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HappyHunting♡  作者: 六郎
第17章 虹の根元 (ウォーカー、ハンナ、ローラ、ヤヤ、セルラ)
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幕内では会議が続いていた。


「何故冒険者を庇うのですか!やはり御自身も元冒険者だからではないのですか!?」


一同が、それを言うかという顔をしている。

ウルチャイは察していない様だが。


「我が国は冒険者に甘過ぎるのです!クレティアン殿も冒険者出身ですし!だからルンバキアへの援軍も勝手に行かれたのでしょう!」

「ドゥムルガ戦役への援軍は陛下は了承されていた。元老院がなんやかんやで時間を伸ばしていたのよ」

「しかし正式に命令は出ていなかったのでしょう!?」

「出す事は決まっていたの。軍を起こすって言うのは色々有るのよ」

「色々とは何ですか!?」

「利権よ、利権。武器弾薬防具、食料、荷馬、援軍への見返りに物価上昇に伴う買占めや売り控え。戦争は莫大な金が動くのよ」

「ファ、ファナキア殿・・・」

「その辺は私じゃなく父上に聞いてみる事ね、私はあなたの母親じゃない、言ったでしょ?」

「・・・」

「国としての命令は出ていなかったけど出す事は決まっていた。だからクレティアン卿は出陣したの。結果、ぎりぎりドゥムルガ戦役に間に合ってグデッペン要塞奪取の栄誉を齎した。あのイスカンダル王でさえ成し得なかった偉業にソルトレイク王国の名を連ねる事が出来た。その栄誉を誰よりも喜んでいたのは援軍を出し渋っていた元老院だけどね」

「・・・」

「今も要塞に我が国の軍を駐留させられているのはクレティアン卿の功績よ。そのお陰でソルトレイクの国威は上がり今回の対バウガルディ軍への志願兵も予想を上回る数になった。お陰で大河滞陣ではバウガルディ軍を越える数になって戦況は優位になっている」

「・・・」

「いつも通りと高を括って援軍への見返り引き上げの為に時間を引き延ばした元老院は、ルンバキアが国内問題を理由に短期決戦を挑むとは思っていなかったようね。要塞駐留出来ているのはぎりぎり、クレティアン卿が間に合ったからよ。要塞奪取した後で援軍に行ったとしても「帰れ」って言われるだけよ」

