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HappyHunting♡  作者: 六郎
第17章 虹の根元 (ウォーカー、ハンナ、ローラ、ヤヤ、セルラ)
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その夜。


「いやぁ、あんた等にはスカッとしたぜ」

「ん?」


星図の使い方と航海術を教えて貰ってる船員に言われた。


「昼間のさ」

「あぁ」

「迷惑かけてたのあいつ等だけじゃなかったんだが、あんた等のお陰でそいつ等も大人しくなったよ」

「そりゃ良かった」

「客達もイライラしてたようだがあれを見て幾分溜飲を下げたようで問題も起こりそうに無い。明日の朝には無事にベラムに着くだろう」

「朝か、あいつ等が乗ってなけりゃ今日にも着いてたんだよな」

「そうだぜ全く」

「あの3人はこれからどうなる?」

「衛兵に引き渡される。船での狼藉は陸での法よりも厳しく罰せられる。今も独房に入ってるから安心しな」

「そうか。チリメン商会の連中は殆どが黄色人種だったが」

「あぁ、そうだったな」

「この辺じゃぁよくあるのか?」

「いや、服装からしてシンファンから来たんじゃねぇかな」

「ふむふむ。でもオーナーっぽい奴は白人だっただろ」

「あぁ、出資者か何かだろう。シンファンの連中は金が無ぇからな」

「ふむふむ」

「さっき渡した紹介状でソルティドッグギルドに行けば世話してくれるだろう。海亀で祭り騒ぎのベラムの街を堪能してくれ」

「ありがとう」




授業も終わり部屋に帰って寝た。

その夜は一応警戒はしていたが何も無く過ぎ。

翌朝、みんなで朝日を拝んでいた。


「「「「きれーい」」」」


俺は若干寝不足だが、彼女達と一緒に陽を浴びていた。

もう直ぐ秋の朝日は夏のそれとは違って優しいものだった。

水面に反射して光がきつく感じられたが。


「街が見えて来たよ!」


アクアパレス程ではないがそれでも大きな街並みだ。

規模でも首都だったどの公都よりも大きいだろう。

やがて船は岸壁に接岸した。

タラップが渡され続々と人が降りていっている。

先ず船客を先に降ろしてその後で荷物を降ろすのだろう、誘導されて人がどんどん降りていく。

僕等もその流れに乗って下船した。


「着いたねぇー!」

「あっという間の船旅だったわね」

「綺麗な景色で楽しかったですわ」

「不愉快な事も有ったが1度しか無かったし、それ以外が素晴らしかったから直ぐに忘れられるだろう」

「これからどうするの?」

「その辺の店を見て回ろう」

「ギルドには行かないの?」

「今はまだな」




船着き場周辺は多くの店が並んでいた。

土産物屋や食事処、宿に雑貨屋。

それらを見て回っている。

珍しい物があれば皆でワイワイ言いながら手に取って見てみたり。

マヌイのフロントパックに入ってジョゼも一緒に見ていた。


「ヤヤ」

「ん?」

「僕が壁になるから僕越しに後ろを確認してみろ」

「!ん」


雑貨を手に取るような仕草の陰でマヌイが後ろを確認する。


「男が2人、こっちをチラチラ見てるよ、尾行かな」

「チリメン商会?」

「可能性は高い」

「捕まえて確かめる?」

「僕等を尾行してるのか確かめる必要が有るな。ハンナ」

「うん」

「君はローラとセルラを連れて次の十字路を右に曲がれ。僕はヤヤを連れて左へ行く」

「分かったわ」

「その先でまたこの通りに合流出来る」

「それで分かりますね」


僕等は二手に分かれて進んだ。

真逆の方向に分かれた僕達を尾行者はどうするのか。

果たして彼らも二手に分かれて僕達の尾行を続けた。

さっきの通りに戻って合流を果たす。


「ヤヤ。確かめてみろ」

「ん・・・居るね。ハンナ姉ぇはどうだったの?」

「魔力反応は1つ付いて来てたわ。あの内の1人ね」

「僕達にも1つ来てた」

「間違いないようですね」

「多分な。下船する前から準備してたんだろう」

「顔は覚えたって言ってましたものね」

「報復の為に尾行か。そもそも無礼な仕打ちをしたのはあの男だろうに」

「お金を投げて寄越すなんてね」

「ほんとにね」

「どうする?捕まえる?」

「うーん、どうすっかな。捕まえて先ずはチリメン商会がシンファン、もしくは北部の関連商会って事を聞きだせたら良いんだが」

「雇われ冒険者だったらその辺知らないかもね」

「兎も角、吐かせなければ何も分からないのではありませんか」

「笑いながら言わないでくれ、ローラ」

「あら、尾行者に気取られないように普段通りに振舞ってるだけよ」

「「「「ホントー?」」」」

「おほほほ」

「ふーむ。小魚を釣っても食える身は少なかろう」

「もっと大物を狙うの?」

「尾行するって事は何か仕掛けるって事だろう」

「それを待つ?」

「その方が得られるものも大きそうだ」

「どうやって?」

「2人しか居ないって事はあの2人では報復に来ないはずだ」

「増援を待ってるって事?」

「増援を待つにしても僕達が何処に行くか分からないからな。合流も無理だろう」

「そっか、じゃぁ宿に泊まるのを待ってるって事かしら」

「恐らく」

「宿で襲って来るの?」

「一泊して宿を出た後だろうな」

「流石に宿では来ないか」

「セーラ様の時は来たが」

