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HappyHunting♡  作者: 六郎
第17章 虹の根元 (ウォーカー、ハンナ、ローラ、ヤヤ、セルラ)
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一瞬だが煙幕により視界を奪われた馬達は自然と周りの馬から距離を取った。


「行くぞ!」

「ヒヒン!」


左側に生まれた隙を逃さず俺の乗った馬で左隣の馬を押し退けて集団から脱する。

脱出した先に俺の乗っていたクイールが居た。

包囲網を抜けられ驚く兵士達。


『あっ!?』

「偉そうに口だけだったなこのワン公どもが!」

「てめぇ!」

「殺してやる!」

「弱い犬ほどよく吠えるってな!ソルトレイクのこんな深くまで来やがって!捕まったら全員縛り首だぜ!首に縄とか犬にはお似合いだな!」

「殺せ殺せぇ!」

「クイは離れてろ!」

「クィー!」




ドドドドドドドドド


「隊長!」

「何だ!」

「もっと近づかないとあの盾に弾かれています!」

「盾で防ぎつつ射撃とは!エルフ並みの腕です!」

「うむむむ!良し!撃ち方止め!もっと速度を上げろ!」

『はっ!』

「隊長!」

「何だ!」

「後ろから奴が来ます!」

「何だと!?」


隊長が振り返ると近接部隊から脱したカズヒコが弓騎兵の背後に迫っていた。


「どうやって突破した!?」

「どうします!?」

「撃ちますか!?」

「止めろ!後ろの部隊に流れる!」

「どうするんですか!?」

「くぅ!已むを得ん!海亀側に寄る事は出来ん!左に流れて散会!」

『了解!』

「前方は前を狙え!後方は奴を迎え撃て!」

『ははっ!』


あいつ等が左に流れた。

良い流れだ、益々グンタリから離れてゆく。

奴等のケツに付こう、俺の後ろにいる友軍が邪魔で撃てないだろう。


「あの野郎!分かっててあの位置取りしてるな!」

「撃てねぇ!」

「嫌らしい位置取りしやがって!」


さっきの挑発で後ろに居る近接部隊は俺を追うので必死だ。

流れ弾の事なんて頭に無い。




ドドッドドッドドッドドッ


「更に逸れたぞ!」

「カズヒコがおしくら饅頭から逃げた所為よ!」

「でも増々距離が縮まってるよ!」

「サーヤ!」

「はい!」

「投網よ!」

「えっ!?」

「投網を投げるのよ!」

「でもカズヒコさんが巻き込まれるかも!」

「あの人なら何とかするわ!」

「でも!」

「良いからやりなさい!カズヒコは私がリーダーって言ったのよ!これは命令よ!」

「はっ、はい!」


サーヤが収納袋から投網を取り出し空中に放った。




ドドドドドドドドド


「躱せぇ!」

『うわあああ!?』

「何人かが捕まって落馬ぁ!」

「クソがぁ!」

「しかし散会していた為に被害は軽微!」

「後続も!・・・!?」

「どうした!報告はぁ!」

「やっ、奴が真後ろにぃ!」

「何ぃ!?」


隊長が振り返るとカズヒコが弓騎兵集団の直後まで来ていた。


「馬鹿なぁ!この短時間で追いつける訳がない!」

「しかし現に!」

「何故だ!」




ドドドドドドドドド


クソっ!

結晶魔石使い過ぎた!

