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HappyHunting♡  作者: 六郎
第17章 虹の根元 (ウォーカー、ハンナ、ローラ、ヤヤ、セルラ)
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しばらくファナキアと話してから連絡員が来た。

城で褒賞授与があるらしい。

ファナキアに連れられ城に向かう。

残念ながら僕達が向かう時間帯は角度的に虹を見る事が出来なかった。


今まで見た城の中で1番大きな城だ。

今までの城は城塞と言った方が近い感じだったがアクアパレスは正にファンタジーの中で描かれる城だ。

見た目にも非常に美しい。

この街の象徴というのも尤もだ。


そしてその中は《魔力感知》出来ない。

恐らく魔石が塗布されているのだろう。

俺みたいな感知系スキル持ちは手札が一つ潰される。

純粋に武力がものを言うだろう。

スパイは難しいだろうな。

例え情報を得たとしても逃げられなければ意味が無いからな。




やがて衛兵が居る正門から堂々と敷地に入って行った。

こうやって入るのは初めてかもしれない。

今までは・・・クーデター関連でしか入った事無かったような・・・


戦時中という事もあってか兵士の姿もチラホラ見掛ける。

政務の拠点だけでなく軍事拠点でもあるのは他と変わらないようだ。




アクアパレスの正門から入るとエントランス。

ルンバキア・ベルバキア両公国よりも質素な感じを受ける。

エルフの国だからだろうか、城は派手だが。


廊下の調度品なんかを彼女達と眺めつつ進み2階に上がって部屋に通された。

思っていたほど広くはない。

謁見なんかの広さは国同士の行事だからな、更に俺達みたいな冒険者風情に謁見の間なんかは流石に使わないか。

となると、国王は来なさそうだな、そう考えるとプレッシャーも幾分引いた。


部屋の中央にある長机に横並んで座って待つ。

ドアには衛兵が2人、佇んで俺達に目を合わせるでもなく突っ立っている。


「・・・しまったな」

「どうしたの?」

「外の様子が分からん、壁も床も天井も、ジャミングされてる」

「・・・確かにね。でも大丈夫じゃない?赤将軍が国の公式行事って言ってたじゃない、そんな席で面倒を起こす?」

「壁を見ろ」

「「「「・・・」」」」

「何?」

「窓が無い」

「「「「・・・」」」」

「逃げ道が無いって事」

「そうだ。天井も高くない、儀礼用の部屋じゃない」

「・・・どうする?」

「・・・油断はするな。何か有ったら俺が合図を出す。何の合図か、冷静に見極めろ」

「「「「了解」」」」




「栄典係入室!」


ドアが開いて儀仗兵が何人か入って来た。

その後に偉そうな服着た奴も入って来た。

その後にファナキア・・・そして同じくらいの魔力を持つ、幼女?10代半ばには行かないだろう女の子も。

儀仗兵は値段の高そうな通行用の絨毯の両脇に分かれ、出来た間を偉そうな服着た奴が通って来る。

何か持ってるな。

そいつの後ろにファナキアと女の子が横に並んで控えた。

そして将軍の護衛兵が後ろに。

ファナキアと並んで女の子が・・・同列って事か?

ファナキアが口を開く。


「お待たせ。これから褒賞授与を行うわ。進行、及び授与は私の前に居る栄典係が行う。見届け人は王国将軍、『レインボー・シックス』赤の騎士ファナキアと」

「紫の騎士、グァランチュアラよ。初めまして」


女の子が口を開いた。


「・・・紫の騎士?『レインボー・シックス』?」

「えぇ。私はあまり外に出ないからファナキアほど知られてないけどね」


横を向いて菊池君を見た。

菊池君が頷いた。

ファナキアが続ける。


「実際こちらの栄典係もグァランチュアラとは今回が初対面よ」

「このような年端も・・・可愛らしい御方だとは思いませんでしたな」

「相手が油断するでしょ。戦争するだけが強さじゃないのよ」

「こ、これは、どうも・・・」

「そんなことよりさっさと用事を済ませましょ。私も暇じゃないの。子供の1日は大人のそれより濃密なのよ、成長的な意味でね」

「か、畏まりました」

「あなた達も宜しくて?」




長机を挟んで5対3で向かい合う。

俺の前のエルフの栄典係が持っていた箱の蓋を開けて話し出した。


「これよりソルトレイク王国褒賞授与の儀を行う。この度、海亀をバウガルディ・シンファン連合軍から守る王国軍の一端を担い少なからぬ功を挙げた。これを評しここに褒賞を授与する。慎ましく受け取るが良い」

「「「「「・・・」」」」」


王国軍の一端を担い・・・か。

王国軍を見たのは全部終わってからだけどな。

やはりソルトレイクは対外的、塩会議とやらを考えて今回のは作戦の範囲内という事で王国内外に宣伝するつもりなんだろう。

実際この後俺達は従軍させられる、強制的にな。


「王国より感状である。有難く受け取るが良い」


偉そうなエルフだな。

係から感状を受け取る。

むっ、

女王の名が入っていない。

元老院の名すら入っていない。

軍部の偉そうな役所からって事になっている。

王国軍の一端って言ってたな。

戦功という事か?

王国行事と言っていたが・・・


「並びに褒賞として金200万エナを与える。受け取るが良い」

「「「「「「「!?」」」」」」」


にひゃく・・・万エナだと?

確か・・・トロールがその値段だった気がする。

トロールと同じ値段?

しかも世界最大の人口を誇るアクアパレスで?

ソルスキアの一地方の領都バレンダルじゃなく首都だぞ。

正気で言ってんのか?


