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HappyHunting♡  作者: 六郎
第17章 虹の根元 (ウォーカー、ハンナ、ローラ、ヤヤ、セルラ)
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カズヒコ達が雑踏の中を歩いていた。


「ったく。何も知らなかったな」

「最近になって雇われたって言ってたからね」

「でもウォ兄ぃは生かして連れて来いって」

「拷問する為でしょうね」

「私達もだったが」

「何の為かは考えなくても分かるわね」

「始末してしまえば良かったのですわ」

「「「「・・・」」」」

「ち、近々仕事が始まるって言ってたねぇ」

「海亀の事でしょう」

「間違いなかろうな」

「でも武器弾薬を運び込んでるって言ってたが」

「まぁ、魔物と戦うんだろうし」

「必要ではあるよねぇ」

「やはりチリメン商会の商員を拉致して聞き出した方が良いのではありません?」

「・・・ローラ。君はウォーカーに似て来たぞ」

「まぁ。おほほほ」

「ちょっと待てよぉ。僕はそんなに物騒な事直ぐにはしないよぉ」

「「「「はい!?」」」」

「この口が言ってるのかぁ!」ギュウウウ

「ニャァ」

「いだぇだぇだぇだぇ!」

「目玉抉ってた人が言う台詞?」

「あの子の目が見えるようになったら良い事だろ?」

「まぁ・・・」

「同じ様な子供たちにも良い事だけどねぇ」

「だろっ」

「では8人分の目玉は収納しておくのか」

「いえ、9人分よ」

「「「え?」」」

「あの街主の目玉も収納してるのよ」

「「「えー」」」

「ローラ君。しぃー」

「しぃーって。私達が袋を持ったらどうせ分かっちゃうんだから」

「あいつは最後に役に立ったな」

「はい」

「役に?」

「手足を斬り落として左右逆にくっ付けたんだが」

「「「ぶっ」」」

「くっ付いた上に動いたな」

「はい。完全ではありませんがピクピクと動いてましたね」

「やっぱり自分の身体だからくっ付いたんだろう。神経もそうだ。左右逆だから混乱して完全に動かせた訳ではなかったんだろうな」

「なるほどー」

「だから他人の手足なら例えくっ付いたとしても動かす事は出来ないと思う。輸血が出来ない事と同じだと思うんだよ」

「固有魔力ですか」

「あぁ。血にも固有魔力が入っているだろうから拒否反応が出るんだろうな」

「なるほどー」

「ちょっと止めてよ。昼食前よ」

「目玉焼きでも頼むか」

「おらっ!」ゴスッ

「ごふっ」




止めてよと言いながらもしっかりと食べていた菊池君達を伴いソルティドッグギルドに向かう。

冒険者ギルドよりも遥かに小さな建物だった。

斡旋するだけのギルドだし、こんな物だろう。


「ご免ください」

「何だい」

「ソルティドッグについて教えてもらいたくて船長からの紹介状を持って来ました」

「船長からの?見せてみな」

「はい」

「・・・なるほど、確かに。ギルド長のグンタリを呼んで来るから待ってろ」

「分かりました」


しばらく待っているとゴツイ男がやって来た。


「あんたかい、船長の紹介状を持って来たってぇのは」

「はい」

「今回はソルティドッグの出番は無いってぇのは知ってんのか?」

「えぇ、チリメン商会ですね」

「あぁ。だから斡旋も出来ないぜ」

「構いません。ドッグの事を教えてもらいたくて」

「ふむ。そんな事くらいなら」


しばらくグンタリの話を聞いていたが事前に聞いていた話と同じ様なものだった。

こちらからも聞いてみる。


「海亀から落ちた塩を集めると聞きましたが」

「その通りだ」

「海亀に乗っちゃぁ駄目なんですかね」

「法律で決まっている、乗っちゃぁ駄目だ」

「落ちている塩だけでは少ないのでは?」

「そんな事は無い。ルボアール王国に揚がった時はまだ海水を湛えてるんだがこの台地に上がって来る頃には干上がって塩の塊になってる。それが落ちて来るからな」

「へぇー」

「最後の海亀だから乗る事は禁止されてる。これを犯せば海亀を殺そうとしてると見做して殺されても文句は言えない」

「なるほど。じゃぁ余計に何故チリメン商会が多くを雇ったのか疑問に思えますね」

「そーなんだよなー。俺達の斡旋も無く雇うのも疑問なんだ。何より経験が必要なんだが」

「そうなんですか、落ちたのを拾うだけでは?」

