え!」

「やなこった!そんなに死にたけりゃ、てめぇも戦いやがれ!」

「ぬう!戦わない奴はこうだ!」ザクッ

「ぎゃー!」

「斬りやがった!仲間を斬りやがったー!」

「もう駄目だー!」

「俺は逃げるぜー!」


何人かが走り出した。


「くそう!恥知らず共が!こうなったらここで死すのみ!」

「おお!我等の肉体はここで朽ちようとも!魂は故郷にふひぇっ!?」サクッ

「あぁ!?クソ!ソルトレイクのクズ共め!戦士の戦い方も知らない虫けらが!出て来て戦え!正々堂々とたたはえっ!?」サクッ


敵は組織行動を取れず、少ない人数で各個撃破されていった。




「やれやれ、終わったな」


俺達は藪から姿を現した。

副官達の下に向かう。


「来たか」

「どうです?」

「殆ど殺した。若干名捕虜、何人かが逃げて行った」

「逃走者は駐屯地の方へ行ってません。行っても戦いに戻るだけだからそのまま逃走したようですね」

「なるほどな。これを狙っていたのか」

「ん?」

「死兵と、無理矢理付き合わされた奴の狭間を狙った訳だな」

「まぁ」

「士気が低い者を前にして死兵は監視する為に後ろで構えていた。そこに死兵が撃ち殺されたら士気が低い者は逃亡のチャンスと動揺する。そうなったら更なる動揺を招く前に突撃、逃走される前に使い倒そうと考えると」

「上手く行きましたね、これから駐屯地に向かいますが、捕虜はどうします」

「連れては行けん、ここで始末しよう」

「えっ!?」

「ハンナ、手足を縛ってここに置いてはゆけん。解いて背後から攻められる危険がある。捕虜として本陣に連れてゆく人員もここにはいない、奇襲出来るギリギリの人数で来たのだ。ここで始末する」

「味方の負傷者をここに置いて行って監視させるのは」

「却下だ。ギリギリまで連れてゆく。おい」

「はっ」

「・・・」


副官が部下に命令し部下達は捕虜を殺し始めた。


「バウガルディ、万歳」

「先に地獄で待っているからな」

「いやだー!おっかぁー!」


様々な断末魔の叫びを残し骸になってゆく兵士達。

ミキの顔色が良くない。


「逃走兵は追わずこのまま駐屯地に奇襲をかける!」

『ははっ!』

「負傷者は数人で運んでやれ。攻撃の時に棄てゆく」

「畏まりました」

「全員攻撃準備!」




わー!わー!わー!


森の切れ目が近付くにつれ、喚声が増してゆく。

そして駐屯地を目視できる距離となった。


「簡単な木組みの柵ですね」

「あぁ。サイドよりも正面に重きを置いているからだろう、抜けられそうだ」

「俺達は弓で援護に回りたいんですけど」

「良いだろう。弓の腕は先程見せてもらった。5人でやるのだろう?」

「俺以外の4人で」

「お前は?」

「索敵に回ります」

「ふむ。お前の力なら信用出来る。後顧の憂いも無い、前にのみ集中出来るだろう。分かった。負傷兵は森に置いてゆく。そいつ等も気に掛けてやってくれ」

「了解です」

「良し。では皆の者。突撃だ」

『ははっ』


その後、奇襲部隊は横槍を入れて敵を混乱に陥れ、敵は戦線維持出来なくなって崩壊。

駐屯地はソルトレイク軍が占拠する事になった。




俺達は駐屯地内部に居た。

沢山の捕虜が縛られ座らされている中、更なる追撃をと部隊は再編成を進めている。

俺達は負傷者を運んで引き渡し、副官に再会した。


「よくやったウォーカー」

「戦果は?」

「上々だ。奇襲が上手く行った。奇襲された敵はさっきと同じく逃亡者を出す羽目になり混乱して急速に抵抗力を失った。力攻めでも抜けたろうが奇襲が成功してこちらの被害は抑える事が出来た。これからの追撃も期待出来るだろう」

「それは良かったです」

「うむ。我々も準備出来次第出発するぞ」

「えぇ」

「その前に情報を聞き出そう。無理だろうが一応な。連れて来い」

「はっ」


捕虜が1人連れて来られた。

上級兵士のようだ。


「これからの駐屯地の場所と守備人数、その他諸々を話せ」

「はっ。言う訳ねぇだろ」

「話せば待遇改善を約束するが」

「奴隷のか。要らんな、殺せ」

「まぁそうだわな。もう良い、連れて行け」

「はっ」

「ちょっと待ってください」

「ハンナ、どうした」

「ちょっと話を、聞いても良いですか」

「無理だろうがな、構わんよ」

「何であなた達は侵略して来るの」

「ははっ。お前等と同じ理由だよ」

「同じ理由?」

「復讐だよ、女」

「復讐?何の?」

「先祖のさ。お前等の英雄、奴隷王が奴隷を解放した時、解放された獣たちが何をしたのか聞いてねぇのか?解放されてハッピーになった奴等が老人を殺し、女を犯し、子供を焼いたんだよ」


ミキが絶句した。


「俺の曽爺ちゃんも殺され、曽婆ちゃんは犯されたが残された爺ちゃん達の為に命乞いをして生き残った。それで今の俺達が居る。俺達はその話を生まれた時から聞かされて育つのさ。いつか復讐してやると、先祖の恨みを晴らせと、そう聞かされ育つんだ」

「それで復讐しに来て女を犯すのか?お前等の欲望じゃないのか」

「ははは!お前等も同じだろうが」

「同じ?」

「女。こいつら追撃で国を侵して村まで行くだろう。そうなったら村はどうなる?略奪され、女は犯され、奴隷にして連れ帰るんだよ」

「・・・」

「お前、二十歳くらいか?戦争は初めてなようだな。俺達の復讐は無くならねぇ!俺は捕まったが恨みは別の奴が晴らしてくれるだろう!俺も奴隷から逃げ出してお前を犯して食ってやるぜ!ははははは!」

「・・・」

「こいつ!」

「止めとけヤヤ」

「でも!」

「死にたいんだよ。殺されたいから噛みついてるんだ、憐れな狂犬さ」

「てめぇ!」

「もう良いですよ、副官」

「そうか、連れてけ」

「はっ」

「くそっ!殺せ!殺せぇ!」


連れられて行きそうになったが走って追い付いた。


「何だてめぇ!」

「いや、お前、気に入ったから待遇改善を上に言っといてやろうと思ってさ」

「は?」

「お尻の方は処女だよな」

「な、は?」

「何人かそーゆー奴を奴隷の仲間に入れといてやるよ。可愛がってもらえるよう言っといてやるから楽しみにしとけ」

「なんだと・・・」

「お前の方もそっち系だって言っとくから、そいつ等もノリノリで来るだろうな」

「お前!」

「ははははは!もう興奮してんのか?悪いが俺はそっちじゃ無いんだ。後で来る奴等と宜しくやってくれ」

「殺してやる!」

「はははは!奴隷生活をエンジョイしてくれ!あばよ!」


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