「どうした。有難く受け取れ」


うるせーな、こいつ。

どういう事だ。

薬品だけでも2000万エナ掛かってんだぞこっちは。

ファナキアを見る。

表情が変わってる様子は無い。

さっき一瞬・・・気の所為か。

つまり・・・軍として組み込めば戦功として軍の法で賞金の上限は抑えられる。

そういう事か?聞いてないぞファナキア。


「何をしておる、早く受け取れ」

「うるせーな、ちょっと黙ってろ」

「なっ!?何という口の利き方!ファナキア殿!この者」

「お黙りなさい」

「ファナキア殿!?」


ファナキアと幼女の魔力の様子が変わった。

臨戦態勢って訳か。

予定通りという訳か。

それでこの部屋、2人の虹の騎士という訳か。

恐らく達磨の話なんかで俺達の戦力はある程度予測しているんだろう。

俺の《罠》や影薄将軍だったかの話もしていたし、それも織り込み済みで虹の騎士2人で良いとの判断だ。

実際に俺達の誰も魔力的に敵わない。

例え争い勝ったとしても無傷では勝てない誰か死ぬ。

ここは大人しくしておくべきだが・・・腹が立つ。

やはり貴族は信用出来ない。

まんまと嵌められた自分自身にも腹が立つ。

虹の騎士2人はエルフの後ろに居る。

もし俺が襲い掛かればエルフを盾に反撃するのだろう、こいつは多分それを知らない、知らされていない。

俺が《罠》持ちと知っているから接近戦じゃなく中距離で仕掛ける気だ、俺ならそうする。

だとしたら中距離必殺のスキル持ちという事か。

しかし一般的に武器スキルは近接が多い。

となると武技か固有スキルだな。

魔法詠唱してる感じはない。

覗き魔のパーティに居た闇魔法使いが無詠唱で放って来てたがそれでも闇魔力の様子は感知出来ていた、この2人に魔法を使う様子は無い。

こいつをやれば俺は殺されあいつ等にも被害が出る。

生き残っても捕えられ最悪処刑だ。

ここは我慢・・・だな。

2000万の薬代を受け取ってマットレスなんかも受け取ったらトンズラしよう。

戦争なんか知るか。

軍に組み込まれたという事は依頼じゃなく命令して来るに違いない。

こんな奴等の為に命を張る気も起こらんし命令されるなんて冗談じゃない。

ここはさっさと終わらせて相手を油断させ、払うもん払わせてからトンズラだ。


カズヒコは無言で金袋を受け取った。


「・・・」

「全く無礼な男だ。受け取るのなら受け取るで初めからそうすれば良かったのだ」


トンズラした後でコイツを殺しに来よう。


「オッホン!では次に契約書の説明に入る」

「契約書?」

「今回の事は他所に吹聴しないという契約だ」

「・・・報酬は」

「報酬?そんな物は無い。軍の一端を担った以上今回は軍の秘密作戦である。であるならば秘密にするのは当然だろう」

「事後に契約を結ぶっていうのはソルトレイクのやり方なのか?後だしで契約を持ちかけておきながら報酬が無いっていうのは他所に吹聴しても良いよな?」

「何だと!?」

「秘密にするのは当然と言いながら契約を結べという。後ろめたい事が有るから強制的に結ばせようとするんだ。普通なら「喋っちゃやーよ」って頼むんだよ」

「王国が冒険者如きに頼むだと?」

「王国?あれ、軍の褒賞じゃなかったのか?」

「ぐぐぐ・・・」

「つまり、今回のは軍の体裁を取りながら実質王国のものだと、そういう訳だな」

「違う!」

「冒険者如きへ大金を払いたくないから軍所属ということにして額を下げたセコイソルトレイク王国ってことは吹聴しても良いのか?契約にするんならその辺はっきり線引きしないとな」

「何だと!?」

「どこから始める?チリメン商会は吹聴して良いのか?ソルティドッグは?バウガルディ・シンファン連合軍は?失態をごまかす為に必要の無い決戦に行く事は言っても良いのか?」

「まっ、きさっ、何故それを」

「あれ、やっぱそうだったのか」

「!?」

「鎌かけたらボロったな、ちょろ過ぎる」

「・・・栄典係殿」

「ファナキア殿!こっ、これは違う!」

「ふぅ・・・それ位にしてくれない?」

「軽過ぎますね、こいつがスパイなんじゃないですか?」

「何を言う!私がスパイなはずない!」

「詐欺師とスパイは皆そう言うんだよ、自分じゃないってな」

「誰が詐欺師だ!」

「詐欺師とは言ってないだろ、スパイと言ったんだ。お前、スパイという単語から気を逸らす為に敢えて詐欺師の方を否定しただろ。やはり怪しい」

「ななななななな、何を言うか!」

「分かり易過ぎるくらい動揺している、やはり怪しい」

「ま、待て!ファナキア殿!違うぞ!私は違う!私がスパイだという事実は無い!」

「だから皆そう言うんだよ。政治家が怪しい事した時に言う台詞だ、「そのような事実は無い」ってのはな。そういう場合の「事実」の意味は「証拠」って意味で本来の真実という意味とは違う。「証拠が無い」って言うと聞こえが悪いから「事実」って言ってるんだ、尚更怪しいな」

「貴様!いい加減にしろよ!」

「冒険者如きの言葉に激高している。何も後ろめたい事が無いのなら軽くあしらえば良いだけの事だ、やはり怪しい。丁度良い、レインボー・シックスが2人も居るんだ、容疑者をどう扱うか拝見しますかね」

「ファナキア殿ぉ!」

「ウォーカー、そこまでよ。栄典係殿、契約書の件は私達も知らされていないわ、どういう事なの?危険性を排除する為にも事前に決めた段取りとは違っているけど」

「こここここここれは」

「やっぱりスパイだろお前」

「ちがーう!」


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