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HappyHunting♡  作者: 六郎
第17章 虹の根元 (ウォーカー、ハンナ、ローラ、ヤヤ、セルラ)
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「誘き寄せの退却は無しよ」

「ファナキア殿!まだ知られたと決まった訳では!」

「知られていなければね。もし知られていたら」

「それこそ追撃すれば良いだけです!」

「誘き寄せの退却の場合結構深くまで退却しなければならないわ。少し退却してそこで陣を張ったらそれこそ罠だと感付かれるでしょう」

「ぐっ」

「深くまで退却して相手が乗って来なければ・・・追撃は難しくなるでしょう」

「ぐぐぐ・・・」

「(良し良し。相手の提案を潰してこちらからの提案を飲ませれば、主導権は俺のものだ)では正面から決戦を仕掛ける事で決定だな。向こうに海亀襲撃が失敗したと噂を流すのはどうだ?」

「素晴らしい案です!相手は浮足立つでしょう。(クレティアンに乗っておこう)」

「うんうん。どうだ、噂を流してくれないか」

「河を渡って、ですか?」

「勿論だ」

「またまたぁ~。僕を殺す気ですか?どうやって気付かれずに渡河するんですか。やだなぁ~」

「「はっはっは!」」

(嘘吐け。要塞に侵入した奴が)

(嘘仰い。1000人の護衛に気付かれずに海亀の甲羅に登った人が)

「ぐぬぬぬ」

(おうおう、睨んどる睨んどる。自分の意見を否定された上に相手のペースになって激オコだな。そろそろ頃合いか)




「速やかに決戦を挑む方針にするわ」

『ははっ』

「時期に於いては天候や占いを見て決めましょう」

「占い?」

「吉日を占うのよ。験担ぎね」

「なるほど」

「多種多様な種族が集まるソルトレイク。纏めるには各種族に配慮した調整が必要、それが占いよ。神の御機嫌を占うの」

「なるほど。占星術とかですか?」

「まさか!おとぎ話じゃあるまいし。《占星術》なんて」

「ふん!無知が!」

「(おや)星で占うんじゃないんですか」

「何でも良いのよ。要は背中を押してくれれば。私達の望む日に宣託が下されればね」

「ははぁ~(要は士気を上げるためか。海亀襲撃軍には勝ってる。神は味方だって言い聞かせるのか。なるほど、戦争は宗教とは切り離せんな)」

「ただ、《占星術》なんてスキルは無いわ、現実にはね。と言うか占いのスキルなんて無い。未来を見るスキルなんてものがあったら、その者は世界を支配出来るでしょ」

「考えずとも分かろうに!」

「しかしイスカンダル王他、数多の支配者が追い求めたそうだが・・・かの魔王もな」

「そして誰も得る事が無かった、だから今の世界なのよ」

「確かにな」

「しかし占いはするんですね」

「人々がそれを望んでいるからよ。誰かに言って欲しいだけ。今回は戦争だけどね」

「日常的に望まれていると」

「自分を信じる。言うは易し。自分の行動を100%信じられるのなら神は必要無いわ」

「神の命を受けた自分は絶対に正義って奴等が居ますが」

「リィ=イン教国の奴等ね。神に選ばれた自分達が他の国からどう思われているのか、北部の同盟国からも疎まれているわ、それが選民思想に繋がる。選ばれていない、理解しない私達は審判の対象なのよ」

「なるほど。それで聖戦だと」

「ファナキア殿。神は必要無いとは、少し言葉が過ぎるかと」


一同 (面倒くせぇー)


「遍く神を敬うのなら、それを表す言葉もまた同じであるべきです」

「分かったでしょ。多種多様な種族に配慮して調整しなければいけないのよ」

「十分に」

「冒険者出身の将軍御二方にはその辺多少足りておられないのではないかと」

「北部のエリス教は知ってるわよね」

「えぇ、勿論」

「北部は男尊女卑、特にエリス教リィ=イン派は酷いのよ」

「ほほー。リィ=イン派」

「聖女伝説は知ってる?」

「?」

「リィ=イン派の聖女伝説。知らない様ね」

「はい」

「赤将軍、男尊女卑の件は戦争終了後にでも講釈して頂きたいな」

「おほほほ。少し熱くなってしまったわね」

「僕はお聞きしたいので戦争終了後にでも」

「構わないわ。ではとっとと戦争を終わらせましょう」


(ファナキアとクレティアンとの会話で俺が2人と会話成立させているのが忌々しいみたいだな。あいつは勉強は出来るんだろう、だからあの年で副官に選ばれている。しかし秀才で多いのが他者とのコミュニケーション能力の拙さだ。秀才のあいつは今までテストで良い点を取って来たがそれがかえって変な自信を付けさせてしまった。テストというのは必ず答えが有る。問題を作るのが人間だから、そして篩に掛ける為に点数の多寡で判断する為に、だから必ず答えが有るのだ。しかし世の中の問題の多くは、いや、殆どは問題に対して明確な答えなど無い。だからこそ人は過ちを繰り返す。明確な答えなど無いからこそ例え結末が予想できたとしても「今回は違うかもしれない」「自分の場合はもっと上手くやれる」と考えてしまう。あいつも今までの成功体験や貴族特権から自信満々でいた所にファナキアからの冷や水で苛立っている所に更に俺からの挑発で暴発寸前だな。さっきの会話でも茶々を入れなくても良い所で入れていた。もう一押しのようだな)