ジェット噴射よろしくブッ放して追いついたは良いが俺の魔力が残り少ない。

どこまで追うつもりなんだこいつ等は。

もう直ぐ海亀が地平線に消えてくぞ。


「ぐっ」

「うおっ」

「あつっ」

「ひあっ」


「前方から斉射ぁ!」

「あいつ等めぇ!」

「うおっ!?」

「後方からも奴が撃って来ます!」

「挟まれたぁ!」

「狼狽えるな!こっちは350居るんだぞ!必ず勝てる!必ず勝てるんだ!」

『うあああ!?』

「どうした!?」

「奴の近くの馬達がコケましたぁ!」

「こけた!?何故だ!?」

「分かりません!」

「隊長ぉ!」

「今度は何だぁ!」

「海亀から離れ過ぎてます!」

「何っ!」


隊長が振り返ると海亀が地平線に見える。

そしてその上空には光が落下していた。


「しまった!《鏑矢》から離れ過ぎた!《信号矢》が上がってるぞ!」

「矢の色では・・・撤退!撤退です!」

「ぐぬぬぬぬぬ!已むを得ん!撤退だ!海亀に合流する!」

『了解!』




ドドドドドドドドド


前の奴等が方向転換して行った。

それに合わせて後ろの連中も方向転換して行こうとする。


「やーいやーい!負け犬負け犬ぅー!」

「てめぇ!」

「覚えてやがれ!」

「海亀は殺してやるからな!」

「悔しがりやがれ!」

「犬どもはスケルトンでも追いやがれー!おしーりぺんこぺんこぺーん!」

『ぜってぇー殺してやるからなー!』


ドドドドドドドドド


「ふぅ・・・」


俺は速度を緩めて連中を見送っていた。


「カズヒコォー!」

「ん?」


沈みゆく夕陽の横から彼女達が現れた。


「無事!?」

「勿論だ」

「ふー!心配したよぉ!」

「いきなり飛び出さないで下さい!」

「心臓に悪いぞ!」

「悠長に話してる暇が無かったんでな」

「もう!」ペシッ

「いたっ!?」

「また遺言めいた事言って!」

「ホントだよぉ」

「心配しました」

「信じていたがな」

「流石に5人と350人とではな」

「クィー!」


向こうからクイールが走って来た。


「5人と5匹だったな」

「クィー!」

「ブルルル!」

「6匹だったな」

「ヒヒン」

「グンタリ達はうまく逃げられたようね」

「そうみたいだねぇ」

「では私達もベラムに戻りますか」

「いや」

「ん、戻らないのか?」

「あぁ」

「どうするの?」

「やっぱり奴等の狙いは海亀の殺害だ。奴らが言ってた」

「じゃぁ尚更早く街に戻らないと」

「私達だけじゃ無理ですわ」

「5人しか「クィー!」と6匹しか居ないんだぞ。今の戦いですら奴等には海亀という条件が有ったから助かっただけで」

「その海亀だが予定よりも接触が早かっただろ」

「えぇ。確か当初の予定では明日だったはず」

「恐らく海亀の足が早まってるんだ」

「なるほどー・・・それが?」

「恐らくベラムからここまでの旅程と海亀の速度から予測すると・・・塩湖には明日の朝には着くだろう」

「「「「えっ!?」」」」

「じゃ、じゃぁ。あいつ等が殺すとしたら今夜中!?」

「ヤバいじゃん!」

「どうします!?」

「しかしベラムからの援軍は間に合わんぞ!レイヴが到着してギルドから当局に知らせが行ってそれからチリメン商会の家宅捜索。それから海亀に応援が街を出ると言っても明日の陽が昇ってからだろう。絶対に間に合わん!」

「俺等でやるしかない」

『・・・』

「今まで北部との戦争で勝って来たからね!」

「海亀を殺されちゃぁ台無しだよ!」

「良いのか?危険な仕事だが」

「今更ですよ!」

「カズヒコが作戦を考えてるんだろう?上手く行くさ」

「何時も上手く行くとは限らん」

「早くしましょ!もう直ぐ陽が沈むわ」

「明るい内にやれる事はやっとこうよ」

「投網も必要になるかもしれませんから回収しときますね!」

「奴等騎乗作戦だから軽装備だったのも幸いだったな」

「はぁ~。じゃぁ行くとするか」

「何溜息ついてんのよ!」バシッ

「あたっ。魔力が無くなりそうでね」

「魔力ポーション飲みますか」

「もらおうか」

「はい!」




ドドドドドドドドド


「慣れれば慣れるものだな」


常に揺れる地面で火を囲んでいた者達。

火が昇っていく先は星空が見えていた。


「そうですな。思った程上下する訳ではなかったので」

「うむ」


周りにテントを張って野営をしているようだ。


「準備の方は」

「はっ。前足に仕掛けました。合図でいけます」

「うむ」

「ここまでは予定通りでしたな」

「先程の襲撃は予想外でしたが」

「なに。被害は軽微。恐らくあれからベラムに伝令に行っても奴等が来るのは明日以降。十分間に合う」

「亀をせっついて移動を早めたのも良かったですな」

「結局襲ってきた奴等は何だったのですかな」

「はい。先程の矢文による報告ですと、ソルティドッグギルドのマスターが居たそうです」

「ギルドマスターが?では犬どもか」

「大方仕事欲しさに様子を見に来たって所でしょう」

「餌欲しさに集って来るとは浅ましい」

「然様然様。追い散らしてやりましたな」

『はっはっは』

「私にも活躍の場を与えて下さい」

「貴様はもしもの場合の戦力なのだ、勘違いするな」

「しかし武人は戦うのが本分、このまま何も無ければ王に顔向けできませぬ」

「お前達サムライは作戦の本筋を見誤り自分の我を通そうとする。何も無ければ何も無いで良いのだ、勘違いするな」

「・・・は」


「塩は我々が貰う」

「はい。一粒も渡してはなりません」

「今までティラミルティに頭を下げてやって来たがこれからは違う。我々が主導権を握るのだ」

「しかしそれだとティラミルティとの約定が」

「聞くしか無かろう。海亀は我々が殺したのだ、塩も我々の物、奪った者の物になるのは当然の事だ」

「シンファンと分ける、その筈ですな?」

「勿論だ。貴国とはこれまで通りやっていく。他国は失敗したようだが逆に我々の発言権も増した事になる。我々で北部を主導してゆこうではないか」

『ははっ!』


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