「しかし要塞奪取はソルトレイク軍の助勢のお陰ですよね!」

「クレティアン卿が率いたのは500人よ」

「500!?たったの!?」

「私達3人の虹の騎士と女王陛下の麾下の部下、そして急遽募集した冒険者だけで行ったの。元老院ともう1人の虹の騎士は勿論出していないわ、分かるわよね」

「うっ・・・」

「ルンバキア軍だけで奪取した可能性は高いわ、犠牲は多くなるだろうけども。それにルンバキアの近衛騎士が戦争中現れたワイバーンを討ち取ったらしいし」

「・・・」

「ドラゴンバスターに守られた女大公が建国王以来の英雄的な武勇譚、物語になりそうね。アクアパレスでも流行りそうだわ」

「・・・」

「向こうに着いたらクレティアン卿には失礼の無いように」

「は?」

「卿は私みたいに優しくないわよ?」

「・・・」




ウルチャイとその取り巻きが幕を出て行った。


「本当に煩い奴ですな」

「全くだ」

「何故あぁもウォーカーに絡むのかしら」

「どうやら奴は栄典係殿の娘に気があったらしいのです」

「付き合っていたの?」

「いえ、娘には気が無かったようで」

「一方的にって事。まぁ、そんな感じがするわ」

「ですな」

「その娘は胸が大きかったの?」

「そのようで」

「・・・男ってどうしようもないわね」

『申し訳ありません』


「良かったのですか?」

「何が?」

「戦争利権の事、奴に知らせて」

「副官でしょ。社会の仕組みを知ってもらわないと。それが父親からではなく私からって言うのが気に入らないのなら私の副官に送るなと言ってやるわ」

「監視の為に送ったのが」

「自分達の実情を知らせる事になろうとは」

「大分消沈していましたが」

「知った事じゃ無いわ。こっちは戦争の準備で忙しいのよ。子守なんて御免だわね」


「それと、ファナキア様」

「ん?」

「例の人相書きの件で」

「人相書き?」

「ウォーカー達と喧嘩した5人パーティーの件です」

「あぁ・・・進展が有ったの?」

「はい。何でも外交官殿が見覚えがあるとかで」

「外交官が?えらい高位の所からね。それで?」

「はい。実は、その・・・」

「どうしたの」

「少し、突拍子も無いと言いますか」

「構わないわ。情報でしょ、聞いておくわ」

「は。その、ティラミルティ帝国の皇帝の弟君、レオナルド殿下に似ていると・・・」

「・・・ティラ・・・え?」

「ティラミルティ!?」

「皇弟!?」

「ぷっ・・・あっははははは!」

「流石にこれは無いでしょうが、一応」

「あははは・・・ふぅ、流石にあのヤンチャでもアクアパレスで活動?冒険者相手に喧嘩?無いわよ」

『ですよねー』

「王族が喧嘩で命を落とすような真似はしないわよ、継承問題に発展するわ」

『ですよねー』

「まぁ、久しぶりに笑った気がするのがめっけものね」

「戦争中ですし、海亀の事も有りましたからな」

「ではこの情報で捜索は」

「いい、いい。必要無いわ。もっと有力情報を集めてからでもいいでしょ」

「畏まりました」




俺達はテントで話し合っていた。


「あいつは何であんなにカズヒコに絡むんだろ」

「初対面だよね」

「勿論だ」

「ソルトレイク自体が初めてですし」

「ましてや貴族に知り合いなど居ないしな」

「嫉妬ってやつじゃないかな」

『嫉妬?』

「家族だとは知らないから、僕がモテてるって思ってんじゃねーかな」

『あー』

「美女に囲まれてチキショー、って」

『かもねー』ウンウン

「でもメンド臭いわよね」

「チョーメンド臭い」

「この先ずっと目の敵にされますよ」

「スパイだと信じて疑っていない様だったな」

「奴は利用できる」

『利用?』

「あーゆー奴は自分が正しい、正義だと信じきってる。思い込みが激しい奴は逆にそこを利用し易い。今後僕達の立ち回り上、良い駒になるだろう」

『駒って』

「向かう戦場は水上戦、準備したい事が沢山ある。早めに行きたいから今夜抜け出すぞ」

『抜け出す!?』




翌早朝。

ソルトレイク援軍は出発の準備を急いでいた。

朝の会議でカズヒコ達の顔を見なかったファナキアが様子見を向かわせたところ、


「ファナキア様!」

「ん?」

「奴等が脱走した模様です!」

『脱走!?』

「どういう事!?」

「奴等のテントには監視員と手紙が残されておりました!」

「監視員!?」

「簀巻きにされて転がされておりました!」

「どういう事!監視なんて命令して無いわよ!《罠》持ちは《察知》系の可能性が高いって言ったわよね!それにかなりの手練れって事も!こうなる可能性が有ったから監視はしなかったのよ!誰なの!」


一同が黙り込む。

特にウルチャイが冷や汗だ。


「ファナキア殿!それみた事かやはりスパイだったのですよ!あいつ等は!」


ジロリ


ファナキアの視線に耐え切れず喋り出す。

喋ってないと不安で仕方無いのだ。


「私が言ったように最初から拘束していればこんな事にはならなかったのです!スパイを逃がした責任はあなたに在りますぞ!」

『・・・』

「ファナキア様、手紙を・・・」

「寄越しなさい」

「は」


『ウルチャイ副官のパワハラ、セクハラに耐えられません。更に暗殺者まで用意するなんてあんまりです。僕達は旅立ちます、探さないで下さい』


「ウルチャイ!貴様かっ!」

「おっおおおお待ちください!」

「監視員の容体は!?」

「命に別状は有りません!1週間も有れば復帰できるかと」

「1週間!?くそっ!あいつ!やってくれたわね!情報部は誰もが出来る仕事じゃないのは知ってるでしょうに!今情報部がどれだけ重要な時期かっていうのも勿論知ってる!分かっててやったわねあの野郎!」

