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HappyHunting♡  作者: 六郎
第17章 虹の根元 (ウォーカー、ハンナ、ローラ、ヤヤ、セルラ)
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ソルトレイク軍中央、ファナキア。


「ファナキア様!」

「何か!」

「味方右翼旗艦乗務員が乗艦許可を求めています!」

「許可する!」

「はっ!」


連れられてきた。


「ファナキア様」

「良く生き残ってくれたわね」

「・・・船長が、魔石と共に・・・」

「分かっているわ。命令だったんでしょう。あの人、そういう人だったから」

「うぅ・・・」

「拿捕されて水と風の結晶魔石を奪われないように最後の手段を取った。あなた達の船長は・・・責任を果たしたわ」

「・・・は」

「あなた達は良く戦ったわ。岸に戻って休みなさい」

「いえ!休む積りなら乗艦しませんでした!船長の仇を!私達も戦いに加えて下さい!」

「・・・衝船はどうなっている!」

「はい!1隻も見えません!」

「聞こえたわね。衝船は打ち止めの様よ。次は船に乗り込んで来るでしょう」

「私達は殆ど戦いという戦いをしてません!あの副官の所為で!まだまだ戦えます!」

「宜しい!皆の者!決戦の準備だ!家族を守る為に死んでいった者達の!戦友を守る為に死んでいった者達の!女王の為に死んでいった者達の為に勝利を捧げろ!」

『おぉー!』

「我等上品な貴族上がりの兵士ではない!冒険者らしく!泥臭く!腕を失ったら敵の喉笛を噛みちぎれ!河に落ちたら足を掴んで道連れにしろ!勝利の為に手段を問うな!」

『おぉー!』

「この河を敵の血で染め上げろ!我等血雨軍団!血の雨をもって河神に捧げ奉らん!」

『うおおおぉー!』




ソルトレイク軍左翼、クレティアン。


「中央から伝達!後は頼んだ!」

「テスタロッサ・・・」




バウガルディ軍旗艦。


「敵右翼!中央と連携しつつあり!」

「ファナキアだ!総大将のファナキアを討ち取れ!それで決まるのだ!」




ソルトレイク軍中央、ファナキア。


「敵は私を狙って来る。総大将の私をね。しかし指揮はクレティアン。私が死んだとしても総崩れにはならないわ。後は頼んだわよ、クレティアン・・・」




両陣営の意志と意地がぶつかっていた所から上流。


「やってんなー」

「激しいのー」

「バッチバチだな」


バウガルディの偵察部隊が上流で監視していた。


「それに比べてこっちは平和だな」

「あいつ等はほぼ全軍を投入したって話だぜ。こんな所を渡ろうって気はねぇーよ」

「そうそう。例え有ったとしても1小隊か2小隊そこらで何が出来るんだっつーの」

「やっぱ本体に参加した方が良かったんじゃねーか?」

「あの激戦に?止めとけ止めとけ。野戦だから勝ったとしても奪うもん何もありゃしねーよ」

「そうそう。舟なんかもらったって意味無いっしょ」

「装備なんかは水ン中だろうし、岸に上がっても精々食料かやっすい装備くらいだろ。金目のもんなんか少ないだろうから上の連中が独り占めするに決まってんだよ」

「勝った後に都に行くんなら略奪のチャンスもあるだろうし、その時に気張れば良いんだよ」

「そうそう」

「だな」

「あれ?」

「どした」

「あの舟」

「ん?」

「上流を遡って来るぜ?」

「あぁ。こんな大きい河だと水面の流れと本流は違うって聞いた事有るぜ」

「そうなのか?」

「風とか岸とかの影響なんだと。だから俺達も帆を張って上流に進んで来られたんじゃねーか?」

「同時に漕いでも来たけどな」

「ふーん」

「どれ、舟の中に何か浮いてないか調べてみっか」

「何か入ってるかもな」

「浮いてるような物に金目のもんなんか有るのか?」

「見てみなきゃ分かんねーだろ」

「確かに」

「2艘あるからもう1人来いよ」

「はいはい」

「えー。河ん中入るのやだなー」

「ぶつくさ言ってねーで早く来い」

「ちぇっ」

「じゃぁひっくり返すぞ。いち、にー、「ドスッ」」

「どしたー、2人共。ひっくり返ってねーぜ?」


バシャン


2つの舟をひっくり返そうとした2人が河に倒れた。


「おいおいおい!どうした!」

「何か」プスッ

「何で倒れて」プスッ

「あれ!?何でお前等まで!?何で矢が刺さって「プスッ」」バタッ

「終わったぞー!もう良いぞー!」


そこから下流側に少し離れた位置に居た男が叫んだ。


ザバァ


2つの転覆した舟の中に隠れていた女が岸に揚がってきた。


「ご苦労様。サーヤ、ケセラ」

「はい!」

「うん」

「ミキとマヌイも良い腕だった」

「少し下流で上がって準備してたからね」

「あいつ等が舟に気を取られている間にね。それにこの弓の重りも良かったよ」

「そうか?」

「えぇ。舟の上では揺れで良く分からなかったけど、実戦で実感したわ」

「そうか。甲斐はあったか」

