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HappyHunting♡  作者: 六郎
第17章 虹の根元 (ウォーカー、ハンナ、ローラ、ヤヤ、セルラ)
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⑰-63-643

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「助けてくれぇ・・・」

「ん?」


背後からの声に振り返ってみると、

下流側の舟に男が流れ着いていた。


「何してんだ」

「泳げないんだ、助けてくれぇ」


よく見ると俺達が泳ぎの練習をしていた時に冷やかしていた男だ。


「悪いな。満員だ、他を当たってくれ」

「頼むよぉ。他の舟は気付いちゃくれねぇんだよぉ」

「俺達を冷やかしてた時より声が小さいからだろ。もっと頑張れ」

「頼むよぉ」

「沈んでも神さんの下に行けるだろうから安らかにな」

「まだ死にたくねぇよぉ」

「水の神様・・・竜宮城に居るかもしれんな」


収納袋から石を取り出した。


「そらっ」

「いたっ」


手に当たった。

痛みで手を引っ込めた拍子にまた流されて行った。


「たすけ・・・」

「神さんに会えるよう応援してるぞ」

「・・・」


流されて行った。


「ミキ!」

「何!?」

「竜宮城ってさ!海の神様じゃん!」

「えぇ!」

「って事は!竜って神様なの!?」

「・・・日本昔話みたいな龍とか!中国の龍はそれっぽいわね!」

「やっぱそうか」

「でもこの世界は違うんでしょ!ワイバーン見たでしょ!」

「・・・だよな」

「ってか今そんな事考えてる場合じゃないでしょ!」

「カズ兄ぃ!」

「何だ!」

「魔物の方は大丈夫なの!?」

「絶賛河の底でカーニバルの最中だ!」

「「「「ぞぞぉ~」」」」

「わざわざ水面まで来る必要は無いだろうな!」

「カズヒコ!」

「何だ!」

「あれ!」


ケセラの指さした前方を見ると、


〈おりゃぁー!死ねー!〉

〈てめぇが死ねー!〉


敵味方の舟が一緒くたになって流されて来る。

その船上で戦いが繰り広げられていた。


「右翼から来たんだな!」

「右翼はどうなってんの!?」

「ん~~~~~。ヤバそうだな」

「「「「ヤバそう!?」」」」

「前線突破されてるようだ」

「「「「えー!?」」」」




ドォオオオン


バウガルディの中型船が連結船で敵味方固まってる所にぶつかった。




ソルトレイク軍右翼、ウルチャイ。


「味方ごとだとぉ!」




バウガルディ軍旗艦。


「味方中型船!敵前線突破!」

「ふっふっふ。味方の損害を恐れて味方を切り捨てられなかった貴様は将の器ではなかったという事だ!衝船発進!」




ソルトレイク軍右翼、ウルチャイ。


「ウルチャイ様!ファナキア殿に救援を乞いましょう!」

「馬鹿な!抜け駆けをし命令を無視した上に更に助けを乞えと!?」

「しかしこのままでは右翼は崩されますぞ!」

「ぐぐぐ」


ドォオオオン


「中型船同士衝突!」

「馬鹿な!敵は白兵戦狙いか!?」




バウガルディ軍旗艦。


「違うんだなぁ!」




シュシュシュ


ソルトレイク軍右翼、ウルチャイ。


「しょ、衝船が風を切って航行中!」

「衝船!?」


ドスッ


「敵衝船!中型船船体に刺さりましたぁ!」

「何だと!?」

「味方中型船!動けません!」

「味方!上流の味方を呼び戻せ!」

「敵中型船群と交戦中!今呼び戻すと背後を取られます!無理です!」

