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HappyHunting♡  作者: 六郎
第17章 虹の根元 (ウォーカー、ハンナ、ローラ、ヤヤ、セルラ)
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「・・・」


5人が振り返ると3人組の男達がニヤニヤしながら立っていた。

装いは冒険者のようだ。


「・・・」

「何とか言えよ!色男さんよ!」

「女借りていくぞ!」

「ぎゃははは!」


「酒臭いわね」

「飲んでるね」

「酔っ払いですわ」

「全く、浸っていた所を」


そう言いながら彼女達はカズヒコの横顔を見ると無表情な顔になっている。

カズヒコが本気で怒ってる時の顔だ。

本気で殺そうとしてる時の顔だ。


「ちょ、ウォーカー。落ち着いて」

「そ、そうだよ。船で騒ぎを起こしちゃ不味いよ」

「リラックスですリラックス」

「深呼吸して。フーフーして」


カズヒコは彼女達の声を聞いて我に返ったようだ。


「フーフー。すまん。一生の思い出を汚されてトサカに来た」

「気持ちは分かるわ。同じ気持ちだしね」

「うん、あたしも同じだよ」

「私もです」

「私もだ」

「でも騒ぎは不味いわ。部屋に帰りましょ」

「うん、そうしよ」


「待て待て待て!酌ぐらいしろよつれねぇじゃねぇか!」

「そうだそうだ!折角の出会いだろ!ちょっと付き合えよ!」

「これから夜が始まる!俺達と夜の冒険しようじゃねぇか!」

「「「ぎゃははは!」」」


「フー。帰るか」

「「「「うん」」」」

「待てっつってんだろ!」

「邪魔だ、退け」

「退けねぇなぁ!女は置いて行くんなら退いてやるぜぇ!」

「近づくなよ口が臭い。お前ら女にモテねぇだろ、そんなに臭いとハエすら近づかねぇぞ」

「んだとぉ!」

「やんのかてめぇ!」

「やる気は無い。ただ本当の事を言っただけだ。いや、本当の事を言うんなら口だけじゃなく体臭も凄いなお前ら」

「てめぇ!」

「ほら、飛び込んで好きなだけ体洗って来いよ。3人で洗いっこして来い」

「てめぇ俺達が誰だか分かって言ってんのか!」

「勿論だ。手入れされていない装備、酒に飲まれる不用心さ。初心者冒険者だな」

「てっ、てめぇ!」

「それにロマンチックな気分に浸ってる人間に無遠慮に声を掛ける無神経さ。モテない独身の男が集まったパーティだろ。モテる男は酒に飲まれず声を掛けるもんだ」

「てめぇブッ殺してやる!」

「そのふらっふらの足取りで僕を殺せるのか?」

「ったりめぇよ!俺達ゃチリメン商会の冒険者だぜ!」


(やっぱりか)

(昨晩の船員が言ってた大部屋の迷惑な客ってこいつ等の事だろう)

(こいつ等の大声を聞いて周りも注視している)

(結果的にブチのめすにしても俺から手を出すのは不味いだろう)

(こいつ等から手を出させるように持って行く)


「ちょっと下がっててくれ」

「「「「分かった」」」」


彼女達が距離を取った。


「おっ!?何だ女を置いて行くのか!」

「な訳無いだろアホかお前」

「てめぇ!」

「臭いお前等から距離を取れって言ったんだよ間抜け」

「チリメン商会の冒険者だぞ俺達ゃ!」

「さっき聞いたばかりだよ。お前が言ったのに覚えてねぇのか?湖に入ってしゃっきりして来い」

「もー容赦しねぇからな!今更泣いて謝ったって許さねぇぜ!」

「鼻を突く臭いに今にも泣きそうだよ。早く飛び込んで全身洗って来い。そのまま底に沈んでくれたら尚更人類にとっては有益だ」

「こいつ!」


スラッ


剣を抜いた。


《キャー!》


野次馬も叫び声を上げた。

船はある意味密室。

逃げ場も無い。

だからこそ火気厳禁であり騒ぎもご法度なのだ。


「ブッ殺してやる!」

「そのなまくらでか?お前魔物殺した事有るのかよ」

「ふざけんなよてめぇ!本気で殺すぞ!」

「みなさーん!この人殺す気ですってー!」

《キャー!》

「てっ、てめぇをだ!」

「みなさーん!殺人鬼から離れて下さーい!」

《キャー!》


野次馬が少し離れるが何処かに行こうとはしない。

ストレスが多く娯楽の無い船旅に飽きてたんだろう。


「だっ、誰が殺人鬼だ!」

「殺すって言ったのはお前だろ木偶の坊。もう忘れたのか?今言ったばかりだろ」

「てめぇ!マジで殺してやるからな!」

「みなさーん!殺意満々ですってー!」

《キャー!》

「おい!本気でやんのかよ!?」

「やべぇって!」

「うるせぇ!このまま舐められたまんまで居られるか!」

「誰が汚ねぇお前等を舐めるかよ、自意識過剰だぞ?お前ら舐められるの蛭くらいなもんだぞ。お前等の頭と股間に吸い付かせて血を抜いて来い。冷静になれるだろうが頭の悪さは治らんからそこは諦めろ」

