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HappyHunting♡  作者: 六郎
第17章 虹の根元 (ウォーカー、ハンナ、ローラ、ヤヤ、セルラ)
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偉そうな奴が出て来た。

さっきの兵士が船長と言われた男の下に行って耳打ちしている。


「酔っ払いの不祥事か」

「待ってくれ!話を聞いてくれ!」

「酒を飲んでいるのかいないのか!答えろ!」

「うっ・・・飲んでる」

「そいつ等に絡んだのか絡んでいないのか!答えろ!」

「うっ・・・絡んだ」

「剣を抜いたのはお前等が先か!答えろ!」

「うっ・・・」

「ひっ捕らえろ!」

『アイアイ!』

「「「待ってくれー!」」」


3人は船員達に捕まった。


「お前等は被害者なんだな」

「はい!でも、彼女達を守ろうと必死に揉み合ってそいつの手を・・・」

「いーや!お前は良くやった!女達を守ったんだ!気にする必要は無い!」

「あっ、ありがとうございます!」ペコペコ

「うむ!こいつ等は行儀の悪さの報告も上がってたんだ。フンじばる良い口実になった」

「あっ、ありがとうございます!」ペコペコ

「チリメン商会の!あんた等の冒険者が騒ぎを起こしたんだ、きちっと躾けて貰わねぇと困るな!」


奥の方で一団がこっちを見ていた。

なるほど、あいつ等がチリメン商会か。

ちょっと、周囲とは異質な奴等だな。

顔の感じから俺達と同じ黄色人種が大半、それに服装も前世の東洋的な物に近い感じがする。

黄色人種の輪の中に白人が数人混じっている。

こいつ等は服装は黄色人種とは違って・・・貴族的だな。

商会の人間は黄色人種、白人は・・・オーナーってところか?



「申し訳ありませんでした、船長」


黄色人種の商人風の男が答えた。


「おう!頼むぜ!」

「ふん!下種の躾など、土台無理な話だ」


貴族風の男だ。


「オーナー、ここは穏便に」

「ふん」

「海亀を一手に引き受けるにしちゃぁぞんざい過ぎるんじゃぁねぇか?」

「すいません船長。急に人が増えてしまって管理が行き届かず」

「船での騒ぎは止めさせろ!いいな」

「畏まりました」

「それに小僧への詫びも忘れんなよ」

「詫びだと」

「迷惑かけたんだ。他の客にも迷惑をかけた。やらなきゃ商会としての面目が立たねぇだろうが、分かんねぇのか?」

「オーナー、ここは収めませんと」

「・・・ふん!」パシッ


大銀貨を1枚俺に向かって指で弾いた。

甲板に落ちてヒラヒラした後止まった。


「おい、何だこれは」

「詫びだ。受け取り給え」

「俺等への詫びを落としたようだぞ。ここまで来て拾って渡せ」

『・・・』


船長も時が止まったように動かないでいる。


「・・・貴様。何と言った」

「詫びを、落としたぞ、拾って渡せ。今度は聞こえたか?」

『・・・』

「チリメン商会ってぇーのはぁ!礼儀ってものを知らねぇのかなぁ!」

『・・・』

「こんなんで海亀纏められんのかねぇ!疑っちゃうよぉ僕はぁ!」

『・・・』

「今からでも代えた方が良いんじゃぁねぇのかぁ!」

「・・・オーナー」

「・・・」


集団から抜け出て来て俺の方に向かって来る。

目尻がヒクヒク動いている。

俺の前まで来た。

コインを拾う。

そして俺に手渡そうと近付いてきた。

手渡そうとする時に顔を寄せてきた。


「顔は覚えたぞ」

「北からのお客さんは大歓迎だぜ?」


目を見開いた。

本当に分かり易い奴等だ。

一瞬驚いた顔をしたが直ぐに平生に戻して戻って行った。

集団の中に入って行ってそのままお付きを従え去ってゆく。


「ご迷惑を掛けました、船長」

「おう!頼んだぜ!」


一団は去って行った。




「よーし!じゃぁみんな!散った散った!余興は終わりだぜ!」


船長が叫んだ。

そしてこっちに来る。


「おうおうおう!やるじゃねぇの!」

「ふぅー。疲れましたよ」

「何だ何だ、虚勢張ってたのか?」

「勿論ですよ。冒険者ギルドのお婆ちゃんにも女を守るようにって言われたんで、舐められないように言ってやりましたよ」

「はっはっは!あの婆にか。確かに言いそうだが、あそこまで言うとはな」

「他にもチリメン商会の冒険者は居るんでしょう?」

「あぁ。確かに今回ので手を出そうって奴は居なくなるだろうな」

「ほっ」

「船長」

「おっ。何だ」


昨夜の船員が声を掛けて来た。


「コイツですよ。星図の読み方教えてくれって言ってるの」

「ほぉー。お前だったのか」

「えぇ」

「海にでも行くのか?」

「陸でも夜に星空を見れば大体の位置が分かるでしょ」

「夜に移動すんのか?」

「魔物に襲われてはぐれたりしてもいい様にですよ」

「なるほどな。パーティの事を考えてって事だ」

「家族ですから」

「気に入った!家族の為に出来る事をやっておく!大事な事だ、特に船じゃぁ船員みんなが一丸となって事に当たらなけりゃぁ難破遭難しちまう。気に入らねぇ奴が居ようが喧嘩しようがいざって時には協力しねぇとな。船は家族みてぇなもんなんだよ」