「あれは宿って言うか、街主が敵で街ぐるみで襲って来てたからねぇ」

「そうだ。今回は南部のソルトレイク王国、対して北部の商会。大丈夫だろう」

「じゃぁ何かしてくるとしたら明日ってところか」

「多分な」

「じゃぁ明日捕まえるんだね」

「あぁ、捕まえるのに都合良さそうな場所をこれから下見に行こう。夜の内に僕が《罠》を張っておくから」

「人気の無さそうな所が良いわね」

「周りに迷惑が掛からなそうな場所も」

「捕まえた後に尋問も有りますしね」

「笑顔のローラが怖い」


その後は街を散策して人気の無さそうな場所を探しながら観光をして夕方に宿を取った。




そして明くる朝。


「よう」

「やっと来たか」

「お待たせ」


男達が宿の前の通りで合流した。


「奴等は?」

「まだチェックアウトはしていない」

「そっちはバレていないんだろうな」

「勿論だ」

「男1人に女4人って聞いてるが?」

「あぁ。男はひょろい、女はヒト2人に獣人とエルフ。そんな強そうじゃぁなかったな」

「上からは男は必ず生かして連れて来いって言われてる。まぁ女も連れて帰った方が良いだろうな」

「その前に味見はするけどな」

「ひっひっひ」

「8人で大丈夫か?5人だぞ」

「あまり多いと人目に付き易いだろ」

「それに多いと回すのも時間がかかるしな」

「ひっひっひ」

「はぁー、おめぇ等が羨ましいよ全く。こちとら部屋取って徹夜で様子を探ってたんだぞ。宿代出してくれるんだろうな」

「上に掛け合えよ、俺達が答えられる訳ねぇだろ」

「はぁ~。じゃっ、俺達は報告に行って寝るからな」

「あいよ。良い夢見ろよ」

「言ってろ」

「ひっひっひ」


2人の男達はその場を去って行った。

そしてしばらくして、


「おっ!出て来たぞ。男1人に、女4人。なりも聞いてた通りだ。あいつ等に間違い無いだろう」

「あぁ。確かに男はひょろいな。ちょろそうだ」

「女達は・・・良いじゃねぇか。上玉だぜ」

「殺さず楽しんでから連れて帰ろうぜ」

「問題はどこで仕掛けるかだが」

「この辺は貧乏人の住宅街に近い。昼間は働きに出てる所が大概だ。その方面に行ったら仕掛けよう」

『おう』

「おっ!しめた。あいつ等の行く方向は正にその方面だ」

「ツイてるな」

「日頃の行いが良かったんだろうよ」

「ひっひっひ。これから気持ち良い行いもするんだしな」

「よし。このまま尾行して良い所で仕掛けるぞ」

『おう』




そして、


「ぐふぅ・・・」


1人の男が壁に寄り掛かって崩れ落ちた。

その少し離れた場所で7人の男が地面に倒れている。

男の顔には殴られたような痣がある。

その男の周りに5人の人間が集まって男を見下ろしていた。


「さてと」

「お、お前等何者だ・・・」

「見ての通り冒険者だよ。ただ、強そうな上着は着ていないが下に着ているアーマーはマジックアイテムだがね」

「なんだ、と・・・」

「お洒落な上着だろ?この子が作ったんだぜ。なっ」

「はい!」

「くそが」

「・・・お前、服を糞だと?」

「ぷっ」

「おっと。服に唾を吐きかけるとはな」

「へっ。女に手縫いのプレゼントをされて喜んでる優男が、くたばりやがれ」

「うーん、そうだなー。君は尋問しててくれ」

「あんたはどうするの?」

「あぁ。あいつ等の処分だ」

「「「はぁー」」」

「手伝います!」

「そうだな。7人も居るしな」

「はい」


2人が離れて7人の倒れている男達に近づいていく。

残った女の1人が話しかけた。


「じゃぁ話してもらうわよ」

「けっ。誰が話すかよ」

「私に話しておいた方があなたの為よ」

「俺の為?」

「あなた達の雇い主はチリメン商会ね?」

「けっ」

「あなた達は海亀の為に雇われたんでしょう?」

「ふん」

「雇う人数が多いって噂だけど、それは何で?」

「知るかよ」

「はぁー。忠告はしたわ「ぎゃあふぐっ!?」よ・・・」

「!?」


男が声のした方を見ると口を塞がれつつ目玉を抉り取られている仲間がいた。


「なっ!?何をしてやがるんだ!?」


その後も順番に目玉をくり抜いていった2人が戻って来た。


「やぁ、お待たせ。で、何か喋った?」

「いいえ、全然。それより何やってんのよ」

「あの子の為にね」

「あの子?」

「目が見えない」

「あぁ・・・でも、どうするの?」

「将来的に目を移植できないかと思ってね」

「角膜移植?」

「それもだが、目玉ごと移植するって事になったら目玉が必要になるだろ?角膜移植なら目玉から取り出せば良いし、だったら目玉を取っておいた方が良いだろ」

「そうだけど・・・」

「あいつ等の治療を頼む」

「良いけど。殺さなくて良いのかなぁ」

「剣を抜いて来たから殺しても良いんだけどね。あんまりにも弱かったからな」

「私達が手を汚す価値も有りませんわね」

「くっ・・・」

「もう血で汚れてるけどね」

「でも7人分も要る?」

「実験するには数が必要だろ。それに7人じゃなく8人だよ」


そう言った男が壁にもたれかかってる男をニヤニヤしながら見下ろした。


「ちょっ!ちょっと待ってくれ!」

「あぁ。お前が最後に見る顔だ。待ってやるから脳裏に焼き付けろよ」

「違っ!待って!待ってぇぇぇぇぇ!」


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