「てめぇいい加減にしろよ!」

「それはこっちの台詞だ。殺す殺す言いながら剣を振りゃぁしねぇ。コロコロ詐欺だな。冒険者じゃなく詐欺師なら最初からそう言えこのなんちゃって冒険者が」

「死ね!」


ヒュオッ


振りやがった馬鹿が。

《剣術》の魔法陣は視えるが全く話にならないレベルだ。

コイツが剣を抜いたっていうのは野次馬も見たし正当防衛は成り立つだろう。

折角の気分を台無しにした報酬を受け取ってくれや。


俺は踏み込んで奴の懐に入った。

振り下ろして来る右腕が最大攻撃力到達地点に来る前に左腕を上げて止める。


「!?」


止まった瞬間、両手を使って剣を搦め取る。


「うお!?」


奪った剣を使って奴の右手首を斬り落とした。


「ギャー!?」

《キャー!》


ドッと右手首が甲板に落ちた。

それを拾い上げて奴の方を向いたまま肩越しに背後に投げた。

あいつの右手首は船縁を越えてそのまま湖に落ちて行った。


「あぁ!?俺の手が!」

「ばっちぃ物落とすなよ。床が汚れるだろ」

「俺のぉぉぉ手がぁぁぁ」

「血も臭いな。何食ったらそんなに臭くなるんだ?」

「て、てめぇ・・・」

「おい、お前ら。仲間のお前らだよ」

「「!?」」

「どーすんだ?仲間がやられたんだぜ?お前らはやんねーのか?」

「「くっ」」

「仲間だったらこいつの手首拾って来いよ。急がねぇと魚の餌だぜ?」

「「てめぇ・・・」」

「何だよー!チリメン商会の冒険者ってこんなにクソ弱ぇんだ!」

「「ぐぐぐ」」

「今年の海亀をこんな奴等に任せて大丈ぉ夫かなぁ!」

「「「ううう・・・」」」

「酒飲みながら仕事するような奴等に任せて大丈ぉ夫かなぁ!」

《そうだそうだー!》


野次馬も乗って来た。

恐らく迷惑を掛けられて腹が立ってたんだろう。

良い流れだ。

そこに、


「何事だ!」


船員の格好をしているが恐らく用心棒、いや、兵士か。

全員が兵士の方に向いた時に奴の剣を奴の足元に投げた。


「誰か説明しろ!何の騒ぎだ!」

「はいはーい!」

「お前!何事だ!」

「こいつ等が酔っ払って僕達に絡んで来て「止めてくれ」と言ったら「女達を渡さねぇと殺す」って言って剣を抜いて来たんですぅ!」

「「「なっ!?」」」

「それで仕方なくこいつの剣を奪ったら組み付いてきて、気付いた時にはこいつが手首落としてましたぁ!」

「「「てめぇ!」」」

「そうだよなぁ!みんなぁ!」

《そうだそうだー!》

《こいつ等が先に剣を抜いたー!》

《斬り掛かったのもこいつ等だー!》

「本当か!?」

「本当ですぅ!」

「ちょ!待て!違う!」


兵士が野次馬を掻き分け俺達の下まで来た。


「違う!俺はこいつに斬られたんだ!」

「抜いた剣は?」

「こいつが、あれ?」

「お前の足元に転がってるぞ」

「!?」

「「いつのまに!」」


人を判断する時、第一印象が重要だ。

逃げ場の無い船で騒ぎは直ぐに収めなきゃならない。

野次馬も俺達の味方になってる。

兵士はこいつ等よりも俺達の言葉の方を信用するだろう。

酒臭いのもマイナスだ。


「お前等、飲んでるな」

「「「ぐっ・・・」」」

「僕達が女連れなんで絡まれたんですよぉ。それに「チリメン商会の冒険者だからこの船の連中にチクってもどぉってことないぜ」って言ってました!」

「お前等・・・」

「「「言ってない!そんな事言ってない!」」」

「酔っ払いが!自分達が言った事も覚えてねぇのかよ!」

「お前!止めろ!」

「適当な事言ってんじゃぁねぇ!」

「殺すぞ!」

「キャー!怖ぁーい!殺されるぅ!」

「止めろお前等!」

「「「えぇっ!?」」」


「何事だ!」

「船長!」


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