④-05-62
④-05-62
「そ、それで夫は護衛の冒険者に殺されたと聞きましたが・・・」
「はい。南の街で護衛を雇い、この街に来る途中で殺されたようです。これが護衛の契約書と冒険者カード、そして護衛依頼書です」
「ううぅ・・・」
「お父さん・・・」
無念であろう母娘は咽び泣いていた。
しばらく様子を見た後で切り出すことにした。
「従業員と御者の方の遺品と遺髪も回収しています」
「あ、ありがとうございます・・・」
「それでですね」
「・・・はい?」
「現場に荷物を隠していまして、ご都合が宜しければご案内いたしますが?」
「えっ!?」
「あなた!荷物は隠したの!?」
「えぇ。生憎食料は僕達で消費しましたが金品貴重品と素材は重いので現場に残したままです」
「奥さん!急いでと言っても夜か。明日朝1番で回収に行きましょう!」
「・・・は、はい。分かりました」
「あなた!報告してくれるのは有難いんだけど、まさか盗ったりしてないわよね?」
「調べられますか?」
「いいのかしら?」
「どうぞ」
「変わったバッグね」
バックパックの中身をテーブルに出そうとするが・・・
「結構入るのね、このバッグ・・・」
仕方が無いので床に置いていき母娘に確認させていった。
「あと僕達が持ち帰ったのは書類だけですね」
書類はテーブルに置く。
「このお金は?」
「僕達が稼いだものです」
「60万エナ。金貨6枚分ってあなた達若い子が持つ金額じゃないと思うけど」
「冒険者に若さは関係ないでしょう」
「そうかしら」
「冒険者5人殺す程ですからね」
「仲間だったかも」
「はっはっは」
「何がおかしいの!?」
「荷車2台に護衛7人ですか。ハリエットさんは余程の荷物を載せていたんですね」
「くっ、森に潜んで野営地で合流したのかも!」
「魔物がいる夜の森に?2人で?」
「えぇ!」
「なるほど。良い手ですね。今度試してみましょう」
「あなた!!このお金はギルドが預かります!」
「それは拒否します」
「何故!?疚しい事でもあるの?」
「単純にギルドにその権限が無いからです。それは衛兵の範疇だ」
「くっ!」
「預けてもよろしいですが・・・」
「えっ!?」
「利子はいただきますよ」ニヤリ
「!!」
「戯言はもういいでしょう」
「ざっ、戯言っ!」
「お金は隠した物とそこの書類を照らし合わせれば分かる事でしょう」
「そっ、それは!早く言いなさいよ」
「それで奥さんどうでしょう」
「・・・はい?」
「ちょっ、無視しないでよ!」
母娘は僕と管理者のじゃれ合いで幾分落ち着いてきたようだった。
「聞くところによりますと盗賊から荷を回収もしくは報告したものにはお礼が貰えるとか?」
「あなたたちやっぱりそれが目当てで!」
「僕達は金品貴重品は要らないのでこの奴隷のサーヤ。この子を開放していただくというのはどうでしょう」
「「「「「え?」」」」」
「サーヤがお礼の額に相当しない場合では仕方ありませんが・・・いかがでしょう?」
「あ、あの・・・そもそも奴隷を買って帰るのは予定になかったので・・・幾らになるか今分からないのですが」
「奴隷契約書に金額も書いてありますよ」
「あ、あぁ・・・そうですわね・・・!?」
「どうされました?」
「い、いえ。この金額ですと当初の予定の取引は出来ない・・・足らなくなるはずなんですが」
「取引が不調に終わって代わりに・・・とか?」
「いえ。そもそも私共の商会は人は足りてますし不調に終わっても奴隷を買って帰る必要はありません」
う~む、とみんなで唸っていると。
「あ、あの~」
「何だいサーヤ」
「私の雇用契約なんですが・・・」