「そう思うだろ。中には悪い奴も居るからな、盗賊とか。観光客を装って来る奴も居るし。法律知らねぇで来る奴とか居るからな、勝手に取っちゃ駄目だぞ」

「ドキッ」

「海亀の塩の量ってそんなに多いんですか?」

「ここらで賄う全体の・・・大体1割強ってところかな、嬢ちゃん」

「そんなに有るんですね!」

「あぁ、だから戦略物資って言われるんだよ。特に北部には死活問題だ」

「北部に海は無いんですか?」

「ティラミルティ帝国の北にあるらしいが冬には凍る。夏の一時期しか製塩出来ないそうだ」

「「へぇー」」

「あとの9割弱の内訳は?」

「南方の海からの塩が5割かな。南方だから年中塩が取れる。あとは・・・ダンジョンだ」

「「「「「ダンジョン!?」」」」」

「あぁ。ダンジョンから塩が取れる。これも年中だから結構な量になる」

「「「「「へぇー」」」」」


「ギルドって事は国に認可されてるって事ですよね」

「そうだ。最悪の場合殺人も認められている」

「おぅ」

「だから品行方正・・・とまでは行かないが、腕が有るだけではなく自分を律する事が出来なきゃぁドッグにはなれねぇ。ドッグになれて調子こいて人に迷惑かけるような奴は即クビだ。クビって殺すって意味じゃぁねぇぞ」

「なるほどー。じゃぁ僕はなれますね」

「「「「じとー」」」」

「ふっ。嬢ちゃん達の視線を見る限り無理そうな気はするが船長に紹介されたほどだ、試験は受けさせてやっても良いが」

「いえ、僕達は流れなので」

「流れはうちにも居る。海亀の時期だけここに来るって奴とかな」

「へー」

「海亀目当ての観光客も多い。そういやぁ今年は特に冒険者が多いって聞くな」

「そうなんですか」

「冒険者向けの安宿がどこも満室って話だ」

「チリメン商会関連ですかね」

「かもな」


「そのチリメン商会なんですが」

「うん?」

「北部の起こした商会だと思ってるんです」

「・・・ほぉ」

「僕達の見立てでは海亀の塩を独占するだけではなく横流しして北部に持って行こうとしてるんじゃないかと」

「・・・ふーむ。大量の塩を移送する?あまり現実的じゃないが」

「移動中の荷馬車の中身が何なのかなんて誰も気にしませんよ」

「それはそうだが今は戦争中だ。北に移送は・・・難しいんじゃねぇかなぁ」

「・・・はっ。東のシンファン氏族連合が動員してるって」

「東に?ふーむ、有り得ねぇ話じゃねぇが。奴等はバウガルディ王国が戦線を突破しねぇと動かねぇだろう、だから移送も出来そうな気はするが・・・」

「ここに来たのは海亀の近くまで案内してもらって奴等の現場を押さえる事だったんですよ」

「・・・ふーむ。確かに怪しい動きは有るんだが。しかし仮にもお上に認められた商会だしな、現場に行って何も無かったらワシ等がドヤされる」

「そこはドッグギルドって事で、何か手伝おうかとか、問題は無いかとか、色々言い訳は出来るでしょう?」

「そこまでしてやるまでの証拠が無ぇんじゃぁなぁ・・・」

「うーん。通常、ソルティドッグは何人体制で海亀を守るんですか?」

「大体100人かなぁ」

「そんなに!?」

「あぁ。魔物やら人間から守る役割、塩を集める役割、整地する役割、運ぶ役割。色々要るのよ、だから経験が必要なんだ」

「なるほど。海亀はいつくらいに塩湖に来る予定なんです?」

「このまま何も無けりゃぁ・・・5日後って所か」

「5日・・・分かりました有難う御座いました」

「おいおいおい。お前等だけで行こうってのか?殺されても文句は言えねぇぞ?」

「問題が無ければこっちからちょっかいを出したりしませんよ」

「ちょっかいを出さなきゃ確認出来んだろうが」

「手は有ります、失礼」

「待て待て待て。観光って事で遠くから見るだけなら案内出来る。もし北部に荷を運ぶんならそれを尾けていきゃ良いだろう」

「ふむ」

「もし何も問題無かったら案内料を払え。問題が有ればワシ等が出張る。お前等にも報奨金なりが払われるだろう、どうだ?」

「・・・それで行きましょう」

「分かった。じゃぁワシ等も人数を集める。準備も有るし出発は明日早朝だ。お前等はギルド員に斡旋してる近くの宿に泊まってくれ」

「分かりました。では明日、宜しくお願いします」

「はぁ・・・結局海亀になっちまうのかぁ」


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