④-02-59
④-02-59
「私はサーヤと申します。助けていただきありがとうございました」
「何があったの?」
「あっ、あっちにご主人様が!」
「ご主人様?」
「お願いします!あっちに!」
「わ、分かったから。落ち着いて」
ランタンで照らしながら彼女に付いて行く。
連れられて行った先には荷車と死体が転がっていた。馬は逃げて行ったようだ。
この足跡の大きさはラドニウスではないな。
「あぁ!ご主人様!」
「この人があなたのご主人様?」
「そうです。ハリエット様です」
「亡くなってるわ」
「あぁ!」
「とりあえず事情を聞きたい。縛ってる当事者もいるし、一度さっきの場所に戻ろう」
「・・・はい」
「魔物が寄って来ませんかね」
「なるほど。じゃぁここに今日は野営しよう。男は俺が連れて来るよ」
「分かりました」
気絶してる男を担いで荷車のあったところに連れてくる。
冒険者風の男は重かった。
「やれやれ。《頑健》さん様様だな」
「ですね」
男を縛ったロープに長さを足して木に縛る。
「じゃぁ、話してもらおうかな」
「はい。私はサーヤ。ここから南に行った街で買われた奴隷です」
「奴隷か、さっきご主人様って言ってたしな」
「はい。それで私を買われたのがこの方、ハリエット様です。ハリエット様はここから先のグンナーと言う街の商人です」
「「ふむふむ」」
「荷物をグンナーへ運ぶために護衛として雇ったのが・・・先ほどの冒険者達です」
「なんだとっ!」
「きゃ」
「先輩!」
急に声を上げたから驚かせたようだ。
「あっ、す、すまない」
「あ、いえ」
「じゃぁ、護衛が護衛主を襲った・・・そういう事かい?」
「はい」
「「ぬぬぬ!」」
「ここの死体はハリエットさんと御者かな、後1人も従業員かい?」
「はい、そうです」
「フガー!モガー!」
「おっ、気が付いたようだな。ちょっと待っててくれ」
剣の腹で腕をブッ叩く。
「ンゴー!」
「静かにしねぇと殺す。分かったか」
コクコク
「大人しくしてろよ」
「お待たせ」
「あいつ、どうするんです?」
(殺す)
(え?)
(足をやったからな。歩けんだろ、だから殺す)
(そ、そうか)
(気にするな。魔物だ)
「それで3人を殺し、君を暴行したんだね」
「は・・・い・・・ううぅ」
「・・・・・・復讐・・・したいかい?」
「・・・えっ?」
「復讐・・・したいだろぅ」
「えっ、あっ、いや・・・」
「ちょっと先輩!」
「君を一方的に襲った賊、いや魔物に!復讐したくはないかい?」
「このままでは、一生引きずって生きていくかもしれないよ。ここである程度のケジメを、つけた方が良いんじゃないかな」
「ケジメ・・・」
「やられたけど、やり返した。やられたままだったらこの先後悔して生きていくんじゃないかな。同じ後悔するなら、やり返して後悔した方がいいんじゃないかい?」
「同じ後悔・・・」
「そうだ。過去は変えられない、今回の事をハッピーには変えられないんだ。だったら自分の手で、ケジメをつけた方がいいんじゃないか」
「ケジメ・・・つける」
「サーヤさん、無理する必要無いのよ」
「いえ、自分の手で・・・自分の気持ちにケジメを・・・」
「君が殺すことはない。あいつらは君を嬲ったんだ、君もこの棒で嬲ってやれ」
「・・・はい」
サーヤは棒を持って男の方へ歩いて行った。
男は会話が聞こえておらず、何が話されたか分からなかったがサーヤの様子と、その手に武器を持っているのを見て察したようだ。
「んー!んー!」
サーヤは少し躊躇いながらも振りかぶって・・・振り下ろす。
バキッ・・・バキッ・・・バキッ・・・
はぁはぁはぁ
バキッ・・・バキッ・・・バキッ・・・
はぁはぁはぁ
バキッ・・・バキッ・・・バキッ・・・
はぁはぁはぁ
「はぁー!」
サーヤは大きく息を吸い込んで吐いた。
「そうとう溜まってたんだな」
「まー、そりゃそうですよ」
「あれでいいんだよ」
「目には目をって?」
「どうせ殺すんだ。役に立つ方がいいだろう」
「殺すんですか?役所に突き出すとか」
「街まであと2日、しかも村もない。俺も担げない。ここに置いておく。魔物に食われる。どーよ?」
「逃がすってのは・・・」
「性犯罪者を野放しに?正気か?次の犠牲者が出るだけだぞ」
「・・・ですね」
「前世の或る国の性犯罪者の再犯率だが・・・90%以上だ」
「えっ!?」
「90%以上。だからGPS発信機とか付けるんだと」
「GPS発信機って、どこの国か分かりましたけど。そんなに高いんですね」
「みんながみんな90%以上とは言わないが、同じ欲望から産まれる犯罪、似たようなもんさ」
「同じ欲望・・・」
「あぁ。必ずまたやる。大なり小なりな。小から大になったら目も当てられんぞ」
「法で持って裁くって・・・」
「この世界では難しいな。法って言っても貴族が作った法だし、万人に平等な物じゃないだろ」
「そうですけど・・・犯人は冒険者ですし」
「俺達はハンターなんだよ。魔物のな」
「あいつらは魔物ってことですか」
「護衛主を殺してるんだぜ。人じゃない」
「気持ちがね・・・ついていかないって言うか」
「君はそれで良いんだ」
「えっ?」
「俺が殺す。君は君の立場で意見してくれれば。2人とも同じだったら間違っていた時止められない、止まらない」
「・・・まぁ、私は私で良いんですね」
「あぁ、そのままの君で居てくれ」
「・・・分かりました」
バキッ・・・バキッ・・・バキッ・・・
はぁはぁはぁ
「もっ、もういいんじゃないかなー!?」