「うん?」
「その~あの~」
「「「はっ!」」」
前の3人の女性がそれぞれ微妙な顔をしている。
「はーっ!」
「ど、どうした!きく・・・マタロン」
「マキロン!せ、先輩」
「どうした?」
「あれですよ」
「あれ?」
「パパ活です」
「パパ活?」
「ちょっと違いますけど」
「どっちなんだ」
「援助交際、みたいなー?」
「・・・はーっ!」
ビクっ
「要するに愛人契約かっ!」
「ぶー!ハッキリ言いすぎぃ」
前の3人は更に微妙な顔になってる。
しまった娘さんもいたな。
隣のサーヤも顔を赤くしている。
・
・
・
「ははは、微妙な空気になってしまいましたね」
「あんたのせいやろがい!」
「おほん。はっきりさせよう。よろしいですか奥さん」
「は、はい」
「サーヤ。契約形態は?」
「・・・はい。愛人契約です」
「「「!!」」」
「ハリエットさんは通常取引に加え、愛人契約の奴隷を買うために南の街まで行った。奥さんの把握されていない金額はその為のお金だった・・・よろしいですか」
「は、はい」
「幾ら持ち出したか分からんと僕達の疑いも晴れんな」
「い、いえ。取引の為に持って行った金額は分かります。実際に家のお金を調べて足りないお金と引いて」
「サーヤの契約代金と隠し金と取引履歴を照らせばいいと」
「はい」
「では明日の朝、隠した金品を回収に向かうということでよろしいですね」
「はい」
「往復3、4泊の旅になりますが」
「大丈夫です。馬車もこちらで用意いたします」
「分かりましたでは「ちょっと待ったー!」」
「私たちも同行するわ!」
「監視ということですね」
「そうよ」
「馬車は?」
「用意するわ」
「僕達はどちらに乗れば?」
「ギルドよ」
「分かりました。では宿の用意をお願い出来ますか」
「分かったわ」
管理者は受付嬢を呼び指示を出す。
その間僕達はバックパックに荷物を戻す。
「はぁ~面倒くさっ」
「むぐっ。そ、そもそもあなたたちがこんな大金持ってるのが悪いのよ」
「さーせん」
「むぎぃ!」
「はぁ~。商人の荷物なんて届け出るんじゃなかった~」
「あ、あの、すいません」
「あ、奥さんが悪いんじゃないですよ、気になさらず」
「むがぁ!」
先ほど指示を出された受付嬢が帰って来た。
「あ、あのぉ~」
「どうしたの?」
「宿がどこも一杯でしてぇ」
「「「「!?」」」」
じとー
「ちょ、ちょっと待ってくれる?」
「いつまで?明日の朝までですかね?」
「そ、そんなには・・・」
「あの、もしよろしければ私達の家に・・・」
「そ、それがいいわ」
「それは出来ませんよ奥さん」
「な、なぜ?」
「僕達は奥さんの商会のお金を盗ったと疑われてるんですよ。その家に泊まるなんて泥棒を泊まらせるようなものでしょ」
「そ、それは・・・ぐぅ」
「これは管理者さんの家に泊めてもらうしかないですね」
「な、なんで私の家に!」
「僕達3人は管理者さんの家に、管理者さんが奥さんの家に泊まれば解決ですね」
「そっ、そんなこと!」
「失礼ですがご結婚は?」
「!?・・・まだよっ!」
「お1人暮らし?」
「そうよ!文句あんの!」
「あっ、大丈夫ですよ。これでも冒険者なので野宿には慣れてますから1人身の多少汚い部屋でも」
「むきぃー!」
「人に見られて恥ずかしい物があったとしても、そこは僕達も大人ですから」
「ちょ、ちょっと!ななな何よ!恥ずかしい物って!?」
「ふぁ・・・眠い。早く寝たいな。あっ、風呂屋はこの街あります?」
「ちょー!話を聞いてー!」
結局その日はハリエット商会に厄介になる事になった。
風呂付のちょっとした邸宅だ。