「・・・何故。何故こうなった・・・」




ソルトレイク軍中央、ファナキア。


「味方右翼!中型船部隊損害多数!」

「・・・この感じ。覚えがあるような・・・」

「どうしましたか!」

「クレティアンに聞いたような・・・確か、「何とかの顎」・・・とか」

「「大蛇の顎」!?ぱっ、パイドヴァイパー!?」




ソルトレイク軍左翼、クレティアン。


「中央から伝令!」

「どうせウルチャイの泣き言だろうよ!」

「敵将軍はパイドヴァイパーの可能性ありと!」

『ぱっ、パイドヴァイパー!?』

「ティラミルティ軍を水上戦で破ったあの!?」

「でっ、ではあれは」

「「大蛇の顎」か!ウルチャイには無理な訳だ!」

「「大蛇の顎」?」

「あの作戦でティラミルティを破ったのだ!刺さった牙はもはや抜く事は不可能!後は徐々に呑まれるの待つばかり!」

「救援を!」

「無理だ!ファナキアも分かってるから動かんのだ!」

「でっ、では我々が敵右翼を」

「動くな!」

「しかし!」

「味方右翼は捨てる!」

「しかし上流の右翼を捨てるとなると下流の我々が!」

「ファナキアが何とかする!」

「しかし!」

「ファナキアも分かっている!あいつが何とかするのだ!我々はこのまま正面の敵を削り切るのだ!」




バウガルディ軍旗艦。


「敵左翼!依然動き無し!」

「流石だなクレティアン、動かんか。それに中央総大将のファナキアもだ。右翼を捨てたな。女ながら判断が良い!」

「ではこのまま!」

「うむ!我が軍最強部隊はクレティアンに対する為に右翼に配置した。右翼が持ち堪えている間に何としても相手を呑み込め!」




ドォオオオン


ソルトレイク軍右翼、ウルチャイ。


「また敵衝船が味方中型船に刺さりました!」

「味方中型船が殆ど動けません!」

「何たる事だ・・・」


シュシュシュ


「敵衝船!味方の間を縫って本艦に近付きつつあり!」

『何ぃ!?』




バウガルディ軍旗艦。


「ははははは!右翼は呑み込んだぞ!」




ソルトレイク軍右翼、ウルチャイ。


「取舵だ!取舵一杯!」

「駄目だ!」

「喧しいわ船長!」

「こちらは上流だぞ!取舵なんてしたら」

「喧しい!上流だからこそ取舵なら直ぐに避けられるのだろうが!取舵だ!」ボゴッ

「ぎゃふっ」

「船長!?」

「取舵一杯!」




ザザザァ


ウルチャイの旗艦が左に曲がった。




バウガルディ軍旗艦。


「はーっはっはっはぁー!アホがぁ!」




ソルトレイク軍中央、ファナキア。


「味方右翼旗艦!我が軍の前方を塞ぎましたぁ!」

「それに連られ味方右翼後続も追従!」

「あの馬鹿!」




ウルチャイの左曲がりの急転回に左側後方に居た味方はそれを避ける為に同じく急転回。

右翼は分断された。




バウガルディ軍旗艦。


「まさかそっちに逃げるとはなぁ!右翼指揮官は素人か!?ファナキアからの攻撃は薄くなる!左翼を突っ込ませろ!分断した隙間に楔を打ち込めぇ!」

「しかしそれでは挟み撃ちされますが!」

「上等だ!挟み撃ちされれば弓矢は撃ちにくくなる!白兵戦に持って行って食らい付けぇ!」




ソルトレイク軍右翼、ウルチャイ。


「ウルチャイ様!味方中央軍の射線に入っています!」

「何だと!」

「敵中央から集中攻撃!」

「味方分断されましたぁ!」

「敵左翼!突撃して来ます!」

「ご命令を!ウルチャイ様!」

「あぁ・・・あぁ・・・」




ソルトレイク軍中央、ファナキア。


「味方が邪魔で撃てません!」

「右から来るわ!分断を縫って来るはずよ!中央軍右翼で迎撃させる!」