「私が先陣を切ろう」

「お待ちくださいクレティアン殿。総大将はファナキア殿です」

「総大将が危険を晒す必要は無い」

「ですので私が先陣に立ちましょう」

「・・・貴公が?何か、実戦経験が有るのかな。初めての戦争だと聞いていたが」

「初めてです。しかし書物を読み、経験者の話を聞いて育って来ましたので心配ありません」

『・・・(心配しかない)』

「・・・先程の赤将軍の話を覚えているかな。操船技術が戦の勝敗に直結すると」

「勿論覚えております。しかし実際に船を扱うのは水夫、それらへの命令は船長。私は部隊全体の命令を下すだけです。操船技術は必要有りません」

『・・・』


(コミュニケーション能力に疑いのあるお前の船に乗りたいって奴はよっぽどのギャンブラーか自殺志願者だな・・・ん?)


クレティアンが俺をチラ見した。


(・・・またか。まぁ良いだろう。こっちもその積りだった)


「ファナキア様が先陣を切るのならまだしも、副官が先陣?」

「何だと貴様!」

「今ここに居る誰もが思っている事を言ったまでだぜ?」

「何だと!?」

「何故総大将を差し置いて副官が先陣を切るんだろうと思ってるって言ってんだよ」

「貴様!口の利き方に気を付けろよ!ここは軍議の場だぞ!弁えろ!それに総大将を危険に晒す必要は無い!そう言ったのはクレティアン殿だろう!」

「弁えろというのならば順番的にクレティアン様が先陣だろう?」

「ぐぐっ」

「そんな事も分からず話してたのか?無知だな」

「・・・」プップッ


(おぅおぅ。血管がはち切れそうだな。この手の輩にとって無知だと罵った奴に無知だと言われるほどの屈辱は無いだろう)


(こいつも限界だな。先ずは望む方向に持っていく事が出来た。ここいらで収めねばファナキアの言う通り団結が難しくなる。もう良いだろうマコル、いや、ウォーカーだったか、十分だ)


パチパチ


(ん?クレティアンが瞬き・・・まだ欲しいのか?これ以上やるとコイツも切れるぞ)


「そこまでよ。編成及び船隊は今決めなくても良いわ。先ずは決戦をする、そう部下に決心させる事が重要よ」

「差し出がましいようですが」

「何かしら、ウォーカー」

「他国からの援軍はどうなっているのでしょうか」

「(皆が気になっているであろう事を聞いて来るわね)ルボアール王国の援軍はル国とシンファンとの国境近くで展開中。シンファンへの牽制になっているわ。アレク3国は国内事情も有って援軍は無理だけど我が国に物資の供給、及びソルスキア軍とルンバキア軍とでグデッペン要塞に増派する事で北部への牽制になってもらっている。此度の決戦は我が国軍だけで行う。皆、その積りでね」

『ははっ』


(3公会議でバティルシク大臣はソルトレイクに配慮すると言っていた。援軍を送れない為だ。だからこそソルスキアのアレクサンドリア復活戦争への援軍でソルスキアへの配慮をもすると言っていた。しかしそのソルスキアの援軍だけじゃなくルボアールの援軍もここには来ない?確かにソルスキア軍は要塞に行ってもらった方が良いだろう。地理的にここに来るより要塞の方が近い。更に要塞に増派すればベドルバクラ、ティラミルティへのプレッシャーになる、それは分かる。しかしルボアールの援軍は来てもらった方が良かったのでは?日和見のシンファン軍、ここのバウガルディ軍が南下しなければ動かないだろう事は予想していたし。ここでの決戦が対バウガルディだけじゃなくシンファンの侵攻を諦めさせる決定打だろう。仮に俺達が決戦に勝ってシンファンが侵攻して来ても、ここの北面軍が南下しアクアパレスの防衛軍とで挟撃すれば良いだけだ。シンファンもそれが分かっているから決戦が終わるまでは動かない。海亀襲撃の成功可否の連絡がシンファンに届いていなかったとしても、届いていなかったなら尚更ここの決戦の報告を待って侵攻するはずだ。ルボアールには来てもらった方が良いと思うのだが・・・今更間に合わんが)


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