④-04-61
④-04-61
翌朝目覚めて仕事に取り掛かる。
先ずは全ての書類をバッグに入れる。
食糧なども入れる。
サーヤという《頑健》Lv7のお陰でかなりの荷物を持ってもらうことが出来た。
金品貴重品は土に埋め、素材なんかは木の上の方に括りつけた。掘り返されるかも知れないから。
遺品も証拠も全部バッグに入れた。
「あの、そう言えばお名前を・・・」
「・・・マキロンよ!」
「!!・・・ムヒだ」
「ちょっと待って!」
「な、なんだ?どうした!」
(いいの?それで良いの!?)
(いや、君こそ!嫌がってたじゃないか)
(私は・・・まだマイキーに通じるし。先輩のは明らかに私に釣られてるでしょ)
(俺はムヒだ)
(考えるの面倒くさくなったとか言わないですよね?)
(・・・エタルで)
「・・・エタルとマキロンよ。よろしくね」
「はい。マキロン様、エタル様、よろしくお願いいたします」
「一晩寝て、身体の調子はどうかな?旅、行けそうか?」
「はい。大丈夫です」
「まぁ、何かあったら言いたまえ」
「はい」
街道に戻って北西を進み、4日目も野宿となった。
この夜は3人で夜番交代をした。
サーヤだけでは無理かもしれないが《魔力感知》で16m以内に入ったら寝ていても感知出来るので任せた。僕達2人だけ仕事しているのが心苦しそうだったから。
そして5日目夕方、グンナーの街壁が見えてきた。
領都ヴィヴィエントと比べるべくもない、しかしコローやコンテよりも高い街壁だ。
門衛に入街料を払って冒険者ギルドの場所を聞きそこを目指す。
ギルド周辺は狩りを終えた冒険者たちが多くいた。
依頼報告の時間なのだろう。
本館に入ると注目を集める。
まぁ美女2人だからな、仕方あるまい。
サーヤには冒険者から剥いだ装備を着させていた。
流石に奴隷の着物だけでは徒歩の旅は危険だろう。
「こんにちは」
「はい、こんにちは。どのようなご用件でしょうか?」
「責任者の方にお会いしたいのですが」
「どのようなご用件で?」
「実はこの街のハリエットさんについて・・・」
「あの、ハリエットさんに何か?」
「そのことで責任者の方に・・・」
「わ、分かりました。少々お待ちください」
そして少ししてから出て来る。
受付のお姉さんは奥に引っ込んだ。
「では2階へどうぞ」
「え?お姉さんが?」
「はい、どうぞ2階へ」
と言いつつ若い子を奥から連れてきて代わりにカウンターに座らせ、自身は2階へ案内する。
「こう見えて受付嬢の管理者ですの。ギルドのトップではありませんがある程度の権限は持っていますのでご安心ください」
2階の応接室に案内されソファーに座った。
僕達3人が座れるソファーで女性2人に挟まれる格好だ。
僕の前に受付管理者が座る。
「先ずはお名前をお聞かせくださいますか」
「エタルです。彼女はマカロン「マキロン」マキロン。そして彼女はサーヤです」
「それでハリエットさんの事とは?」
「2日前ハリエットさんは南の街からの移動中、護衛の冒険者に殺されました」
「なっ、なんですって!?」
「そこに僕と彼女が居合わせまだ生きていた彼女を救ってここまで連れて来たという事です」
「あの、彼女は?ハリエット商会の方では無さそうですが・・・」
「ハリエットさんが南の街で買った奴隷です」
「奴隷?」
「はい」
「ま、まぁ。それは今は良いとして、ハリエットさんが殺されたというのは本当でしょうか?」
「遺品と遺髪を回収しています。従者と御者の分も」
「えぇ!ちょ、ちょっと待ってください!」
「う~ん。先ずは遺品と遺髪をハリエットさんの親族に確認してもらいましょう。話はそれからです」
「分かりました。いつにします?」
「これから呼びに行かせますのでこのままお待ち頂けますか?」
「ここで見せるので?」
「遺品と遺髪ならここで大丈夫でしょう。ここでお待ちください」
「分かりました」
受付管理者はそう言って出ていった。
結構待つことになりその間茶を持って別の受付のお姉さんが入って来たりもした。
待っている間何もする事が出来ない。
「下で魔物図鑑でも読んでいようか?」
「そうですねー。宿とか決めないといけないし」
「受付のお姉さんに言って君は宿の確保に行ってもらうか。3人部屋、なければ1人と2人部屋かな。サーヤは野宿もしたし僕と一緒でも構わないかな」
「は、はい。大丈夫です」
「すまんね、僕達用心深くてね。それでこれまで生きて来られたんだ」
「い、いえ」
「じゃぁ、行くか」
「「はい」」
1階へ降り受付のお姉さんに交渉する。
「えぇ~困りますぅ、部屋で待っていただくようにって言われてるのでぇ~」
「でもこんなに遅いと宿も取れなくなってしまうかもしれないし」
「えぇ~でもぉ~。管理者さんはぁ~」
「出ていくのは彼女だけで僕達2人は残りますし大丈夫ですよ」
「えぇ~でもぉ~、言いつけ通りじゃないとぉ~私が怒られぇ~・・・ひーん」
こっちが泣きそうである。
「オイ!てめぇ、嬢ちゃんを泣かせるたぁ良い度胸じゃねぇか!」
「なんだお前?」
「なんだじゃねーよ!女泣かせるやつぁ許せねえって言ってんだよ」
「許せねぇってどーすんだ?あ?」
「こいつ!反省もしねぇのかっ!」
「やっちまえ!ムヒ!」
「「「ぶふーっ」」」
「どうした!あ~ん、俺様にビビってももう遅いぜ!」
「ど、どうしよう。何故か力が入らない・・・」
「せ、先輩!」
「ちょっと!あなた達!何をしてるの!」
「あっ、管理者さん!」
「あんたが遅いから宿の確保に彼女行かせようと受付のお姉さんに頼んだら泣き出してそれを見て筋肉ゴリラが喚きだしました、以上です」
「誰が筋肉ゴリラだ!」
「ちょー!止めなさいって!悪かったわ!大変な事で向こうでも時間が掛かっちゃったのよ!上に行きましょう!」
「やーどーがー」
「私が手配するから!とりあえず上へ!ねっ!」
「分かりました」
「おい!逃げんのかよ!」
「こーこまーでおーいでー」
「こいつっ!」
「ムヒ!また懲罰受けたいの!」
「うっ!い、いや・・・」
「また受けたいのか?ムヒ!」
「てめぇ!」
「あなたも挑発しないで!」
応接室に通された僕達は再びソファーに座る。
管理者は2人の女性を連れていた。
「どうも、ハリエットの妻のブリトラです。こっちは娘のプリシラです」
「エタルです。彼女はマネロン「マキロン」マキロン。そして彼女はサーヤです」
2人は顔が青い、大体の事は管理者から聞いているようだ。
「それで、今持ってると伺ったのですが・・・その」
「遺品と遺髪を持ってきました」
「あぁぁぁ」
「お母さん!」
「今、お出ししましょうか?」
「は、はい。お願いします」
ソファーを挟んだテーブルに遺品と遺髪を置いていく。
「あぁ!あなた!」
「お父さん!」
どうやら間違いないらしい。
管理者もこちらを見て頷いている。
しばらく2人が落ち着くのを待った。