「なるほど」

「おめぇ等はベラムで何か仕事でもあんのかい?」

「いえ、特に。海亀でも見物しようかと」

「はっはっは!初心者冒険者じゃぁ確かに最初は見物の方が良いかもな!」

「街ほど大きいんでしょ?大怪我したくないですよ」

「はっはっは!正直だな、そこも気に入った。ドッグギルドに紹介してやろう」

「ドッグギルド?」

「あぁ。ソルティドッグのギルドだ。前までは商会にドッグの斡旋をしていたんだが今回はチリメン商会の独占になってギルドの出番は無くなった。海亀やその周辺の事に関しても詳しい。今暇してるだろうから色々話を聞かせてくれるだろう」

「ドッグは冒険者ギルドで斡旋するんじゃないんですか?」

「冒険者ギルドの方ではドッグギルドに斡旋するんだ」

「直接商会に雇われるのはアリなんですよね」

「勿論だ。しかしドッグは海亀だけの短期の仕事だ。素性も知らねぇ冒険者を雇うより専門家を雇う方が結局は良いんだよ」

「ほほー。でもチリメン商会はギルドを介さず集めてるんですよね」

「そうなんだよ。そこも不思議な所でな」

「そこも?」

「雇う数も多いし、さっきの様なチンピラも居て各所に苦情が出てるって話だ」

「ほほー。数でカヴァー出来るような仕事内容なんですかね」

「いやぁ。何より経験がものを言う。それはドッグだけの話じゃぁねぇがな」

「仰る通りです」

「で、どうするよ。紹介してやろうか」

「お願いします」

「分かった。紹介状をこいつに渡しておこう、今夜にでも受けとれ」

「はい」

「手数料もそん時にな」

「分かりました」




騒ぎも鎮まって僕達も部屋に戻った。


『北からの諜報員!?』

「そうだ」

「チリメン商会が!?」

「そうだ」

「どーゆー事!?」

「さっき鎌をかけた」

「鎌・・・オーナーに?」

「あぁ。動揺してたよ、何で分かったんだってな顔でな」

「でもそれだけじゃぁなぁ」

「例年と違って1商会だけで海亀を扱う事になった。その商会はドッグギルドを通さず直接冒険者を雇っている。かなりの数をだ。例外が多過ぎる、必ず何か有る」

「商会は北部の諜報員が作った商会だった、と」

「恐らくあの黄色人種達も北部出身だろう」

「・・・シンファン氏族連合かもな」

「だとするとあのオーナーはバウガルディの?」

「ティラミルティかもしれないわね」

「共闘しているのでしょう」

「じゃぁ通報する?」

「いや、証拠が無い。奴等を警戒させるだけだ。どうせ通報するんなら尻尾を出した所をやった方が良いだろう」

「狙いはやっぱり、海亀かしら」

「だよねぇ」

「海亀を一手に引き受けるのですから」

「塩を独占する積りだろうか」

「考えられるな。しかし政府の許可を取ってるんだろ?出来るのか?」

「横流しする積りなのかも」

「その為に大量の冒険者を雇ってるのかもねぇ」

「人足や護衛の為かしらね」

「横流しは十分あり得るな、シンファンなら」

「そうなのか?」

「うん。あの国は最後に海亀を殺した国なんだ」

「「ほぉー」」

「と、言う事は、シンファンでも海亀が居た?」

「うん。東から来ていた海亀を殺して塩を得た」

『ふむふむ』

「大量の塩で大金が入ったがそれは一時の事、その後に海亀の呪いで貧しくなっていったんだ」

「「海亀の呪い?」」

「聞いた事が有るよ。海亀を殺すとその土地が呪われるんだって」

「私も聞いた事が有ります。呪われた土地は植物が育たない不毛の地になると」

「塩害か」

「いや、確かに塩害の被害が有るんだがその範囲が尋常じゃないくらい広いんだそうだ。まるで」

「呪い」

「うん。海亀は確かに大きいがその被害の範囲が遥か広大になる。シンファンは各氏族国の国境が集まる場所で殺してしまったから殆どの氏族国に呪いの影響が有ったんだそうだ。そして貧しくなった。奴等が南部寄りだが北部に通じてるのも金銭的事情だと言われている」

「どっちなんだ?南部寄りって事は、問題が無ければ南部に属するのか?」

「いや、北部だろう。排外的な民族が多いからな。南部に属するのは金銭的な援助を得られるからだ」

「益々怪しいねぇ。塩を奪う為にチリメン商会を作ったんじゃない?」

「でも独占だから危ない橋を渡らなくても大きな利益を得られると思いますけど」

「良い洞察だね、サーヤ君」

「はい!」

「横流しすれば利益はもっと大きくなるんじゃない?」

「独占出来るのも今回だけかもしれないしな」

「実績を積めば次以降も独占出来るかもしれないわよ」

「奴等がどんな動きを見せるのか、探る必要が有るな」

「探りに行く?」

「いや、船では難しい。陸に上がってからだな」

「でもそのオーナー、顔は覚えたって言ったんでしょ?報復して来ない?」

「あちらも船では来ないだろう。もし僕達に何か有ったら真っ先に疑われるのはあいつ等だろうからな」

「じゃぁ下船後から調査開始ね」

「あぁ、そうしよう」


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