「ですから私が言ったのです!最初から捕まえて「ギロッ」!?」

「ウルチャイ・・・」


それまでのトーンから格段に下がった声が幕内に静かに響いた。


「あなたが、命令したの?」

「あ、あの、それは、その」

「はっきりしなさい?していないのなら「してない」。したなら「した」。子供でも答えられる事でしょう?私は母親じゃないのよ、あなたの気持ちを察するなんてしないの。答えなさい」

「あの、それは・・・」

「私が命令しました!」

『?』


ウルチャイの取り巻きの1人が答えた。

取り巻きなので当然元老院派の貴族でウルチャイに与している。


「・・・あなたが?副官でもないあなたが?」

「はい。ウルチャイ様の予想ではあ奴等はスパイ。この後の戦争に大事が有ってはならないと私が命令致しました。ただ暗殺は命じておりません監視です。結果としては逃げられましたがスパイだったのは明らかになりました。ウルチャイ様の見立て通りでありましたな」


そう言った男はファナキアに見せないようにウルチャイにウィンクして見せた。


(この件は貸しですよ)

(す、済まんな)


「そう、あなたが」

「はい」

「監察」

「は」

「今回の件の罪状を」

「は。女王陛下からお借りした軍を勝手に動かした事。しかも総大将の許可を得るどころか知らせもしなかった。明らかな反逆罪です」

『!?』

「おっ、お待ちください!私は反逆する気は!」

「お黙り」

「うっ・・・」

「ウルチャイ」

「・・・」

「手紙にはあなたのパワハラ、セクハラが原因と書かれているわね」

「お待ちください!私は!」

「彼らは一応軍の所属、私の直属扱いなのよ。その彼らに対するハラスメントは私に対する越権行為よ」

「お待ちください!」

「弁明を聞きたいんじゃないのよ。ただ軍の法としてあなたの行動がどういう結果をもたらしたか、それをただ言っているにすぎないの。だからあなたはただ聞いていれば良いのよ。口答えしないでね」

「いや、私は!」


ピシュン

ボタ


ウルチャイの剣の帯が切れて剣が床に落ちた。


『・・・』

「口答え、いえ。それ以上は総大将に対する反逆と見做すわ」

「あ・・・」

「ウルチャイは後でね。あなた、軍における反逆罪の刑罰は知っているわよね」

「おっ、お待ちください!アクアパレスの父上に」

「当然死刑。戦争中は現地で執行。安心して、遺体は父上に届けるわ」

「お待ちくだ「ピシュン」・・・・」

『・・・』


ゴトリ


ウルチャイが見下ろした物は恨めしそうにウルチャイを見上げていた。


「それを陣の玄関口に掲げておきなさい。全軍が進軍する時に目にするようにね。罪状は越権行為、命令不服従、それに反逆よ。先の戦いの勝利と人数優位で緩んでいた士気を引き締めるのに丁度良かったわね」

『・・・』

「ウルチャイ」

「・・・」

「ウルチャイ!」

「はっ!?」

「戦争は初めてよね」

「は、はい・・・」

「初めてで副官。順調な出世街道だったのに残念だったわね。以後、大人しくしときなさい」

「あ・・・」

「さぁ!出発よ!急ぐの!」

「宜しいのですか?」

「ん?」

「奴等は」

「私の予想では脱走なんてしていないわ」

「では」

「先を急ぐわよ!」


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