「舟はどうします?」

「一応収納しといてくれるか」

「分かりました」

「やっぱ大変だったな」

「「「「疲れたー」」」」

「水面ギリギリで漕いだから大変だったわよ」

「交代しながらだったけど、疲れたねぇ」

「でも実験としては上手く行ったのではありません?」

「うん。次は転覆した舟の中ではなく普通の状態で駆動部を付けてみたら良いと思う」

「そうだな。帆だけじゃなく水車でも動かせれば速度は増すだろうし」

「とは言えそれは戦争が終わってからよ」

「離脱って言うから下流に行って逃げるのかと思ったよ」

「まぁ負けるかもであって、負けそうって訳じゃないからな」

「ここまで参加してきた戦争で勝って来たんだから」

「ここでも勝ちたいねぇ」

「私達が無理をしてでも?」

「その価値はある。私達の将来の為にもソルトレイクの安定は必須だ」

「・・・まぁ、な」

「作戦立案者なのに乗り気じゃないわね」

「色々有ったからでしょ」

「あいつら!カズヒコさんに失礼ばっかり!」

「気持ちは分かるが、これで最後なら、締めておきたい所ではある」

「まぁな」

「じゃ、丁度いい具合に5人分の軍服も手に入ったし、着替えましょっか」

「そうしましょ」

「みんな濡れてるから良く拭いて着替えるのよ」

「男共の服に着替えるのは嫌だが、我慢だな」

「その前にスタミナポーション飲んどけよ。水の中での運動は消費が激しいからな」

「「「「は~い」」」」

「う~ん。カズヒコさん、私とケセラにはこの薄服はちょっと不味いかもです」

「ふむ。体形が出やすいか」

「はい」

「水上戦にプレートアーマー着ける馬鹿は居ないだろうからな」

「水に落ちたら先ず助からんからな」

「私達も救命胴衣で何とかだったからねぇ」

「だっこ紐で荷物を抱えて運ぶ兵士という設定で行こう」

「分かりました。それなら窮屈な思いをしなくて良いですね」

「だろう。その山ブドウの様にたわわに実った2つの大きな房を圧し潰すなんて河の神様も怒っちゃうだろう」

「もう!カズヒコさんったらっ!」バシッ

「ぐふぉっ!?おおぉ!おおぉ!おおぉー!」バッシャーン

「あぁ!カズヒコさーん!」

「「「・・・」」」

「サーヤ、また強くなってない?」

「「なってる」」




バウガルディ軍旗艦。


「敵左翼!依然動かず!」

「クレティアンめ!彼奴が動かんから右翼も動かせん!我が最強部隊も力を発揮出来ん!一旦動けば水上の舟だ、何か起こるかもしれんものを!」




ソルトレイク軍左翼、クレティアン。


「敵左翼!味方右翼に突っ込みます!」

「決めに来たな!」

「我が軍はどうしますか!」

「動かずだ!」

「・・・宜しいのですか!」

「開戦前から言ってるだろう!焦れた方が負けなのだ!このまま敵の隙を待つ!」

「畏まりました!」




ソルトレイク軍中央、ファナキア。


「敵突撃中型船!前線の味方中型船に激突!」

「陣形に穴を開けてその隙を衝いて来るわよ!魔法戦用意!甲板に土甕を用意しなさい!」

「了解!魔法戦用意!」

「魔導士!詠唱を開始しろ!」

「穴から敵快速中型船突破!我が艦右舷に平行する形で通り過ぎると思われます!」

「水魔導士右舷へ!」

「敵船甲板に魔導士確認!」

「船体への攻撃は無視しなさい!甲板に向かって来る魔法だけ防御!」

「敵船!平行コースに入りました!」

「防御魔法用意!」

「来ます!」


ドドドドドン


バウガルディ中型船から《ファイアーボール》が放たれた。


「防御!」

『《アクアカーテン》!』


甲板に広範囲の水の壁が出現。

火の玉は水の壁に着弾して蒸発。


ジュジュジュウゥゥゥ


「敵魔法第2波!来ます!」

「土魔導士!防御!」

『《タイタントゥース》!』


甲板に土の壁が現れた。


バスバスバスッ


土の壁に亀裂が走る。

見えない何かが当たったようだ。


「《ファイアボール》の派手さで目を奪って見えない《エアロエッジ》で被害を広げる。セオリー通りね」

「敵船通り過ぎました!」

「後衛に任せなさい!被害状況は!」

「数人が被弾!重傷です!」

「帆がやられました!炎上!もしくはズタズタです!」

「櫂も破壊されました!我が艦は自力航行不能!」

「存在してれば良いのよ!ここに旗艦が存在しているのが重要なのよ!火薬樽を持って来なさい!」

「はい!」

「次に備えよ!怪我人を下へ!火は水魔導士を当てにするな!自分で消しなさい!」

「畏まりました!」

「船長!」

「はは!」

「この船はもう動けないわ!あなたは降りて副艦に移りなさい!」

「何を仰いますやら!私の船はこれですぞ!最後まで共に居ると誓ったのです!約束は果たしませんとこ奴も悲しむというもの!」

「・・・怪我人の手当てを頼むわ」

「畏まりました!」

「・・・さぁ!次はまだなの!パイドヴァイパー!」


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