「畏まりました!右翼の編成を急げ!」

「連結船は幅を取るからこれ以上は来ないわ!対衝船に備えなさい!」




バウガルディ軍旗艦。


「敵右翼旗艦!混乱の模様!」

「止めを刺せ!」




シュシュシュ


ソルトレイク軍右翼、ウルチャイ。


「敵衝船来襲!」

「ウルチャイ様!ご命令を!」

「かっ、躱せ!躱すんだ!」

「今から転回は不可能!このまま下流に逃げるしかありません!」

「それは駄目だ!味方の前を通り過ぎるのか!?それは駄目だぁ!」

「当たります!」


ドスッ

ドドドォオオオン


『うおおお!』

「刺さりました!離れません!」

「舵効かず!航行不能!」

「後は流されるのみです!」

「結局味方の前を通り過ぎる事になっただけですぞ!」

「どうするのです!ウルチャイ様!」

「あぁ・・・あぁ・・・椅子が、私の椅子が・・・」

「椅子じゃなく船の話をしろぉ!」

「もう駄目だ!脱出!脱出しろ!」

「船長!」

「何だ!」

「我々はウルチャイ様を連れて脱出する!お前達は時間稼ぎをしろ!」

「動かん船で時間稼ぎなど出来るか!」

「これは命令だ!」

「命令を無視したお前等が何をぬかす!」

「貴様ぁ!」

「総員待避!総員待避だぁ!」

「船長!」

「ワシは残ってやる事が有る!お前達はファナキア様の下に行け!」

「船長ぉ!」




ソルトレイク軍中央、ファナキア。


「味方右翼旗艦!衝船が刺さり兵士は待避中です!」

「・・・」




バウガルディ軍旗艦。


「敵右翼旗艦!航行不能!」

「行け!乗っ取れ!分捕って敵の士気を下げるんだ!」




ソルトレイク軍右翼、船長。


「ふぉっふぉっふぉ。来よる来よる」


船長の眼前には兵士を乗せた船が我先にと向かって来ていた。


『おりゃー!』


旗艦に取り付いた兵士達。

旗艦に刺さって安定感のある衝船に飛び移って鉤縄を放り投げる。


カッカッカッ


鉤縄が船長の前の船縁に引っ掛かった。

船長は樽の上に座ってその様子を眺めていた。


『おるぁー!』

「俺が1番乗りじゃぁー!」

「違う!俺だー!」

「俺だ俺だ!」

「じじい!俺が1番だよな!」

「俺だろ!」

「お前が見てて誰が1番だった!」

「あれ?他に居ねぇのかよ!」

「ちっ!つまんねぇなぁ!」

「このじじい血祭りにあげて早く船倉に行くぞ!」

「略奪は早い者勝ちだぜ!」

「ふぉっふぉっふぉ」

「何だじじい!」

「お前等は船倉には行けんよ」

「何だと!?」

「ここに船倉に有るものを一部持って来てやったわい。欲しけりゃくれてやるわ」

「その樽、何が入ってんだ!?」

「目の玉が飛び出るほど高価な物じゃ」

「ほほぉー。何だよ!言ってみろよ!」

「火薬じゃ」

『!?』


船長は火種を落とした。




ドドドォオオオン


ソルトレイク軍中央、ファナキア。


「右翼旗艦爆砕!」

「船長ぉー!」




バウガルディ軍旗艦。


「敵右翼旗艦爆砕!」

「馬鹿な!あの素人指揮官が自爆だと!」

「味方多数巻き添え!」

「クソったれがぁ!総大将だ!ファナキアを狙えぇ!」




ドドドォオオオン


ソルトレイク軍左翼、クレティアン。


「にっ、2回目の爆破!恐らく船倉の自爆用火薬に誘爆した模様!」

「最後は男になったかウルチャイ!」




ブゥワッ


『うわっ!?』

「何っ!?今の!?あの音となんか関係有るの!?」

「衝撃波だ!何か爆発したぞ!」

「「「「爆発!?」」」」


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