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HappyHunting♡  作者: 六郎
第17章 虹の根元 (ウォーカー、ハンナ、ローラ、ヤヤ、セルラ)
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その後はしばらくカズヒコ達からの襲撃は無かった。

重傷者を伴う為に更に遅々と進む。


(何故だ)

(ワシなら重傷者を抱えた今を衝く)

(戦えない重傷者の介護で5名は咄嗟に戦えない)

(6人しか居ないワシ等を何故襲わない)

(・・・)

(海亀を急がせて時間を無くしソルトレイク軍の発動を遅らせたはずが)

(急がせた所為で仕掛けを発動出来なかった場合、ワシ等が湖に突っ込み死んでしまう)

(奴が仕掛けた罠が有るかもしれないと進んでいる所為で精神が擦り減ってゆく)

(・・・それが奴の狙いか)

(恐らく5人パーティの奴等からするとこちらは戦える人数は11名)

(少しでも勝てる可能性を上げる為にギリギリまで仕掛けて来ない積りか)

(それに奴からしてみれば遅らせられれば遅らせられる程援軍の到着時間が稼げる)

(無理に逸って戦いを急ぐ必要は無い訳か・・・クソ!)

(陰険陰湿クソ野郎が!必ず殺してやる!)


「またあの柱です!」

「迂回しろ!」

「は!」


(これだ!)

(甲羅の上の襲撃は無いと高を括って《気配察知》系の者は下に配置してしまった)

(罠系の奴等は連れてこなかった)

(工作の成功を前提に作戦を立てた為に海亀で籠城する為の戦力を優先させた弊害がここに来て・・・)

(籠城で活躍するはずの剣豪将軍が居ないのも・・・まさか奴の!?)

(思えばワシがアクアパレスに到着した時からケチが付いていた)

(シンファンの奴等の段取りが遅くて船に乗り遅れるわ)

(船旅で奴に恥をかかされるわ)

(ベラムに着いて馬に乗って海亀まで行くと馬が怯えて甲羅に乗るどころか近づけもしないわ)

(その所為で海亀の先に回り込んでようやく甲羅に乗る事が出来た時には予定より遅れていたから海亀をせっついて足を早めさせるわ)

(何1つ予定通り進んでおらんではないか!)

(シンファン連中の段取りが悪過ぎる!本当に使えない連中だ!)

(クソっ。このままでは奴の思う壺だ)

(いや待て)

(奴等は5人だけだ)

(我等が戦力急低下してもワシ等を襲って来ないのはその所為だ)

(奴等を過剰に見誤ってしまっては適切な判断は下せん)

(襲う力が無いから遅延工作をしているのだ)

(リスクを冒して人数を減らせば奴等に利するだけ)

(着実に前に進もう。幸い亀の上だ、迷うことなく進んで行ける)




「お待たせ」

「あぁ」

「あいつ等が用心深いお陰で合流出来たね」

「カズヒコさんの罠が効いてますわ」

「遅滞戦闘訓練が生きたな」

「それでこれからどうするの?」

「俺を追ってきた小隊は片付けた」

「んー。確か仕掛けに向かう部隊を、とか言ってたよ」

「それか。海亀の左足方面に向かう2小隊ほどが居る」

「仕掛け、それで海亀を殺すんでしょうね」

「恐らくそうでしょう」

「急いで止めねばならん」

「あぁ。本隊は張りぼての罠を迂回しながら進んでいる。俺達はこのまま仕掛け部隊を襲おう」

「2小隊、16人か。大丈夫かしら」

「気付かれる前にあいつ等が作業をしている所を一斉射したら5人は戦闘不能に出来るんじゃない?」

「・・・マヌイ、お前」

「ん?」

「俺に似て来たな」

「それは嫌ぁ!」

「何故!?」

「成長したわね」

「そう!そっち!」

「・・・クイ」ダキッ

「クィ・・・」

「クイールに慰めてもらうのは戦いの後よ!」

「急いで行こうよ!」

「夜明けまでもう直ぐですよ!」

「仕掛け部隊を早く片付けねば本隊が来るぞ!」

「やる気満々じゃん」

「世界中の人達の生活が懸かってるのよ!」

「そうだよ!塩はみんなの物だよ!」

「ブッ殺してやりますわ!」

「ローラが怖い!」

「最初はマヌイの案で行く!その後は乱戦に持ち込め!」

『了解!』




「クソっ!張りぼてだったとは!」

「考えてみれば広範囲にわたって罠を設置する時間など有りませんでしたな!」

「追跡部隊を始末した後の1箇所、2箇所が本物だったのでしょう!」

「急いで向かいましょう!」

「幸いもう直ぐ森を抜けます!」

「あそこからなら合図も見える事でしょう!」


そして本隊が森を抜ける。


『おぉ!』


ビョオオオォォォ


風が吹き抜けた。

木々は無くなったとはいえ起伏に富んだ地形には変わりない。

そこを吹き抜ける風は強いものだった。

そして前方やや左に明かりが上空に放射している。


「何の明かりだ!?」

「さぁ」

「仕掛け部隊では!?左足に向かったはず!」

「そうだ!仕掛け部隊の明かりだ!」

「いや!仕掛け部隊の明かりにしても大き過ぎる!」

「大将!奴等が仕掛け部隊に攻撃を仕掛けたのでは!」

『!?』

「そうか!我等を遅らせたのは仕掛け部隊を始末する為か!」

「となると後方の女達は我等を追い越して奴に合流を果たしている!?」

「何たる事だ!まんまと奴の思惑に!」


(ぐぬぬぬ、不味い)

(ワシの求心力が・・・)

(ここまで奴にしてやられて士気も低下してきている)

(まさか周りを1000人で守って作戦は確実だと思っていた所が)

(我ら本隊を衝いて来るとは)

(ソルトレイク軍に手も足も出させず海亀を奴等の目の前で殺すつもりが)

(周りの1000人が手も足も出せず我等が窮地に陥ろうとは!)

(仕掛けが失敗に終われば海亀を殺す事が出来ないだけでなく)

(我等がうみの藻屑となってしまう!)

(兵達もそれを分かっている)


「今だ!奴等を仕掛け部隊と挟み撃ちにするのだ!」

『大将!』

「仕掛け部隊は2小隊!我等も2小隊!対して奴等は5人!たったの5人だ!」

『おぉ!』

「挟み撃ちにすれば必ず討ち取れる!討ち取って手柄にせよ!」

『おぉ!』

「女達は早い者勝ちだ!好きな様にするが良い!」

『うおおお!』

「掛かれぇ!」

『おぉ!』


(これで良い!)

(女はベラムを略奪すれば幾らでも居る!)

(シンファンの奴等に戦わせワシは指揮に徹すれば良い!)

(これで勝てる!)




「カズヒコ!」

「来たな!」


カズヒコは下馬して4人と一緒に戦っていた。


「くそう!ブッ殺してやる!」

「背後から攻撃するとは卑怯だぞ!」

「しかも油壷投げて火を掛けるとは!」

「恥を知れ!」

「商人と冒険者に化けて海亀殺そうとした奴等がほざくな!」

「喧しい!」

「海亀もお前等も纏めてブッ殺してやる!」

「おめぇ等はこのままうみに突っ込んで魚の餌になるんだよ!」

「なるのはお前等だ!」

「弓でしか攻撃出来ねぇくせに大口叩くな!」

「その弓にもう6人殺されてるぜぇ!」

「背後から奇襲するからだろうがこの卑怯モンが!」

「だーかーらー!お前等に言われたくないっての!寝言は湖の底で言え!」

「うるせぇ!正々堂々剣で掛かって来い!剣でぇ!」

「湖に突っ込みたくなかったら向こうから飛び降りろよ!」

「死んじまうわ!ボケッ!」

「あの高さで助かるわきゃねぇだろ!」

「死体は発見してもらえる!塩湖じゃ死体は浮かんで来ねぇらしいぜ!」

「そりゃお前等だ!死ね!」

《うおおお!》

『!?』

「あっ!援軍だ!本隊だ!本隊が来たぞぉ!」

「やったー!」

「ざまぁみやがれ!これでお前等は終わりだ!」

「女達は1000人で犯してやる!」

「てめぇの目の前でな!」

「ぎゃーっはっはっはっぁぶっ!?」

「あっ!?」

「矢が黒いぞ!」

「見えにくい!どこまでも卑怯な!」

「また魚の餌が増えたな!」

「てめぇ!」

「このままやってりゃぁ海亀は殺せねぇ!お前等はここで死ぬんだよ!甲羅の上がお前等の墓場だ!墓標は適当に貝殻拾って立ててやるよ!泣いて喜べ!」

「やかましぃわ!それはお前等も同じだ!」

「俺達にはクイールが居るもんねぇ!バーカバーカ!」

「1匹しか居ねぇだろうが!」

「な訳無いだろ!お前等の悔しい顔を見ながら皆で飛び出すんだよ!ばははーいってな!」

「俺に寄越せ!クイールを寄越しやがれ!」

「てめぇ!何自分だけ助かろうとしてんだよ!」

「うるさいぞ!本隊が来たんだ!挟み撃ちにして仕掛けを発動させるんだ!」

『おぉ!』


「カズヒコ!」

「徐々に下がれ!奴等を仕掛けから遠ざけるんだ!」

『了解!』


「追え追え!逃がすな!」

「本隊の奴等に取られる前に女はもらう!」

「させるか!俺のもんだ!」


「男はいつでもどこでも同じね!」

「気持ち悪いんだよ!」

「堆積物の一部にしてやる!好きなだけ塩を舐めろ!」

「頭の中はそれしかないのか!ケダモノ共が!」

「ご、ごめんなさ~い・・・」


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